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 今回は、糖尿病の治療で、もっとも重要ですが、もっとも難しい生活療法(食事療法と運動療法、嗜好(しこう)品)のポイントについて解説します。

 糖尿病を悪化させる要因はたくさんあります、肥満、喫煙、ストレス、睡眠不足、運動不足、飲酒、これらにどう取り組むかを解説します。

 糖尿病治療の三本柱は、図のように食事・運動・薬物療法です。

 そして、患者を中心に、医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・臨床検査技師・理学療法士が、チーム医療で取り組みます。

 

 

1) 食事療法のポイント

 食生活では、まず3食きちんと食べることが大事です。

 よく朝食を食べない人がいますが、朝食はしっかり食べて、夜はなるべく少なくし、寝る前には食べないことが重要です。

 

 毎日18時に仕事が終わる人ならいいのですが、みなさんがそうとは限りません。消化吸収に3時間ぐらいかかりますので、食べてすぐ寝てしまうと翌朝の血糖値が上がってしまいます。

 翌朝何も食べずに受診してくる患者が、「何で、朝何も食べていないのに、私の血糖値が高いのですか」と聞いてくるときがあります。

 たとえ眠っている真夜中でも、肝臓でのブドウ糖産生を適切にコントロールするためには24時間インスリンが必要ですが、糖尿病患者はインスリンの働きが悪いので、空腹時血糖値が上がってしまいます。正常な人は、朝食前の血糖値は109mg/dl以下(血液1デシリットル当たりのミリグラム)ですが、糖尿病の人は朝食べていなくてもたとえば160mg/dlという値に上がってしまいます。

 これはインスリンの働きが悪いからです。「夕食はなるべく早く食べるようにしましょう」「寝る前3時間は食べるのをやめましょう」というのは、糖尿病の患者だけでなく、予備群の人もそうしたほうがよいですね。

 

 食べる量は、できれば3食同じぐらいに食べるのがよいのですが、どうしても夕食が多くなってしまいます。

 食事は、忙しくても20分かけてゆっくり食べることです。ゆっくり食べた方が、血糖値の上昇を抑えられたり、満腹中枢が満足したりするからです。忙しいとき、仕事の合間に5分ぐらいで食事をしてしまうのは避けましょう。

 

 食物繊維は血糖値を下げる効果がありますので、海藻類やきのこ類はたくさん食べて下さい。

 また、野菜をいっぱい食べるというときに注意しなくてはいけないのは、ポテトやコーンです。ポテトサラダやコーンサラダをたくさん食べると、糖質が多いので意外と血糖値が上がってしまいます。

 野菜でたくさん食べた方がいいのは、トマト、キュウリ、レタス、ホウレンソウ、ニンジンなどです。ただし、マヨネーズやドレッシングをいっぱいかけ過ぎないことが重要です。

 果物は果糖なので血糖値を上げてしまいます。バナナなら1日1本、リンゴや柿なら1日半分、みかんは小さいものを1日2個までにしましょう。

 

 また、食べる順番も重要です。

 野菜や汁物、お魚やお肉を先に食べて、ご飯は最後に食べるほうが血糖値はあまり上がりません。

 これは、お魚やお肉を先に食べると、インクレチンという血糖値を低下させるホルモンが腸から分泌されるからです。

 

 飲み物は水、お茶(緑茶、麦茶、ウーロン茶)と無糖のコーヒーや紅茶にしましょう。清涼飲料水やスポーツドリンクは血糖値を上げてしまいます。

 夏場には熱中症の予防として、スポーツドリンクが大きく宣伝されますが、糖尿病の患者は、通常の水やお茶を多く飲み、塩分補給は塩や梅干しでしてください。

 毎年夏場は、スポーツドリンクの飲み過ぎで高度の高血糖になってしまった患者が内科外来を受診されます。

 

2) 「緩やかな糖質制限食」の勧め

 3食バランスよく食べて、ご飯は少なめにすることが重要です。

 「緩やかな糖質制限食」(1食あたり糖質40グラムまで)は、血糖コントロールに有用だからです。ごはん、パン、麺類の量を減らします。

 若い人にありがちな「ラーメン・ライス」や「チャーハン・ラーメン」が一番良くありません。「カツ丼とざるそばセット」のようなものも良くありません。

 つまり、糖質ばかりのものを食べるのはよくないということです。私はよく「幕の内弁当にしましょう。そしてご飯は半分残しましょう」と、提案しています。

 「緩やかな糖質制限食」では、カロリーはあまり気にせず、野菜、お魚・お肉はたくさん食べましょう。

 

