[PR]

 京都市伏見区の大原秀雄(おおはらひでお)さん(76)は8年前、前頭側頭型認知症と診断されました。脳が萎縮し、言葉や会話の内容を十分理解できず、話そうと思っても言葉がうまく出ない状態でした。不安や焦りの感情を抑えられず、それが妻貞子(さだこ)さん(73)への「暴力」として表れていました。

 貞子さんは介護疲れから、精神科病院への長期入院を相談しますが、断られてしまいます。代わりに提案された、特別養護老人ホームの居室を他の人と1カ月交代で使う「ルームシェアリング」を利用しながら何とか秀雄さんと自宅での暮らしを続けてきました。症状が進んで歩けなくなり、今は自宅のベッドの上で過ごしています。介護は続いていますが、秀雄さんが歩けた当時は「本当に大変だった」と振り返ります。

不安と焦りが妻への暴力に

 「夫が歩けなくなって、ようやくかわいいなって思えるようになりました」。京都市伏見区の大原秀雄(おおはらひでお)さん(76)の妻貞子(さだこ)さん(73)は、張り詰めた介護の日々を振り返った。秀雄さんは8年前「前頭側頭型認知症」と診断された。病気が原因で、貞子さんや物にあたるようになっていた。

 

 秀雄さんは2001年、市内の病院で営繕の仕事を60歳で定年退職。異変はその前後に表れた。退職の2年前、車を運転中に突然、高速道路で「ブレーキがきかない」と言い出した。だが、ブレーキに問題はなかった。02年に嘱託で元の職場に戻ったが、翌年に急に辞めてしまった。肺がんの疑いで検査入院した病院を抜け出したこともあった。

 06年ごろには、貞子さんが「バイクにガソリンを入れてくる」と言って15分ほどして家に戻ると、戸のガラスが割れて散乱し、電子レンジがひっくり返っていた。「どこに行っていたんや」。大柄な秀雄さんは妻を壁に押しつけて怒鳴った。貞子さんは「殺される」と思い、近所に駆け込んだ。

 秀雄さんは貞子さんの姿が見えないと不安になり、いら立った。風呂に入るときは秀雄さんにみかんを二つ渡し、食べている間にパッとすませた。いつでも外に逃げ出せるように普段着で寝た。

 08年、秀雄さんの母がいた特別養護老人ホームに併設された居宅介護支援事業所のケアマネジャー増田弘美(ますだひろみ)さん(50)に相談した。

 02年に市内の病院でアルツハイマー病と診断されていた。増田さんは、医療機関を受診し、要介護認定を受けるよう勧めた。秀雄さんは再びアルツハイマー病と診断された。さらに症状が進み認知症専門医のもとで治療を受けようと、09年暮れに京都府立洛南病院(宇治市)を受診。そこで、前頭側頭型認知症と診断された。

 感情や行動を制御する前頭葉と、言語を理解する左側頭葉が萎縮していた。話しかけられても言葉や会話の内容を十分理解できず、記憶の連続性が保てない。脳の萎縮が原因で、話そうと思っても言葉がうまく出ず、不安や焦りの感情を抑えられない。それが、貞子さんへの「暴力」として表れていた。

 

一人だけの介護に限界

 2009年12月、京都市伏見区の大原秀雄(おおはらひでお)さん(76)は前頭側頭型認知症と診断された。感情や行動を制御する前頭葉と言語を理解し話す左側頭葉が萎縮し、話の内容を十分理解できず、言葉が思うように出なくなっていた。

 いら立ちが抑えられず、妻貞子(さだこ)さん(73)や物に当たった。何度かデイサービス(通所介護)を利用したが、無断で自宅に帰ってきてしまい3カ月も続かなかった。

 「私が放り出したら夫をみてく…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら