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 ++ 相談 ++

 病院で新人の指導係になりました。指導していると、その新人が途中から不機嫌になってしまうのです。もう何度も同じことを説明しているのに、「習っていません」などと言われて、いわば「逆ギレ」です。私だって忙しい中で相手のためを思って教えてあげているのに、その態度はないんじゃない?

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 この「逆ギレ」については今さら説明しなくてもイメージできると思いますが、逆ギレされる方も、不快ですし疲弊しますよね。今回は、人はなぜ逆ギレするのかについて考えてみます。

 

 「逆ギレ」について、主要な国語辞典によれば以下のように説明されています。

 ・「それまで叱られたり注意を受けたりしていた人が、逆に怒り出すこと」

  (広辞苑第6版,岩波書店,2008)

 ・「なだめている人、または怒られている人が、かっとなって怒り出してしまうこと」

  (大辞泉デジタル版,小学館,2007)

 

 思い返せばこの言葉はずいぶん前から使われていますね。いまどきの若者だからという話ではなく、以前からこういう人はいたのです。今回は新人指導ですが、部下が意見を述べたり提案したりすると逆ギレする上司という構図もあるように思います。

 

 怒りは、自分が脅かされた時に身を守るための防衛機能です。動物の恐怖に対する反応として、闘争逃走反応(Fight or flight response)があります。これは、生命の危機が迫っている時に、交感神経が優位になって、戦うか逃げるかを瞬時に選択するというものです。その特徴に照らしてみると、動物が敵を威嚇するように、逆ギレする人も脅威に対して戦おうと怒りを発動することで自分自身を何とか保っているのかもしれません。

 

 仕事に就いたばかりの時は、何でもうまくできるわけではありません。新しい環境の中、知識も技術も未熟で、不安や緊張が続きます。加えて、誰かに注意される、指導される、叱られるなど、言ってみれば他人に怒られることに慣れていない人も多いでしょう。

 

 アンガーマネジメントは、怒ってはいけないというものではなく、怒るなら上手に怒ることを目指します。そういう意味では、逆ギレは適切な怒りの表現とは言えません。でも、その時点では、ほかに適切な対処行動を持っていないとも考えられます。プライドがあって仕事ができない自分を認められなかったり、でも自分に自信がなかったり、不安の表れだったりするのでしょう。

 

 それでは、どうすれば良いのかと言えば、本人がその表現パターンを変えようとしない限り、私たちは相手を変えることはできないのです。私たちが変えられるのは、事象の捉え方や、相手に対する関わり方です。

 

 先ほどの言葉の説明に従えば、逆ギレされたと感じたということは、そもそもは自分が怒っていたと言えます。仮に怒っていたのでなく教育的に指導していたのだとしても、相手は脅威に感じていたのかもしれません。教える側も限られた時間の中で焦りも出ますし、看護師なら患者の安全が危ぶまれる状況になったら悠長に見守っているわけにはいきません。つい語調が強くなってしまうこともあるのではないでしょうか。指導係であれば、相手への期待感があるがゆえに怒りが生じることもあります。

 ▼相手への期待感が怒りの引き金になるかも(http://www.asahi.com/articles/SDI201703312566.html

 

 私たちは自分の言動を変えることができます。相手の反応をみて余裕がないと思ったら、まず自分が落ち着いて一段優しい口調を心がけてみましょう。そして、せっかく教えてあげたのに逆ギレされたという時は、相手はきっと自分を保とうとしているのだと思えば、腹立たしさも多少おさまってきませんか。

 

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編集部から

 田辺有理子さんの本が8月31日に出版されました。タイトルは「イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ」(中央法規出版、2160円)です。(詳しくはアマゾン:http://goo.gl/52wVqv別ウインドウで開きます別ウインドウで開きます)

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 精神看護専門看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。