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 広告は、宣伝する商品について関心をもってもらい、購入してもらうためにおこなわれています。その一方で、健康食品などの広告では、法律を違反している事例が後を絶ちません。さらに、広告の内容とは裏腹に、健康被害が発生したケースもあります。今回、健康・医療に関する広告には、どのような問題点があるのか紹介します。

 

 ▼健康・医療に関する広告には、法律によって規制がかけられている

 ▼しかし、その規制の裏をかくような広告、ときに不適正な表現の広告が後を絶たない

 ▼法律上、健康食品は疾病の予防・治療を目的に用いることはできないことを知ることが重要

 

 インターネットによる情報収集は便利な一方で、検索結果には広告も多く含まれています。また、広告は、新聞にも載っていますし、テレビ番組の前後や途中にコマーシャル・メッセージ(CM)が放送されています。番組そのものが、通信販売の内容になっているものもあります。

 社会全体でみれば、経済活動の一環として、広告がおこなわれることは特に問題ではありません。筆者自身も、広告そのものを否定しているわけではありません。

 広告の中には、ときに世の中に大きな動きを呼び起こすことがあります。

 ・企業のブランドイメージを高めるために素晴らしい映像で制作された広告。

 ・社会への問題提起を呼び起こすような広告。

 ・一度聞いたら忘れられないようなキャッチコピーを使った広告。

 もちろん、広告の受け手である個人への行動心理に与える影響も計り知れません。最近では、心理学的に検証されたエビデンスを経済学のモデルに取り入れていく行動経済学という学問分野も研究が進められてきています。

 しかし、健康や医療に関しては、もし広告の内容に間違いや誤解を招くような表現があった場合、情報の受け手である消費者は、健康被害を受けたり、ときに命にかかわるような事態に陥ったりすることになりかねません。

 

健康・医療に関する広告には様々な規制がある

 健康や医療に関する広告については、消費者保護の観点から、様々な規制があります。代表的なものを下記に示します。

 

 さらに最近では、医療機関のホームページ(ウェブサイト)も広告と同様に規制するために医療法が改正されました。

◎医療機関サイトも誇大な表示は禁止 改正医療法成立(朝日新聞:2017年6月7日)

http://www.asahi.com/articles/ASK674VDRK67ULBJ008.html

 しかし、健康食品の広告に関しては、法律やガイドラインがあることを知ってか知らずか、違反している表現が目立ちます。

 例えば、2017年3月28日に東京都が公表した「平成28年度健康食品試買調査結果」(※1)によると、125品目中84品目に不適正な表示・広告が認められたことが明らかとなっています。

 具体的な不適正な表現として「ドライアイ、目の炎症や充血を抑える効果」「物忘れ・認知症の予防に」「カラダの不要なものを外へ排出」「肥満成分の燃焼のサポート」などが挙げられています。なお、この東京都の調査は毎年実施されており、平成27年度は126品目中103品目、平成26年度は125品目中105品目に不適正な表示・広告があったとされています。

 健康食品は、錠剤やカプセルのものも多く、食品としての美味しさ、つまり味覚で勝負することはできません(逆に「良薬は口に苦し」ではないですが、あえて不味くしているのではないかと思えるような商品もあります)。また、栄養学的にみても、バランスの取れた食品とは言い難い商品がほとんどです。つまり、健康食品は、機能性を訴えることでしか商品を宣伝できないが故に、ともすると表現に行き過ぎがおこるのかもしれません。

 ここで読者の皆さんに知っておいてもらいたいのは、「健康食品を含むすべての食品は、疾病の予防・治療を目的に用いるものではない」ということです。(※特別用途食品、疾病リスク低減表示特定保健用食品は除きます)

 つまり、食品にも関わらず、病名を記載したり、症状の改善効果を記載したりして商品を広告して販売している企業は、もしかすると法律違反を厭わない姿勢を持っているのかもしれません。あるいは、人の口に入る食品を販売しているにも関わらず、関連する法律を確認することなく販売している無知の集団の可能性もあります。

 いずれにしても、そのような企業からは、皆さんも商品を購入したいとは思わないのではないでしょうか。繰り返しになりますが、健康・医療に関する広告には様々な規制があることを是非覚えておいてください。

 

更に巧妙な手口の広告が出現

 新聞の広告やテレビのCMであれば、それが商品の宣伝であることは皆さんも分かるかと思います。しかし、最近、一見すると報道記事のような体裁をしていながら、実は広告だったという巧妙な手口が問題視されてきています。

 東京都福祉保健局では、インターネットや新聞における記事風の広告への注意喚起をおこなっています。

 

◎インターネット、新聞などの記事風広告について

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kenkou/iyaku/koukokukisei/zenpan/kigihuu.html別ウインドウで開きます

 消費者に広告と気づかれないように宣伝行為をおこなう「ステルスマーケティング」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。

さらに、医薬品に関する報道記事に対しても、製薬企業・広告代理店・報道機関など複雑な仕組みの中で対価が支払われていたことが一部のメデイアで指摘されています。

 

◎シリーズ「買われた記事」(ワセダクロニエル)(http://www.wasedachronicle.org/category/articles/buying-articles/別ウインドウで開きます

 情報の受け手側が、どれだけ気をつけていても、その情報が広告なのかどうかも見分けることが不可能なこともあります。

 冒頭にも述べましたが、筆者自身、広告そのものを否定するつもりはありません。しかし、人の心理の弱みをつく広告、だまし討のような広告、ときに法律を違反している広告があるのが現実です。

 今後は、広告主・広告代理店・メデイアが、消費者に対して、どのような姿勢を示していくのかが問われているのだと思います。

 

[参考資料]

(※1)東京都「平成28年度健康食品試買調査結果」:http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/03/28/12.html別ウインドウで開きます

 

<アピタル:これって効きますか?・健康・医療情報の見極め方>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/kiku/(アピタル・大野智)

アピタル・大野智

アピタル・大野智(おおの・さとし) 島根大学・教授

島根大学医学部附属病院臨床研究センター・教授。1971年浜松市生まれ。98年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。同大学第二外科(消化器外科)入局。補完代替医療や健康食品に詳しく、厚生労働省「『統合医療』情報発信サイト」の作成に取り組むほか、内閣府消費者委員会専門委員(特定保健用食品の審査)も務める。