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 「だって、義務教育ですからね」。埋め込み型の補助人工心臓をつけて心臓移植を待つ子どもが学校に通えるよう、支援に取り組む大阪大の平将生医師は、活動の理由をそう言います。とてもシンプルです。

 日本国憲法や教育基本法は、子どもたちを小学校と中学校で9年間学ばせるよう、国民や保護者に義務づけています。それを受け入れるなら、たとえ重い心臓病を抱えているとしても、ふつうの子たちと同じように学べる機会が可能な限り保障されるべきだ。そうした考えは、障害児やいわゆる「医療的ケア児」をめぐる議論とも共通しています。

 

 今回取り上げたテーマは、補助人工心臓が小型化して病院を離れて移動することが容易になったことに伴って、新しく浮かび上がってきた課題といえます。平医師は大学病院での業務の合間を縫って学校を訪れ、教員や生徒らに補助人工心臓のしくみや注意点を伝えるとともに、こうした子どもの復学に協力してもらえるよう呼びかけています。条件整備を教育委員会に訴えたりもします。

 学校側も設備を改善するほか、教員が補助人工心臓の扱いを学ぶなど、努力しています。でも、万一事故が起きてしまったら、責任を問われかねません。だから、「医療の素人でしかない私たちだけでは……」と慎重な気持ちも抱いています。平医師としても、学校側に無理なお願いはできません。負担をかけすぎると、協力が得られなくなってしまうと思うからです。そしていまは主に母親が、長い時間を学校で過ごしています。

 

 シンプルな理由に支えられた子どもたちの復学。その実現のために、子どもたちのすぐそばにいる人たちが苦心しています。

 

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<アピタル:患者を生きる・移植>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(田村建二)

田村建二

田村建二(たむら・けんじ) 朝日新聞編集委員

1993年朝日新聞入社。福井支局、京都支局、東京本社科学部、大阪本社科学医療部次長、アピタル編集長などを経て、2016年5月から編集委員。