[PR]

 糖尿病に特有の合併症は、「細小血管合併症」と呼ばれ、細い血管が障害されます。これは「しめじ」と覚えましょう。

 「しめじ」の「し」は神経障害、「め」は網膜症、「じ」は腎症。「し」→「め」→「じ」の順番で合併症が起きてきます。

 

「しめじ」とは

 「しめじ」は、糖尿病が発症してから徐々に出てきます。ですから、「しめじ」に関しては予備群のうちは心配いりません。

 まず「し」、神経障害は、両足の指先がしびれたり、びりびりしたりします。よく「手と足がしびれる」と言いますが、糖尿病では手から先に始まることはまずありません。両足の指先や両足の裏からきます。初期の症状では足がつることがあります。神経障害が出る人は糖尿病患者の約半分程度と考えていいでしょう。人によって違いますが、3年後や5年後からこの合併症が出ます。

 次に「め」、網膜症です。これは眼科に行かないとわかりません。

 「網膜」は、カメラではフィルムにあたり、視力でもっとも重要な部分で、図に示しますように眼の一番奥(「眼底」)にあります。糖尿病ではこの網膜が障害されます。

 健康診断で視力検査を受けているとか、また人間ドックの眼底検査で無散瞳型眼底カメラを使って撮影していても、これでは眼底の一部しか写りません。ちゃんと眼科を受診して、瞳を開く散瞳薬(さんどうやく)を点眼して、まぶしいといいながら眼科医と向き合って診てもらわないと分かりません。

 網膜症は、毛細血管瘤という小さい血管のこぶから始まるためです。また、眼底出血は眼球の周辺部から始まるので、かなり眼底出血が進まないと視力に影響しません。

 糖尿病と言われたら、最低1年に1回は眼科に行くことが大事ですが、これは意外と忘れがちです。

 なぜ、糖尿病患者が眼科受診を面倒だと考えてしまうかというと、大きな病院なら同じ病院の中に眼科がありますが、開業医が主治医の場合、別の眼科クリニックを受診しなくてはならないからです。また、散瞳薬を点眼すると、まぶしいので車もバイクも一定時間は運転ができませんから、電車やバス、タクシーで通院しなくてはいけません。そうすると、「面倒くさい」となることがあります。糖尿病の診断後、最初の1回は眼科を受診しても、2回目以降は行っていないという患者は少なくないと言われています。

 いまだに日本人の成人失明原因の第2位は糖尿病で、年間約3000人が失明しています。私たちは、目から大部分の情報を得ているので中途失明での生活は大変です。

 網膜症を予防するためには、血糖コントロールを良好にすることが一番大事です。失明を防ぐためには、ヘモグロビンA1cで6.9%以下を保つことが重要です。眼科と内科にきちんと通って治療をしていれば、失明は避けられます。

写真・図版

 

 次は「じ」、腎症です。

 人工透析導入の原因となる疾患の第1位が糖尿病で、糖尿病が原因で毎年約16000人が透析に導入されています。

 腎症は、尿にたんぱくが出てきますので尿検査をしないと分かりません。かなり進行した腎不全になって、人工透析をする間近にならないと、むくみ、だるい、食べられない、おしっこが出ないといった症状は出ません。

 しかし、一般の内科医では尿検査をしてくれない医療機関もあると思います。糖尿病の患者では、毎回、血液検査と尿検査が必要です。

 尿検査をして、「微量アルブミン尿」という微量のタンパク尿の段階で早期の腎症を発見することが重要です。この段階でしたら、良好な血糖と血圧のコントロールを続ければ、また正常に戻ります。

 腎症の発症を予防し、進行を阻止するためには、血圧と血糖の良好なコントロールが重要です。

 血圧は130/80mmHg以下、血糖はヘモグロビンA1cを6.9%以下に保つことが重要です。

 

すべての患者で順番に合併症がでるわけではない

 3大合併症の「しめじ」と言っても、神経障害は出てこない人もいます。痛みやしびれがないと困りませんので、実際の3大合併症の診断と治療は、眼科から始まると考えてもいいでしょう。

 しかし、視力障害が起きてから眼科に通院するような患者は、かなり進行してしまった人です。繰り返しになりますが、初期は視力に影響がでないためです。視力低下といった自覚症状が出たため、眼科に行き、そこから私たちのような糖尿病専門医のところに紹介されてくる患者も時々います。でも、そういうケースでは、もう手遅れに近いこともあります。

 合併症の発症は、おおむね、神経障害が5年以内、網膜障害が10年以内、腎障害が15年以内と言われています。これも、血糖コントロールによって大きく変わってきます。

 血糖コントロールが良ければ3大合併症の「しめじ」は予防できます。しかし、糖尿病を治療していく主治医が、尿検査をやってくれなければ腎症はわかりませんし、眼科受診を進めてくれなければ網膜症に気づかないということもあり得ます。血液検査と尿検査は毎回必要です。

 

 次回は、糖尿病で最も重要な合併症「えのき」について詳しく解説します。

 

<アピタル:よくわかる糖尿病の話・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/tounyou/(アピタル・岩岡秀明)

アピタル・岩岡秀明

アピタル・岩岡秀明(いわおか・ひであき) 船橋市立医療センター代謝内科部長

船橋市立医療センター代謝内科部長、千葉大学医学部臨床教授。1956年生まれ。1981年千葉大学医学部卒。日本糖尿病学会学術評議員、専門医、指導医。日本内科学会総合内科専門医、指導医。主な編著書「ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブック Ver.3」(中外医学社)、「糖尿病コンサルトの掟」(金原出版)など。

関連ニュース