 「緩やかな糖質制限食」とは、1食あたり糖質40グラムまでが目安です。ごはんで軽く半膳ぐらい、パンで薄切り1枚です。これを1日3食とると、120グラムになります。これ以外からも糖質は体に入ってきますので、1日130グラム位までなら緩やかな糖質制限食になります。

 一方、「極端な糖質制限食」(糖質は1食10グラムまで)を推奨する人たちもいますが、長期間(10年間)でのエビデンス(科学的な根拠)はありませんし、また普通の人ではとてもそんなに長くは続けられません。

 

 米国糖尿病協会では、カロリー制限、糖質制限、どちらでも有用としています。

 ご飯が大好きな人は、ご飯を減らすだけで、血糖値は下がります。一方、ご飯をあまり食べない人は、カロリー制限食でバランスよく食べましょう、ということになります。

 時々、糖質制限食以外を認めない「糖質制限食原理主義」の医師がいます。そういうところに行くと大変です。

 つまり、糖質制限食、従来のカロリー制限食、どちらでもよく、その人にあった食事療法を選ぶことが大切です。

 

 日本糖尿病学会は、「糖尿病における三大栄養素の推奨摂取比率」として、「一般的には、炭水化物50~60%(150g/日以上)、たんぱく質20%以下を目安とし、残りを脂質とする」としています。

 ただし、米国糖尿病協会の診療ガイドラインには、「栄養素の推奨摂取比率はありません」と書いてありますので、この比率はあまり気にする必要はないでしょう。

 

 糖質制限食で大事なのは、果物やお菓子、ジュースといった間食も減らすことです。つまり、「緩やかな糖質制限食」は、ご飯だけではないということです。

 炭水化物は、食物繊維と糖質を合わせたものです。

 食物繊維は血糖値を下げるのでたくさん食べた方がよいのです。例えば、海藻やきのこ類です。ですから、炭水化物制限ではなく、糖質制限といった方が正しいのです。

 私が、「緩やかな糖質制限食」を推奨するのは、これを10年間以上続けないといけないためです。

 

3) 運動について

 運動も重要ですが、毎日30分も運動療法としてまとめて歩けない人もいます。

 仕事の合間にこまめに体を動かしたり、エレベーターを使うのをやめたりするのが現実的な対応です。

 ちょっと早めに家を出て、バス停1つ分歩くとか、会社ではエレベーターで2~3階分は階段を使うとか、普段の生活の中でこまめに歩く・動くことを心がけることが大切です。

 

4) アルコールとタバコ

 アルコールとタバコでは、タバコの方が体によくありません。

 タバコは、がんのリスクだけでなく、心臓病、COPD(慢性閉塞(へいそく)性肺疾患)などいろいろな病気の原因になるからです。タバコは、禁煙外来に通ってでもやめた方がよいでしょう。

 

 アルコールは、糖尿病の患者でも血糖コントロールが良好なら、飲む量を減らせば大丈夫です。具体的に言うと、糖尿病の患者でも血糖コントロールがいい人は、日本酒なら1合、ビールなら小さい缶ビール(350cc)1本、ワインならグラス2杯。これくらいを週に2~3日なら糖尿病は悪化しません。

 もちろん、アルコール性肝硬変の人とか、アルコール依存症の人は禁酒が必要ですが、そうでなければ節酒で大丈夫です。

 ただし、糖質がないお酒(ウイスキー、焼酎)だからといって、肝臓のためにあまりたくさんは飲まないほうがよいでしょう。

 

5) ストレスの解消

 現在のようなストレス社会ではなかなか難しいのですが、「趣味を持ち、いろいろなことに興味も持ち、友達をたくさん作り、よく笑い、よく歩く」。これらは血糖値をコントロールするだけでなく、老化や認知症の予防にも重要です。

 音楽を聴く、読書をする、映画を観る、散歩をする、写真を撮る、ガーデニングをするなど、ぜひ食べる事以外の趣味を持ちましょう。

 

 次回は、糖尿病の飲み薬について解説します。

 

<アピタル:よくわかる糖尿病の話・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/tounyou/(アピタル・岩岡秀明)

アピタル・岩岡秀明

アピタル・岩岡秀明(いわおか・ひであき) 船橋市立医療センター代謝内科部長

船橋市立医療センター代謝内科部長、千葉大学医学部臨床教授。1956年生まれ。1981年千葉大学医学部卒。日本糖尿病学会学術評議員、専門医、指導医。日本内科学会総合内科専門医、指導医。主な編著書「ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブック Ver.3」(中外医学社)、「糖尿病コンサルトの掟」(金原出版)など。