[PR]

 小児がん経験者の就労実態はどうなっているでしょうか? 「働きたい」と思っても、中々働くことができない人がいます。就職に際して晩期後遺症が大きな壁になっています。

▼小児がんでは、長期フォローアップがとても大切です

▼小児がん経験者の就労の壁、就学の大切さ

▼小児がんの親の就労にも壁がある

 

●小児がんってどんな病気?

 がんは高齢者だけがなる病気ではありません。15歳以下の子供でもがんになることがあり、「小児がん」と呼ばれています。

 小児がんは、毎年2500人くらいの子どもたちが発症しており、大人のがんと違って、白血病、脳腫瘍、悪性リンパ腫など、身体の深いところから始まるがん(肉腫)が多く、早期発見が大変難しい病気です。

 治療には、手術や化学療法、放射線療法などを行いますが、その反応がとても良いため、現在では7割~8割ほどが治るようになってきました。

 

 小児がんでは、心も身体も、そして、社会的にも成長する大切な時期に強い治療を行うことで、治療が終わってから何年も、何十年も経ってから、身体や心に治療や病気の影響がのこってしまう「晩期後遺症」が現れてくることがあります。

 例えば、成長に欠かすことができない内分泌の異常や成長障害など身体が小さかったりすることもあります。また、目に見える障害だけではなく、心機能や呼吸機能、肝機能など、内臓系の機能不全を重複して患ったり、別のがん(二次がん)になったりすることもあります。

 ですから、小児がんでは、治療後も長い間のフォローアップが欠かせません。また、年齢によっては、自分の治療内容を理解、認識することが難しい場合もあり、成長にあわせて必要な情報を少しづつ伝えていくことも大切になります。

 

 みなさんが15歳だったころを想像してみてください。

 勉強は好きではなかったかもしれません。それでも学校に行けば、友だちがいて、クラブ活動や読書など自分の好きな時間の過ごし方ができた人が多いと思います。自由がありました。

 小児がんの子どもたちは、その大切な時期を生命と向き合い、治療に時間を費やします。大人の私でも、限られた時間を「治療」に奪われることに理不尽さを感じましたから、子供時代だったらなおのことでしょう。

 小児がん経験者と話しをすると、「そのときは、それが当たり前の日常だったから」と言う人が多いのですが、私はその「当たり前の日常」を少しでも良くしたいと思いますし、成長した小児がん経験者が抱える「生きづらさ」を「仕方がない」にしてはいけないと思っています。

 生きたからこそ、社会で羽ばたいて欲しい、そう思っています。

 

●小児がん経験者の就労問題

 では、小児がん経験者の就労実態はどうなっているでしょうか?

 2014年5月12日に厚生労働省で開かれた「第4回がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会」で愛媛県立中央病院小児医療センターの石田也寸志先生から「小児がん経験者の就労に関する実態調査」の発表がありました。

 この調査は、239人の小児がん経験者を対象としたもので、学生以外の165人の経験者の就職状況は、未就職者が32名(19%)ほどいました。このうち、晩期後遺症を抱えた経験者は22人を占め、「働きたい」と思っても、中々働くことができない。就職に際して晩期後遺症が大きな壁になっていることがわかりました。

拡大する写真・図版■小児がん経験者の就職状況

 

拡大する写真・図版■晩期後遺症の有無と仕事への影響

 「社会にでれば大人も子供も社会人」かもしれませんが、成長期の治療、それに伴う心身や就学の課題、就学することで本来得られていたはずの社会性の獲得の喪失など、小児がんは、親も含めて、負の連鎖から中々脱出、自立できないケースがあります。

 治療を終えた30代や40代の小児がん経験者にとっては、これから親の介護などをしていかなければなりません。社会との接点をもつこと、収入を得るということは、罹患後の長い人生を生ききるためにも欠かせないのです。

 

 政府の働き方改革実現会議の第2回会議において、東京大学社会科学研究所教授・水町勇一郎構成員が、「がんなどの継続性のある病気で、その病状や治療のために仕事上相当の制限を受ける者についてもこの法律の適用を受けるものとして、差別禁止、事業主による合理的配慮の対象とすることなどを検討し、病気と仕事の両立を支援することが法的には考えられます」と発言されています。

 私はこの中に、晩期後遺症を抱えた小児がん経験者を是非含めて考えて欲しいと思っています。過酷な治療を越えて、働きたいという意欲、社会とつながりたい、社会に参加したいという意欲を、どうか「社会の壁」や「制度の壁」でつぶさないで欲しい。そう切に願っています。

 

●小児がん患児の親の就労にも影響

 自分の子供が病気だと知ったら、親は全力で介護をします。

 家族が休める制度は、有給休暇のほか、育児介護休業法で定める育児休業や介護休業があります。患児の年齢が1歳未満なら育児休業制度が利用できますが、1歳を越えた場合は、介護休業制度を利用することになります(育児休業制度は1歳6カ月まで延長できますが、小児がんは対象外です)。

 この介護休業制度の仕組みは、どちらかというと「高齢者介護」を想定した制度設計になっていますから、小児がんやAYA世代、働く世代のがん患者さんの介護や療養の付き添いには、とても適応し難いのが現状です。

 大人のがんでも離職の問題がありますが、小児がん患児の親は20代から30代の若い世代。「がん」はまだまだ身近な病気ではなく、相談する先も限られています。

 そのようなこともあり、子供ががんの診断を受けると3~4人に1人が離職をしていることがわかってきています。家族が寄り添える環境整備は、とても重要な課題です。

 

 2012年から、特定非営利活動法人ハートリンクワーキングプロジェクトでは、就労困難な小児がん経験者の職業訓練を兼ねた就労施設を新潟市で開設しました。こうした取り組みはまだまだ少ないのが現状です。就労移行支援事業など既存リソースの活用や周知も含めて、もっと社会とつながる道をつくっていくことが大切です。

 

 がんは年齢には関係なく、突然やってきます。大きな経験をした者だからこそ得た強い輝きがあるはずです。そうした光が社会の中で輝き続けられる社会を私たちは作っていかなければならないのではないでしょうか。

▼認定NPO法人ハートリンクワーキングプロジェクト:http://cchlwp.com/別ウインドウで開きます

 

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

◇ご感想、みなさんの経験談、ご意見をお寄せください

 アピタル編集部では、コラムのご感想、みなさんの経験談、ご意見を募集します。掲載や取材をする場合に確認の問い合わせをさせていただきますので、お名前のほか、ご連絡先(電話番号、メールアドレス)、年齢、性別、職業の明記をお願いします。(いただいた感想等は必ずご連絡やサイトへの掲載をするわけではありません)

 

【送付先】

・メール apital@asahi.comメールする

・郵便 104-8011 東京都中央区築地5-3-2 朝日新聞アピタル編集部「がん、そして働く」係

 

<アピタル:がん、そして働く・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/cancer/(アピタル・桜井なおみ)

アピタル・桜井なおみ

アピタル・桜井なおみ(さくらい・なおみ) 一般社団法人CSRプロジェクト代表理事

東京生まれ。大学で都市計画を学んだ後、卒業後はコンサルティング会社にて、まちづくりや環境学習などに従事。2004年、30代で乳がん罹患後は、働き盛りで罹患した自らのがん経験や社会経験を活かし、小児がん経験者を含めた患者・家族の支援活動を開始、現在に至る。社会福祉士、技術士(建設部門)、産業カウンセラー。