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 風邪症状で「インフルエンザが心配」と外来を受診される患者さんがけっこういらっしゃいます。インフルエンザと風邪はどこが違うのでしょうか。

 

 インフルエンザは発症が急激で、熱が高く、咳(せき)や咽(いんとう)頭痛に加え関節痛、筋肉痛、倦怠(けんたい)感といった全身状態が強いことが多いです。一方で、普通の風邪は発症が比較的ゆるやかで、熱はインフルエンザほどは高くなく、症状は鼻水、咳、くしゃみ、咽頭痛といった上気道症状に限定される傾向があります。

 原因(病原微生物)も、インフルエンザはインフルエンザウイルスである一方、風邪は多種多様なウイルスや細菌が原因になりえます。インフルエンザウイルスに対しては薬(抗インフルエンザウイルス薬)があります。タミフルが有名ですが、ほかにリレンザ、イナビル、ラピアクタといった薬があります。一方で、風邪に対しては特別な薬はありません。風邪の治療は、熱に対して解熱薬、咳に対して咳止めといった対症療法です。

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 「2時間前から急にゾクゾクして39度の熱が出た。咳が出るがそれより全身が痛いのがつらい。2日前に同居家族がインフルエンザと診断された」という患者さんは、ほぼインフルエンザだと推測できます。一方で、インフルエンザが流行していない時期に、「数日前から喉(のど)の違和感を感じていたが、今日から咳と鼻水が出たので体温を測ると37度だった。体調は悪くない」という主訴で受診した患者さんは、まあ普通の風邪でしょう。

 典型的な症状を呈していればあまり迷いませんが、実際には微妙なケースもよくあります。「数日前から咳とくしゃみがあったが、今日になって39度の熱が出たので受診した。関節痛はあるといえばある。倦怠感はさほどでもない」という患者さんはどっちでしょう?こういうケースはインフルエンザの検査をすることで、ある程度はっきりします。

 緩やかな発症で高熱がなく全身症状に乏しく、ぜんぜんインフルエンザっぽくない患者さんでも、検査をしたらインフルエンザウイルスが陽性、というケースもあります。インフルエンザの流行期には「インフルエンザっぽくないけどインフルエンザウイルス陽性」という例はけっこうあると言われています。

 そう考えると風邪とインフルエンザの境界はあいまいです。実際、青年期(平均年齢24歳)の普通の風邪(common cold)の患者さん200人を調べると、風邪の原因ウイルスとして代表的なライノウイルス(105人)やコロナウイルス(17人)のみならず、インフルエンザウイルスが12人から検出されたという研究があります。

 普通の風邪の患者さんの中にはインフルエンザウイルスに感染している人もいますが、あまり心配する必要はありません。普通の風邪であろうとインフルエンザであろうと、ほとんどの場合は自然に治ることが多いです。抗インフルエンザ薬は熱が出る期間を数日短くすることができますが、そもそも高熱が出ていなければインフルエンザであっても薬の必要は乏しいです。逆に、高熱で全身症状が強ければ、風邪やインフルエンザ以外の病気も考える必要があります。

 症状が軽ければ、インフルエンザかどうかを調べるために病院を受診する必要はありません。症状が重ければ、インフルエンザかどうかに関わらず、受診することをお勧めします。

 

 参考文献:

Mäkelä et al., Viruses and Bacteria in the Etiology of the Common Cold, J Clin Microbiol. 1998 Feb; 36(2): 539-542.

 

<アピタル:内科医・酒井健司の医心電信・その他>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/sakai/(アピタル・酒井健司)

アピタル・酒井健司

アピタル・酒井健司(さかい・けんじ) 内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。