[PR]

 血液にはさまざまなたんぱく質が含まれていますが、アルブミンは血液中にもっとも多く含まれているたんぱく質です。採血検査の項目に血清アルブミン値があり、正常値はだいたい4グラム/デシリットル以上です。

 血清アルブミン値が下がる代表的な病気は肝硬変とネフローゼ症候群です。アルブミンは肝臓でつくられますが、肝臓が硬く小さくなる病気である肝硬変ではアルブミンを十分に作ることができなくなります。ネフローゼ症候群はアルブミンが尿中に漏れ出て失われてしまう腎臓の病気です。

 肝硬変やネフローゼ症候群といった病気ではないのに血清アルブミン値が下がることがあります。血清アルブミン値は栄養状態を反映しており、低いと低栄養だとみなされます。個人差はありますが、高齢者では血清アルブミン値は低めです。病気というよりは、老化現象の一つだろうと私は思っています。

 血清アルブミン値が低い人は、正常の人と比べて、死亡率が高いという研究があります。そうでなくても検査値が異常であると患者さんは気にします。「血清アルブミン値を上げるにはどうすればいいでしょうか?」と患者さんからしばしば質問されます。ここで注意しなければならないのは、アルブミンの検査値だけを上げても意味がないことです。

 検査値を改善するだけなら、点滴用のアルブミン製剤を使えばいいのです。しかし、アルブミン製剤をたんぱく質源としての栄養補給や単なる血清アルブミン濃度の維持を目的として使ってはいけないことになっていますし、使っても無駄です。アルブミン値の低下は低栄養の指標の一つに過ぎません。点滴でアルブミンを入れれば検査値は一時的に改善しますが低栄養はそのままです。数字だけ改善するのではなく低栄養そのものを改善させなければなりません。

 低アルブミン血症を伴う低栄養にはたんぱく質の摂取が勧められています(腎臓病の患者さんはたんぱく制限が必要なことがありますので主治医と相談してください)。点滴ではなく口から食べます。肉類や牛乳・乳製品を推奨する医学者もいますが、苦手なら魚介類でも大豆製品でもいいと思います。食が細い人は栄養補助食品を使ってもいいでしょう。

 たまに、肉や牛乳といった動物性たんぱく質が体に悪いという誤解がみられます。十分に工夫をすれば肉や牛乳なしでも必要な量のたんぱく質を摂取することはできますが、健康面からはあまり意味がありません。肉が嫌いならともかく、肉が好きだけど健康のために食べるのを我慢して玄米菜食の食事をするのは無駄どころか逆効果です。

 低栄養になりやすい高齢者は、高血圧や軽度の糖尿病などの病気があっても食事の制限を緩めたほうがいいでしょう。また逆に、健康に良いからといって嫌いなものを無理に食べる必要もありません。結局のところ、年をとったら好きなものを楽しく食べるのが良いように思います。

<アピタル:内科医・酒井健司の医心電信・その他>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/sakai/(アピタル・酒井健司)

アピタル・酒井健司

アピタル・酒井健司(さかい・けんじ) 内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。