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 将来の妊娠に備えたい――。若いがん患者の思いにこたえ、卵子や精子を凍結保存し、がんの治療後に体内に戻す温存治療が少しずつ広まっている。この夏には学会が診療指針をつくった。最善の選択には、がん治療医と生殖医療の専門医の連携や、患者の心理面のサポートが不可欠だ。

女性は3つの選択肢 専門医の連携が大切

 神奈川県内の女性(40)は2015年、ステージ1の乳がんと診断された。紹介された聖マリアンナ医科大病院(川崎市)で6月、乳房の一部を切除する手術を受けた。事前に同院のがん・生殖医療外来を受診。がんの治療後に子どもを持つ可能性を相談した。「がんになったけど、妊娠できたらいいな」と計3回、卵子を採取。夫の精子と体外受精させ、凍結保存した。

 抗がん剤などの化学療法と放射線治療を受けて今年8月、受精卵を子宮に移植。翌月に妊娠がわかった。女性は「妊娠をあきらめなくて良かった。専門外来がある病院を受診できて幸運だった」と話す。

 16年にこの外来を受診した悪性リンパ腫の女性(25)は、卵子などの凍結保存をせずに化学療法を始めた。迷いはあったが、自身が受ける化学療法が妊娠に影響を与える可能性が低いと聞いて決めた。「専門の先生の説明と検査を受け、安心してがんの治療を始められた」と言う。

 妊娠する能力を温存する方法は女性の場合、受精卵、卵子、卵巣組織の凍結の三つがある=図。受精卵や卵子の凍結は、月経周期の影響を受けるため1、2カ月かかる。卵巣の凍結は、周期に関係がなく時期を選ばない。月経が始まる前の子どもも受けられる。

 

写真・図版

 日本癌(がん)治療学会は7月、医療職向けに妊娠する能力の温存について初の診療指針を発表。「がん治療が最優先」としたうえで、原則40歳未満でがん治療を始めた人を対象とする。子宮・卵巣や子ども、血液など八つの領域別に対象となる患者や治療法などをまとめた。すぐにがんの治療が必要なために温存を希望しても受けられない人もいることや、温存しても妊娠が保証されるわけではないことも盛り込まれている。

 中には、「子どもがいる」「子どもを持ちたいと思わない」などの理由から温存を望まない人もいる。

 指針を作った聖マリアンナ医科大病院の鈴木直教授(産婦人科)は、「がんの治療医が、がん治療によって不妊となる可能性があることを患者に伝え、患者が希望すれば生殖医療の専門医と連携することが重要だ。患者が納得してがん治療を受けることにつながる」と話す。

 

男性は化学療法前が推奨

 情報不足のため温存治療を選べなかったり、経済的な理由からあきらめたりするケースもある。

 指針は、男性のがん患者には化学療法前に、精子の凍結保存を推奨する。凍結の前に抗がん剤などの化学療法を受けると、十分な質や量の精子を保存できない可能性があるからだ。

 凍結保存するための精子の採取は、専門の医療機関を受診すれば数時間でできる。横浜市大市民総合医療センター生殖医療センターの湯村寧(やすし)部長(泌尿器科)は「短時間でできることをがん治療医や患者に知ってほしい」と話す。

 湯村さんが全国の精子凍結を実…

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