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 新年に「今年こそ、ダイエット!」と誓いを立てるのは、洋の東西を問わない習慣みたいです。英国栄養士会(BDA)は先月、「2018年に避けるべき最悪なセレブダイエット・トップ5」を発表しました(※1:ニュースリリース原文、※2:日本語抄訳)。毎年発表している恒例行事のようで、今年は、ロウ・ヴィーガンダイエット(生菜食:Raw Vegan Diet)、アルカリダイエット、ケイティ・プライスの栄養補助食品、ピッピダイエット、ケトジェニックダイエット、というラインアップです。

 ロウ・ヴィーガンは、バリエーションが様々あるものの、基本は肉・魚介類のほか卵、乳製品も含め動物性の食品を口にせず、厳密な菜食をしかも生で食べるというもの。関係するセレブとして、俳優のグウィネス・パルトロウや歌手のスティングの名前があがっています。BDAは、ビタミンB12やDなどの必要なサプリメントを補いながら慎重に計画されたヴィーガンダイエットならば、健康的になり得るとしながらも、だからといってそれが減量につながるわけではないとコメント。「ヴィーガンケーキであってもケーキはケーキ。ヴィーガン食品はしばしば、非ヴィーガン食品と同じカロリーを含んでいる」。また、生で食べることについては、人類は生と調理した食品の双方から栄養を得ており、生の方が本質的に優れていると信じる理由はないとしています。

 アルカリダイエットは、アルカリ性の食品を多く食べ、酸性の食品を減らすというもの。これによって血液のpHバランスを変えて健康リスクを下げるのだそう。しかしBDAはこのダイエットについて「人間の生理学に関する基本的な誤解に基づく」と一刀両断。食品のpHは血液のpHには影響しない。血液のpHは7.35から7.45の間に収まるよう調整されており、万一それを外れるなら、病気で治療が必要な状態。食事は小便のpHを変えるけれど、それは血液との関係はありません。

 ケイティ・プライスは英国で有名なモデル出身のテレビパーソナリティーで、ここでは彼女の名前を冠した栄養補助食品を取り上げています。食事の代わりに1回たったの185キロカロリーで低脂肪、必要な栄養素を含む、とか。あ~、これに似たのは日本でも……。

 ピッピダイエットも日本ではなじみがありませんが、ピッピはイタリアの小さな村の名前で、中身は、低炭水化物高脂質のダイエット。伝統的な地中海食よりも多くの脂質を取るよう薦めているそうです。BDAは、パスタ、米、パンを除外しココナツを含めるなどこの食事法はイタリアの食事とは異なっている、としています。

 元バスケットボール選手のコービー・ブライアント、ミュージシャンのミック・ジャガーやリアーナ、俳優のマシュー・マコノヒーなど大変な数のセレブが関わっているという、ケトジェニックダイエットは、様々なバリエーションはあるものの、つまりは低炭水化物ダイエットのこと。炭水化物の量を1日20~50g、あるいは総カロリーの5%に抑える非常に厳格なタイプで、対して脂肪は多く、適度のたんぱく質を摂取します。穀物、乳製品、豆、ほとんどのフルーツとでんぷん質の野菜を除外。炭水化物は主に非でんぷん質の野菜、ナッツ、種子からとります。

 減量法としては何の魔法でもなく、効果が出るのは、総カロリーを減らし、食べ過ぎがちな人から食べ物を引き離すことによるものだ、とBDA。頭がぼーっとする、空腹感が増加、睡眠問題、吐き気といった副作用が起こりやすく、短期的には減量に効果的であっても、長期的には維持しにくい、としています。「一つの食品群を極端に制限するのはよい考えではなく、ビタミン、ミネラル、食物繊維といった点から見てもバランスのよい食事になりづらい」と。

 日本でも、いくつものダイエット法が流行し消えていきます。女性健康科学を専門に若い女性への啓発活動もしている本田由佳・慶應義塾大学SFC研究所健康情報プラットフォーム・ラボ上席所員は「自分の体についての知識を持たず、なるべく食事を控えて、メディアで見聞きした『体にいい食べ物』をみつくろい、少量口にする。その結果、エネルギー不足に陥っている。そんな若い女性に多く出会います」と話します。

 国民健康栄養調査のデータでみると、20代女性の1日摂取エネルギーは2016年で1631kcal。終戦直後で食糧不足だった1946年を下回っているのです。やせ(BMIが18.5未満)の割合は20.7%で、20代女性の5人に1人がやせということになります。「やせて栄養状態の悪い女性からは体重の軽い赤ちゃんが生まれやすく、低体重児は将来、生活習慣病になるリスクが高いことが指摘されています」と本田さん。

 ちなみに、20代女性で肥満(BMIが25以上)の割合はわずか9.5%、ほとんどの人は減量を必要としない体形です。

 「日本では、ホームドクター制度が普及しておらず、自分の健康について専門家からアドバイスを得る機会が少ない。女性ならぜひ、産婦人科のかかりつけ医をもって、ダイエットをしようと思うならまず相談してほしい」と本田さんは言います。「はやりのダイエット法に飛びつく前に、自分の体の状態を知らないと」

 最近は体重計が多機能化しているので、体脂肪量や筋肉量を計り、自分である程度チェックもできます。本田さんによるチャートをご紹介しましょう。

写真・図版

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 自分の体をチェックして、なりたい体の目標を立てたら、バランスのよい食事、運動、睡眠を整える。「体にいい食べ物」を取り入れるとしたら、こうした基礎が整った次の段階、だそう。

 これは若い女性ばかりではなく、40~50代の親世代にも言えることだと思います。男性は肥満が多いですし、女性は更年期、閉経を経て体が大きく変化する頃。自分の体を知らずに体重だけを気にして無理なダイエットをすれば、健康へ悪影響が出かねません。

 そういえば、このコラムを見てくれているデスクは「なんちゃって糖質制限をゆるく実施中」だったのですが、先日、健康管理室から「血糖値が高すぎる」と呼び出しがあったそうです。体重は変わらず、むしろ減らし気味だったのに、体の中身が筋肉から脂肪へ変わり(要は体脂肪増)、その結果の中性脂肪増、血糖値アップ、となったらしく、「体重だけをみて、まあ大丈夫だろうと思っていたら、『加齢による筋肉減少』の現実を思い知らされました」と嘆いていました。

 英国栄養士会のリリースの後半には、こんなメッセージが出てきます。「話がうますぎるものは、やっぱりその手の話に過ぎません。いつも根拠を確認し、販売やプロモーションとは関係ないとはっきりしている人からのアドバイスを得てください」

 

関連リンク

※1 英国栄養士会(BDA)のニュースリリース原文

https://www.bda.uk.com/news/view?id=195別ウインドウで開きます

※2 ニュースリリース日本語抄訳

http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=62567&-lay=lay&-Find別ウインドウで開きます

 

<アピタル:食のおしゃべり・トピック>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/eat/

 (大村美香)

大村美香

大村美香(おおむら・みか) 朝日新聞記者

1991年4月朝日新聞社に入り、盛岡、千葉総局を経て96年4月に東京本社学芸部(家庭面担当、現在の生活面にあたる)。組織変更で所属部の名称がその後何回か変わるが、主に食の分野を取材。10年4月から16年4月まで編集委員(食・農担当)。共著に「あした何を食べますか?」(03年・朝日新聞社刊)