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 検索サイトGoogleが12月上旬、医療や健康に関して、日本語検索をする際に、「より信頼性が高く有益な情報が上位に表示されやすくなるようにページの評価方法をアップデートした」と公表しました。

 品質の低いサイトやまとめサイトなどは軒並み出て来にくくなったと聞き、私も試してみました。「母乳 食べ物」「赤ちゃん 寝ない」「乳腺炎」などで検索してみましたが、まだまだおかしなサイトが1ページ目に出て来ます。引き続き、気をつけましょう。Googleのお知らせでは、信頼性が高い情報として、医療従事者、専門家、医療機関からの提供情報を例示していますが、誰が書いているのか、有資格者なのか、その分野でスタンダードとされていることなのか、などには注意が必要です。医療資格を持った人でも、とてもおかしなことを言ったり商品やサービスを売る目的だったりするホームページやブログもあるのです。官公庁や学会、医師会などのサイトからサイト内検索したほうが確実です。

 「泣き止まない」をGoogle検索しても同様で、正しい情報と一部が正しい情報、おかしな情報が出て来ます。検索窓に入力すると、予測で「新生児」「1歳」「2歳」「病気」などの言葉も一緒に出てくることから、その組み合わせで調べる人が多いことがわかります。赤ちゃんや子どもが泣いて困ることは昔からあり、親たちは困っていました。そしてその対処法に絶対の正解は、いまだにありません。Googleは上記の「お知らせ」では、さらに医療関係者に向けて、医療情報を提供する時には一般の人にわかりやすいように考慮するよう呼びかけましたが、そもそも子どもが泣き止まないことに対する医学的に正しい対処法が存在しなければ、医療者は情報提供ができないし、一般の親御さんが検索することもできないでしょう。

 そういうわけで、病気とは別の理由で「赤ちゃんが泣き止まない」場合には、絶対成功する解決策がないことを知ることも大事です。お腹が空いているはずがなく、オムツもきれいなのに、抱っこしても毛布でくるんでも、外に出てもおしゃぶりをしても、何かを聞かせても泣き止まない、と言うことは赤ちゃんにはよくあります。それは、昔の日本でも、遠い外国でも頻繁に見られました。

 イギリスの小児科医R.S.イリングワース著「ノーマルチャイルド」やアメリカの小児科医ベンジャミン・スポックによる有名な「スポック博士の育児書」は、「コリック」や「定期泣き」と呼ばれるような赤ちゃんが突然泣き出す現象について説明しています。夕方から夜にかけて多く、生後2-4週間頃から始まり、生後3ヶ月になる頃には治るとあります。赤ちゃんのお腹のガスがたまることで痛がるのではないかと言われていますが、レントゲン写真で腸管が張っていない場合もあり、原因は不明です。産婦人科の病院にいる時にはとてもおとなしかったのに、家に帰って2-3日すると急によく泣くようになり、3時間も4時間も泣き続ける…。「うちの子とおんなじ!」と思う方は多いでしょう。最近では、乳酸菌が夜泣きに効果があるという研究もあり、赤ちゃん用の乳酸菌シロップを実際に購入することもできますが、サプリメントの扱いで、処方薬ではないということは知っておいてください。あるいは腸の問題ではなく神経発達が未熟なために、過敏になっていると考える人もいるようです。

 日本では昭和20年代くらいまで、赤ちゃんが激しく泣いたり、1歳を過ぎた幼児でもかんしゃくを起こしたりした場合に、「疳(かん)の強い子」、「疳のムシを起こした」などと言われました。「ムシ封じ」、「ムシ切り」などと呼ばれる祈祷やおまじないもしたそうです。また、300年以上前から「救命丸」や「奇応丸」という名前の薬があり、いろいろな製薬会社で作られてきました。やはり神経質な兆候を抑える目的だったようです(馬場一雄著『子育ての医学』)。現在でも、各社の救命丸、奇応丸は、市販薬のなかでも比較的リスクの低い第2あるいは第3類医薬品として、薬局などで販売されています。昔の日本は大家族で、兄弟姉妹も多かったことから、赤ちゃんが泣いたら対処する家族がお母さんだけでなく複数いたでしょう。それでも苦労していたんでしょうね。

  泣かせっぱなしにしておくと、赤ちゃんが感情表現のできない「サイレントベビー」になり、将来コミュニケーション障害を起こして引きこもりになる、と書いてあるママサイトをいくつか見ました。「サイレントベビー」は医学用語ではなく、和製英語で、その考え方にも根拠はありません。

写真・図版

 

 子どもが泣き止まないと、親は無力感を感じて不安になったり、イライラして腹立たしくなったりします。どうしたら泣き止むのか、なにか病気があるのではないかと思ってしまうものです。ただ心配なだけでも小児科を受診してももちろん、かまいませんが、受診するかどうか迷う時には「泣く」以外に赤ちゃんがつらい症状がある時がいいでしょう。泣くだけでなく「何度も吐く」、「下痢をする」、「飲みたがらない」などです。

 お子さんに手こずるさなかにある時には、つらいことが永遠に続くような気がすることもあります。個人差はあるものの生後6週間が、泣く合計時間のピークであることが多いようです。生後6週間のときに1日のうち4.4時間泣いている子が、生後1年には1.5時間になっているという調査もあります。「泣くのは赤ちゃんの仕事」と思って、くよくよ一人で悩まなくてもいいのです。そのうち必ず夜泣きしなくなります。

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。