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 たばこ依存症を取り上げるに当たって、禁煙している患者さんを探しているとき、沖縄大学の山代寛教授から「担当患者さんで2人一緒にやめようとしている人がいる」と紹介されたのが、平仲佳子さんと高江洲孝代さんです。

 2人は高校時代からの友人で誕生日も同じ。ともにクリスチャンなので毎週、教会で顔を合わせるほか、なんだかんだと電話で連絡を取り合う仲だそうです。

 2人から取材で話を聞くうち、「ピアプレッシャー」という言葉を思い出しました。仲間からの圧力という意味です。

 思春期の子どもが、たばこを吸い始めてしまうのも、周りで吸っている仲間に格好いいと憧れ、吸っていない自分は格好悪いと思ってしまう、そうした「圧力」がきっかけになるという指摘があります。

 ですが、ピアプレッシャーはよい方にも作用します。

 平仲さんが禁煙外来を受診したと聞いた高江洲さんは、自分も一緒に受診します。偶然ではありますが、同じ8月6日の誕生日までにはやめようと、2人で禁煙に励むのでした。その後、再び喫煙してしまいますが、改めて2人で禁煙外来を受診するところまでこぎ着けます。

 2人の場合、禁煙までのプロセスに、クリスチャンのコミュニティーでのつながりも影響しています。平仲さんが「ちばなクリニック」の禁煙外来に行ったのは、禁煙に成功したクリスチャン仲間の勧めがあったからです。再度の禁煙に挑戦するのも、2度目の禁煙で成功したクリスチャンの知人からの勧めがあったからでした。

拡大する写真・図版禁煙外来で、主治医の山代寛さん(奥)に近況を報告する高江洲さん(手前左)と平仲さん

 

 こうした仲間同士で支援しあう形の依存症克服は、ギャンブルや禁煙の自助グループにも共通します。ことほどさように、個人の健康にまつわる行動の取り方は、仲間や所属する集団のありように、少なからず影響を受けることは、様々な研究で明らかになっています。

 人のつながりでもたらされる健康にまつわる行動の変化などを研究しているニコラス・クリスタキス米イェール大教授らは、米マサチューセッツ州のある町の出身者を対象にした大規模な健康追跡調査のデータから興味深い動きを見つけました。

 「ある人がたばこをやめると、友人、友人の友人、そのまた友人へと(禁煙の)波及効果が広がっていく。(中略)禁煙には、時間と空間での一種の同調性がある。相互につながった喫煙者グループの全体が、お互いを知らなくても、ほぼ同時にそろってたばこをやめる。反喫煙の波が全員に波及していくかのようだ。(中略)たばこをやめる決意は、バラバラの個人が1人でするわけでない。そこには直接・間接につながった個人からなるグループの選択が反映しているのである」(著書「つながり」から引用)

 裏を返せば、自分がどんな集団に所属しているかで、健康・不健康のリスクが減ったり増えたりしているともいえます。

 クリスチャンのコミュニティーに所属している2人の禁煙ストーリーは、日頃つながっている人たちとのつながりがもたらす、良い意味での副作用なのだ。そう実感しました。

 

<アピタル:患者を生きる・依存症>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(錦光山雅子)