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 皆さんは、待たされることにイライラしませんか。病院を受診するときにイライラしながら待っている人は、結構いると思います。仕事で部下からの報告を待って、イライラしている人もいると思います。待たされるイライラにどう対処していますか?

 

 私たちがイライラする原因は、待たされる時間の長さでもなく、状況や相手でもありません。前回、怒りの核心は自分の価値観だという話をしました。この価値観は、自分にとって心地よい状態、期待、当たり前と思うような状況がもとになり、過去の経験の蓄積によって形成されています。私たちは、これらの価値観と、そうならない現実とのギャップに対して怒り、イライラするのです。

 

 病院でイライラする理由は「待たされているから」と言えばそれまでですが、改めて考えてみるといろいろあります。外来で待っているとしたら「具合が悪くて待つのが辛い」のに待たされる、「予約通りに進めてほしい」のに予約通りに進まない、というのが代表的でしょうか。その他たくさんありますが、病院の待ち時間問題を論じるのは控えることとして、ここでは、イライラを解消するための思考の整理を考えてみます。

 

 私たちは、怒っても解決できないことに対して怒っている場合があります。イライラから解放されるヒントの一つに、「イライラの対象が自分でコントロールできるものかどうかを判断する」という方法があります。自分でコントロールできないものに怒っても仕方がないのでそれは受け入れて、代わりに自分でコントロールできることで対処するのです。

 

 患者の立場として私が待ち時間にイライラする理由は「先の見通しが立たないこと」です。私は、待ち時間が長いことよりも、いつ診察室に呼ばれるかがわからないことが苦痛です。診察に呼ばれるまでの待ち時間は、医療機関の課題としては取り組まないとならないと思いますが、私はいまのところ一人の患者としてはコントロールできないほうに分類しています。コントロールできるのは、自分の行動、待ち時間の過ごし方です。

 診察前の待ち時間や、診察後の会計までの待ち時間、そして薬局での処方の待ち時間は、何回か通院するうちにそれぞれ予測できるようになってくるものです。私は、おおよその見通しが立てば、それほど苦にならないので、本を持参したり、短時間でできる仕事をいくつか片付けたりします。

 小さなお子さん、高齢の方、介助が必要な方などの受診に付き添っている方々は、きっと大変なご苦労をされているでしょうし、様々な工夫をされていると思います。

 時々、かなり苛立った様子で受付の窓口に「いつまで待たせるのか」と詰め寄っている人がいますが、怒りが大きくなる前に、待ち時間をたずねてみる、というのも一つの対処法です。

 

 仕事でも、待つことにイライラする場合があります。その日のうちに終わると思って部下に任せた仕事の経過報告がなかったら、翌日あたりから「昨日、指示したことをやってくれただろうか」と気になってくるかもしれません。こういう場合は、「○○の報告書は月末が締め切りだよ」とか「○月×日までにお願いね」と明確に期限を確認すれば、イライラしながら待たずに済むと思います。

 でも、意外と期限を区切るまでもないと思うようなちょっとした依頼で、思わぬ行き違いが生じやすいものです。

 もう終わっているだろうと思っていたのに、まだ取り掛かってもいないと言われたらがっかりします。仕事を依頼されたほうも、たいてい悪気はなく、「まだやっていなかったの?」と言われても、「急ぎの仕事だったら先に言ってよ」と思っているでしょう。

 ここで怒りの原因となる価値観を探ってみると、「この内容なら一日もかからないだろう」という上司の見込みが部下とズレていた可能性があります。また、「依頼された仕事は自ら経過報告すべき」と思っていれば、報告がないことにイライラするかもしれません。

 これも、ギリギリまで待たずに、こちらから確認してみたら良いのです。指示を受ける側も同じです。「これは急ぎですか?」「今日は忙しいので夕方の作業になりますが間に合いますか」と確認するなど、歩み寄りの姿勢が重要です。

 

 待たされるイライラは、待たされたと感じないように自分の行動を変えてみることで、解消できるかもしれません。

 

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編集部から

 田辺有理子さんの本が出版されました。タイトルは「イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ」(中央法規出版、2160円)です。(詳しくはアマゾン:http://goo.gl/52wVqv別ウインドウで開きます

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 精神看護専門看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。