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 大阪市平野区に住んでいた女性(68)は関節リウマチ、糖尿病、高血圧症など様々な病気に悩まされていました。ひざが痛む上に糖尿病による高血糖で意識を失い入院したのを機に、自宅での一人暮らしは無理と判断、有料老人ホームに入居しました。そこで診察を受けた医師から糖尿病や高血圧症は関節リウマチの治療薬のせいかもしれないと言われました。医師や薬剤師らの協力でリウマチの薬を変え、糖尿病も高血圧症の薬を飲まないで済むようになりました。 

 連載に登場した女性(68)が入居している大阪市平野区の有料老人ホーム「スーパー・コート平野」では、隔週で総合診療医の城戸哲夫医師が看護師と共に診療にやって来ます。入り口脇の部屋を臨時の診察室に仕立て、そこで2時間ほどかけて患者全員を診ていきます。ホームの常勤看護師の上野一代さんや、薬剤師の藤永智也さんも同席します。

 城戸さんは診察の最中、時折藤永さんに顔を向け、いろいろ相談します。ある男性患者の診察では「(抗うつ剤の)パキシルを処方するのはどう思う?」。藤永さんは持っていたモバイル端末の患者記録を確認し、「サインバルタをすでに服用しています。作用が(パキシルと)かぶると思います」と城戸さんに伝えます。城戸さんは藤永さんの助言を参考にして処方します。

 医師が薬の処方を決める過程に薬剤師がこれほど関わっているとは。新鮮な光景でした。

 

 日本在宅薬学会の狭間研至理事長は、城戸さんと藤永さんのやりとりを「薬学が医療のPDCA(業務の計画・実行・評価・改善サイクル)に適切に入っている」と評します。ただ、薬剤師と医師が同席して処方を決定していくようなやり方はまだ、非常に限られています。

 多くの場合、薬剤師が医師に意見するのは医師が処方を決めた後、つまり患者が処方箋(しょほうせん)を持って薬局に入ってきたときです。狭間さんは「処方箋を書く前に言うのが理想。薬剤師の専門知識が患者の処方決定の時に生かされていない。決まった後に意見を言ってもなかなか変わらない」と指摘します。

 

 女性が入居するホームで訪問診療をしている医師たちは、新しい入居者が入るとまず薬を見直し、減らしたりやめたりする場合は時間をかけて服用量を減らしていきます。

 女性はリウマチの薬の副作用で糖尿病を引き起こしていました。それに医療現場がなかなか気付かずに漫然と治療が行われていました。女性の主治医で薬の見直しをすすめた、城戸さんは女性のようなことが起きないようにするために、主治医の必要性を強調します。

 城戸さんは「主治医が患者のすべての病気を把握し、服用するすべての薬を確認する仕事が必要になる。ここで薬剤師が重要な役割を担うのです。薬剤師がいてこそ、薬を減らす計画もスムーズに進みます。でも、現実は高齢者医療、在宅医療で適正な投薬がなされていない。女性のようなケースがどれだけ多いことか」と話します。

 

 薬の見直しが日常的にできるのは、薬剤師も専門知識を発揮し、積極的に診療の輪に入っているからです。城戸さんが薬に関する相談を積極的に藤永さんにしている様子を見て、そう納得しました。

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 患者を生きる「薬を見直す」の全4回をまとめた【まとめて読む】を、明日掲載する予定です。こちらもご覧ください。

<アピタル:患者を生きる・我が家で>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/

(錦光山 雅子)