[PR]

 待ちに待った「電動車いす」が納車されたのは、昨年11月のことでした。自分で車いすをこぐことができなくなった2014年9月の骨折から数えると、2年2ヶ月もの時間が経過したことになります。ここまで時間がかかったのには、それなりの理由があるのですが、それは割愛・・・。借りていた電動車いすにも愛着が湧くほどのブランクでしたが、やっぱり「マイ車いす」には敵いません。新しい相棒もすっかり馴染んできました。

 

 2014年9月、腰にいつもとは違う痛みが生じ、座ることさえ困難なほどの激痛でした。腰といえば、11年前に腫瘍(小児がん)があった場所です・・・。画像検査の結果、骨盤に2ヶ所の小骨折が認められました。転んだり、ぶつけたりしたわけではなく、日常生活の負荷に耐えられなくなって折れてしまったようです。過去に行った重粒子線治療の後遺症なので、「晩期合併症」と言えるでしょう。

 

 車いすをこぐ動作は、骨盤に大きな負担がかかります。これまで通り自走を続ければ、骨盤はどんどん折れて、寝たきりの生活へまっしぐらなのは明らかでした。

 

 この骨折がきっかけで、私は手動式車いすから電動車いすへ乗り換えることになったのです。

 

補装具費支給制度

 自分の車いすをつくるといっても安い買い物ではないので、そう易々とつくれるものではありません。全額自費で購入するとなると、軽自動車が買えてしまうほどの値段です。しかし、障害を補うための必需品でもあるため節約というわけにもいきません。そんなときに頼りになるのが「補装具費支給制度」です。

 

 電動車いすなど、身体障害者が日常生活を送る上で必要不可欠な用具=補装具を造る際に、その費用の一部を行政が負担してくれる仕組みのことを言います。公費負担なので相応の審査を経て、補装具の必要性を行政が認めたものに限って支給されるものです。必要性を見極めるのは都道府県に設置されている更生相談所(指定都市は任意設置)や市町村で、厚生労働省が示す「補装具費支給事務取扱指針」に準じて判断がなされます。

 

 (全体の流れ) 私:申請 → 市:受理 → 県:判定 → 市:支給決定

 

更生相談所の「判定」

 申請内容がそれを満たすものであるか更生相談所が精査していくことになりますが、この「判定」はとても重要な位置を占めています。

 

 厚労省によって、さまざまな補装具に応じた支給要件が定められており、電動車いすの支給対象者には下記のような条件がありました。

 

 ア 重度の下肢機能障害者等であって、電動車椅子によらなければ歩行機能を代替できないもの

 イ 呼吸器機能障害、心臓機能障害、難病等で歩行に著しい制限を受ける者又は歩行により症状の悪化をきたす者であって、医学的所見から適応が可能なもの

 

 私が電動車いすの支給を受けるためには、「ア」を満たしている必要があります。まず、前半の「重度の下肢機能障害者等」という部分は、すでに車いすの支給を受けている時点で明らかに重度の下肢障害を有しているためクリアしています。問題は、後半の「電動車椅子によらなければ歩行機能を代替できないもの」をどう立証していくかにありました。

 

 「足が動かない+手も動かない」となれば、車いすを自分でこぐのは難しいだろうと察しがつくので、電動の必要性にも合点がいくでしょう。けれども、私の身体障害者手帳には下肢障害の記載しかなく、上肢の機能は全くもって正常です。表面的に見れば、どうして車いすをこげないの? 手動でよいのでは? となってしまうのです。しかし、こげるけど、その動作によって骨盤が折れ寝たきりになるのでは、こげないのと同じ意味なのではないでしょうか。これには医学的根拠があり、医師の意見書にも明記されました。よって、「電動車椅子によらなければ歩行機能を代替できないもの」と同等の状況にあると判断されたのです。

適切な判定の重要性と難しさ

 今回の申請では、更生相談所が総合的に状況を見た上で支給決定の判断が下されました。しかるべき結果だとは思うけれど、きちんと見てくれたことが有り難かったし、よい結果が出てホッとしたというのが正直なところです。

 

 電動車いすが必要になったとき、車いすユーザーの先輩方やいくつかの業者さんに相談をしてまわりました。このとき、まことしやかに囁かれていたのは「身障手帳に上肢の障害が記載されていないと、電動は支給されない。必要性はもっともだけど、厳しいのではないか? 全額自腹を覚悟した方がよい。」という声でした。

 

 補装具というのは、身障者の生活を左右する重要なものであり、ひとりひとりの状況を鑑み、適正な判定が行われなければなりません。その一方で補装具を必要としている方の状況は千差万別で、画一的な線引きができるわけもなく、判定をする上で意見の分かれる案件もあるのだろうと、その難しさを推察します。

 

 けれども、補装具支給制度に支えられて身障者の生活があることは動かぬ事実です。今回の私の判定は適切に見てもらえたけれど、一部の人からは「お役所は杓子定規にしか見てくれない」と思われている側面もあるので、必要なものが必要な人へきちんと支給される仕組みであり続けてほしいと願います。

拡大する写真・図版イラスト・ふくいのりこ

<アピタル:彩夏の〝みんなに笑顔を〟>

 http://www.asahi.com/apital/column/ayaka/(アピタル・樋口彩夏)

アピタル・樋口彩夏

アピタル・樋口彩夏(ひぐち・あやか)

1989年、東京生まれ。中学2年の時、骨盤にユーイング肉腫(小児がん)を発症。抗がん剤、重粒子線などの治療を経て、車いすでの生活に。「いつ、誰が、どんな病気や障害をもっても、笑顔で暮らせる日本にしたい!」を目標に日々、奮闘中。当事者の視点から建設的に伝えることをモットーに執筆・講演も行っている。