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 久しぶりに薬の飲み方について患者さんのお父さんから質問されたので、今回はその話です。「4日分処方しておきます」と言ったら、「それは全部飲みきった方がいいですか?」と質問されました。飲み切るべきかどうか、答えは、薬の内容によるんです。

 

 例えば、溶連菌感染症のときの抗菌薬、川崎病のときのアスピリンなど、飲むのを中断して治療が不十分になったときにデメリットが大きい薬があります。溶連菌はリウマチ熱、急性糸球体腎炎を起こすかもしれないし、川崎病は血栓ができてしまうかもしれません。でも、風邪薬は、対症療法のための薬なので症状がなくなったら飲む必要はありません。対症療法の薬というのは、痰(たん)の絡んだ咳がひどければ痰を切りやすくする薬、熱がつらかったら解熱鎮痛薬というような症状を和らげる薬です。こういったものは、早く飲んだからといって早く治るわけでもないので、小児科をせっかく受診しても処方されない場合もあります。薬がなくても風邪に対しては、鼻水を吸うとか、水分を多く摂らせる、大きい子なら鼻をかんだりうがいをしたり、部屋を暖かくして加湿しよく休むなど家でできることもあります。

 

 薬を念のために持っておきたい、ひどくなったら飲ませるけれど今は飲まないということは、あまりお勧めしません。薬を飲んだ後の症状が、薬を飲む前と同じような症状に見えても、違う病気によるものであることもあります。特に小さい子どもは、自覚症状を言ってくれることが少ないし、外見から判断することが難しい場合があります。ひどくなったら薬で様子を見るよりも、まずそのひどい症状を小児科で診てもらった方がいいですね。

 処方してもらった薬を飲みきった方がいいのか、次はいつ受診したらいいのか、がよくわからなかったら、遠慮なく外来で聞いてください。聞き忘れてしまったら、処方箋を出す際に薬剤師さんに聞く方法もあります。

 また、子どもに薬を飲ませるのに一苦労ということもありますね。私の長女は小さい時には本当に薬が苦手で、特に粉薬は大量の水とともに泣きながらがんばって飲んでいました。一方、次女は甘い子ども用の薬が好きで「おかわり!」と要求したものでした(もちろん、おかわりはいけません)。

 子どもの処方は体重に合わせて調節する必要があり、味の問題もあるので、薬の種類や形はいろいろあります。シロップ、散・細粒・ドライシロップといった粉のほか、OD(口腔内崩壊)・D(崩壊)・RPD(速崩壊)・RM(速溶)錠と呼ばれる唾液で溶けるので水が必要ないか、少量の水で飲める錠剤、普通の錠剤などがあります。

 小さい子はシロップがいいという場合もありますし、かえって量が少なくできる粉薬がいい、という子もいます。粉の薬を1-2滴の水で指の先でこね、お子さんの口を開け、頬や上あごの内側に塗ります。そして母乳や水を飲ませます。シロップは哺乳瓶の先に1回分を入れて飲ませたり、スプーンやスポイトを使ったりする方法もあります。

 

 早く溶ける錠剤はラムネのように噛んで飲むのもいいし、私の長女のように噛まずに水といっしょに飲んでも構いません。薬を嫌がる子は、味がダメな場合と舌触りなどが嫌という場合があると思います。なにかに混ぜて飲ませる方法もありますね。ゼリー状のオブラート、ヨーグルト、アイスクリームなどに混ぜることが多いようです。苦味のある薬はチョコレートアイスクリームが一番、味がまぎれます。それでもどうしても飲めない場合は、貼る薬、座薬などがありますから医師や薬剤師に聞いてみてください。

 

 保育園・幼稚園に行っているときに「園で飲ませてくれないので、薬を1日2回にしてください」と言われることがよくあります。薬は体重あたり1日に何mgと計算した後に、1-3回に分けるよう用法が決まっています。多くの対症療法の薬は1日2-3回に分けて処方するものなので、そういった希望があれば言ってください。でも、抗菌薬などによっては血中濃度の維持に3回飲む必要があるものがあります。1日3回飲む薬は4-6時間空開ければいいので、朝、園から帰ってきてすぐ、寝る前、の3回飲みましょう。

 

 最後に、「薬は毒と同じだからなるべく飲まない方がいい」というのは本当でしょうか。なんでも量や程度が大事です。塩でさえ、摂りすぎたら死亡することがあります。以前に痛ましい事件 がありましたね。

 http://www.asahi.com/articles/ASK7N2689K7NUBQU003.html

 http://www.asahi.com/articles/ASK8171VGK81UBQU01T.html

 

 何であっても、使い方によっては毒になります。ですが、保険で処方される薬、販売されている薬は開発されてから市場に出るまでに、安全性と効果を確認する工程を経ています。決められた容量と用法を守っていれば、もちろん毒ではありません。それに、薬は飲んでから代謝されて効き目がなくなったり、代謝を受けないものでも尿や便から出て行ってしまったりします。効果がなくなるから、1日に数回、数日間服用する必要があるわけですね。むやみに溜まったりはしません。必要があれば、我慢せずに利用しましょう。

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。