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 小児科外来にいると、四季のうつり変わりを感じることができます。朝晩の気温が下がり、鼻水や咳(せき)が出る子が増えてくると、秋の到来に気づき、そろそろインフルエンザワクチンを打つ時期だな、と思うようになります。そして、「診察をするからお腹を出してね 」と言って見せてもらった子どもの前胸部に掻(か)き痕があったり、粉が吹いたように乾燥していたりすると、冬が来たんだなと感じ、体の洗い方や塗り薬の説明をしなきゃと思うのです。

 1月ともなると、みんな肌はカサカサです。今回は、スキンケアの話です。

 私たちの皮膚は、下から皮下組織、真皮、表皮からできています。一番上の表皮は0.2mm前後しか厚さがないのですが、さらに四つの層に分かれます。下から、基底層、有棘(ゆうきょく)層、顆粒(かりゅう)層、角質層です。そして、表皮 の表面には皮膚を保護するための皮脂、天然保湿因子、角質細胞間脂質といったものがあり、体から水分が失われていくのを防いでいます。他にも皮膚の働きに は、外から埃(ほこり)や砂・土、ウイルスや細菌、紫外線などが体内に入らないようにしたり、体温を調節したり、物理的な刺激から体を守ったり、熱さや寒さといった物理的な刺激を感知したりすることがあります。

 よく化粧品などのCMで「肌に浸透する」などと言いますが、そういった効果は、10-20μm(※1μmは1ミリの1000分の1)ほどの角質層にしみる程度で、それより深いところまでは入りません。もちろん体内にも入りません。肌の吸収力はその程度です。

 ネット上の噂や一部の人が主張する「紙おむつに含まれる高分子ポリマーが体に吸収されて、おねしょが治らなくなる」ようなことはありません。「頭皮からシャンプーの成分が吸収されて子宮にたまって、卵巣や子宮が冷える」、「不妊症になる」というのも荒唐無稽なデマです。ただ、ある種の軟膏(なんこう)や貼付剤は、別ですよ。局所麻酔薬やβ2刺激薬などは局所、あるいは体内で効果を発現するような工夫がされています。

 では、スキンケアで大事なことは何でしょうか。

 皮膚が薄いことはすでに説明しましたが、その皮膚の表面を守ることが大事です。お風呂上がりに化粧水や乳液などを塗る女性は多いと思いますが、子どもは20代の女性と比べると半分以下しか皮脂がありません。子ども、特に赤ちゃんだと「こんなに小さい子の肌に何か塗らないといけないですか?」と聞く方がいます。しかし、小さい子ほど、皮膚そのものも薄いため保湿したり保護したりすることが大事なんです。

 肌に塗るものには、ワセリンのように肌の水分喪失を防ぐものと、「ヒルドイド」のように水分を与えるものがありますが、どちらでも構いません。皮膚のバリアー機能が失われていると、そこから、いろいろなものが侵入してアレルギーを発症することが知られています。

 2014年に国立成育医療研究センターの大矢幸弘医師らが行った研究を紹介します 。両親やきょうだいに1人以上のアトピー性皮膚炎の人がいる新生児に、生後1週から生後32週まで毎日、保湿剤の塗布を行ったところ、そうしなかった乳児 よりも3割アトピー性皮膚炎の発症が少なかったとのことです。(https://www.ncchd.go.jp/press/2014/topic141001-1.html別ウインドウで開きます

 肌のバリアー機能を保持することは、アレルギー予防になるということを示唆しています。アトピー性皮膚炎でなくても、私の娘たちはカサカサでかゆくなってしまい、夜中に目覚めることもあるので、必ずお風呂上がりはワセリンか保湿クリームを塗るようにしています。

 外来診療で、赤ちゃんや子どもの皮膚のカサカサ、できものについてよく相談されます。私が処方したものや他でもらったものなどを本当に塗っても大丈夫かと頻繁に聞かれます。まずは清潔にして保護・保湿をするのが一番。どんな薬、保護剤・保湿剤、ステロイド軟膏でも、1回塗ったぐらいで、良くも悪くもなりません。保護剤や保湿剤は持っているだけでは効果はないので、塗ってから判断しましょう。

写真・図版

 

 まず、お子さんの肌が粉を吹くほどのカサカサでなければ、お風呂では石けんを使って体を洗います。石けんやボディーシャンプーは、そのままでなく必ずあわ立ててから体につけます。そして、タオルやスポンジでなく大人の手の指の腹を使って洗います。力の調節がしやすく、傷つける心配が少ないからです。そして、シャワーなどで十分流したら、お風呂上がりは保護・保湿剤を塗ります。夏はあまりベタベタになると嫌がるお子さんが多く、ローションタイプを処方しますが、冬はしっかりくっついてくれて肌を守る軟膏やクリームタイプがいいでしょう。乾燥以外のトラブルがなければ市販のものでもいいし、小児科や皮膚科で処方してもらうこともできます。イラストにあるような量だと多く感じるかもしれませんが、テカるほど、あるいはティッシュペーパーがくっつくくらい塗るのがいいのです。塗るのは1日2回。それでも、かゆみや赤みがあるときには皮膚科か小児科を受診してください。

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。