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 病気の分類って、考えはじめるといろいろ腑に落ちない点があります。内科学の教科書ではさまざまな病気が章ごとに言及されています。各章のタイトルはだいたいこんな感じです。

 1.消化管疾患 2.肝臓・胆のう・膵臓疾患 3.心臓・脈管疾患 4.呼吸器疾患 5.腎臓・尿路系疾患 5.自己免疫・アレルギー疾患 6.内分泌・代謝疾患 7.感染症 etc…

 細菌性肺炎について調べたいときにはどの章を読めばいいでしょうか。細菌性肺炎は細菌が肺に感染して起きる病気ですから、当然、感染症の章に書いてあると思いきや、必ずしもそうではないのです。細菌性肺炎は呼吸器の病気でもありますから、呼吸器の章に書いてある教科書もあります。というかそういう教科書のほうが多いです。

 これといった決まりはありませんが、感染症の章は臓器別ではなく病原体別に記載されています。ブドウ球菌が起こす病気はこれこれ、クラミジアが起こす病気はこれこれ、インフルエンザウイルスが起こす病気はこれこれ、寄生虫が起こす病気はこれこれ、といった具合です。

 気管支喘息は呼吸器疾患であるのと同時にアレルギー性疾患でもあります。気管支喘息は呼吸器の章にあるのが普通ですが、アレルギー性疾患の章で言及されることもあります。感染性心内膜炎についてはどうでしょう。心臓の弁を中心に心臓の内膜に細菌が感染して起こる病気です。たいていの教科書では心臓・脈管疾患の章に感染性心内膜炎が記載されていますが、感染症の章に記載されている場合もあります。

 病気を一元的に分類するのは無理なんです。さまざまな分類の方法があって、それぞれ目的に応じて使い分けています。臓器別(消化管疾患、心臓・脈管疾患、呼吸器疾患…)に分類するときもあれば、原因別(自己免疫・アレルギー疾患、感染症…)に分類するときもあります。

 他にも症状別という分類の方法もあります。めまいを呈する疾患はこれこれ、腹痛を来す疾患はこれこれ、という分類です。病名は前もってはわからず患者さんの症状から推測するので、臨床の現場に即した分類方法と言えます。血液疾患と悪性腫瘍が同じ章で扱われることもあります。抗がん剤を使うという治療法が共通しているからでしょう。救急医学だけ別章で扱っている教科書もよくあります。心筋梗塞が原因だろうと外傷が原因だろうと、心停止した患者さんの初期治療は同じです。

 そうしたことを踏まえて、教科書の目次をながめると実に興味深いです。編者の医学に対するポリシーが垣間見えるような気がします。

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アピタル・酒井健司

アピタル・酒井健司(さかい・けんじ) 内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。