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 寒い日が続きますね。冬は子どもが何かと体調を崩しやすい季節です。風邪、インフル、胃腸炎など、様々な原因がありますが、家庭で気を付けるべき症状にはどんなことがあるのでしょうか。

 冬はいわゆる「風邪」が流行りますが、それは原因になるウイルスが乾燥した寒い気候に適応したものが多いからです。子どもはまだ数年しか冬を経験していないので、風邪のウイルスに対して抗体を持っていないことが多く、風邪をひいている人が近くにいると感染しやすくなってしまうのです。

 風邪とともに、インフルエンザも現在、流行っていますね。突然の高熱で発症し、関節痛や筋肉痛、頭痛を伴うことが多く、子どもは不機嫌になったり食欲が落ちたりします。咳や鼻水がでることもあります。風邪と違って、全身に急激に症状が現れるのが風邪との大きな違いです。

 インフルエンザ以外にも冬に活発になるウイルスの一つに、RSウイルスがあります。大人や健康な子どもなら軽い風邪のような症状で済むことが多いのですが、初めて感染する乳幼児は入院することもあります。1歳未満の子が発熱するとともに咳と鼻水が出て、しだいに「ゼイゼイ」するようになったらRSウイルスによる細気管支炎かもしれません。

 こういった気道に炎症を起こす感染症は、咳やくしゃみによる飛沫を吸い込むことや、ウイルスが付着したものを触ってその手などが粘膜に接触することによってうつります。うがいをしたり、マスクをつけたり、よく手洗いをしたりすることで感染を予防します。きょうだいにうつさないためには、それに加えてタオルや食器を共用しないようにしましょう。

 

 他にもこの時期に忘れていけないのが、例年12月から1月に大流行するノロウイルス感染症と、それが下火になるころにピークを迎えるロタウイルス感染症があります。どちらも感染力が強く、ひどい下痢や嘔吐を伴い、脱水を起こすことがあります。詳しくは以前のコラム(ノロ・ロタウイルス感染症って? https://www.asahi.com/articles/SDI201611253274.html )を参考にしてください。

 家庭で予防するには、石鹸(けん)を使って流水で手を洗う、感染者の便や嘔吐したものが付着したものは捨てる(トイレに流す際には蓋を閉めてから)、次亜塩素酸ナトリウム(市販の塩素系漂白剤)で拭く、食品をよく加熱調理してから食べるといったことが対策としてあります。

 

 冬はまた、子どもがけいれんを起こしやすい季節でもあり、原因もいろいろあります。「熱性けいれん」は、インフルエンザなどの急激に体温が上がる際に、手足が突っ張ったり、体が硬直したりするひきつけを起こします。

 「熱性けいれん診療ガイドライン2015」( http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/febrile_seizures/febrile_seizures.pdf別ウインドウで開きます) によると、熱性けいれんは通常は「38℃以上の発熱に伴う発作性疾患で、髄膜炎などの中枢神経感染症、代謝異常、その他の明らかな発作の原因がみられないもので、てんかんの既往のあるものは除外される」とあります。生後6~60か月までの乳幼児期に起こります。60か月は5歳ですね。そのくらいの年齢になると、熱が出てもけいれんしにくくなります。以前は熱性けいれんを起こしたら、「ジアゼパム」という抗けいれん薬の坐薬を使い、以降も熱が出るたびに使うように処方していました。現在のガイドラインでは、熱性けいれんは繰り返さない子が多いことや、ジアゼパム坐薬によるふらつきで転倒したり、眠気をともなうことによって髄膜炎や脳症の症状がわからなくなったりする危険性があることから、すべての患者さんには使いません。ただ、子どものけいれんに初めて遭遇した保護者は、とても驚き心配するものです。生まれて初めてのけいれんや、数回目でも10分近くけいれんが続く場合、発熱がないのにけいれんをしている場合は、直ちに医療機関に行きましょう。救急車を要請してもいいです。

 また、体の水分の割合が高い子どもは下痢や嘔吐を繰り返し、脱水になることでけいれんを起こしやすくなりますが、脱水になるほどのひどい胃腸炎でなくてもひきつけを起こす胃腸炎関連けいれんもあります。主に生後6ヶ月から3歳までで、吐いたり下痢したりし始めてから3日以内に起きます。1回の胃腸炎でしばしば繰り返してけいれんするので、抗けいれん薬を使うことがありますが、胃腸炎を起こすたびに薬でけいれんを予防することはありません。

 他にけいれんを起こすものに急性脳炎・脳症、髄膜炎があります。どれも意識障害が長引き、けいれんを繰り返すような場合には、救急車を呼んででも直ちに医療機関に連れて行きましょう。脳症を起こすウイルスには、インフルエンザ、ロタ、水痘、麻疹、突発性発疹を起こすHHV6(ヒトヘルペスウイルス6)などがあります。

 髄膜炎にはウイルス性と細菌性があります。比較的軽症のウイルス性髄膜炎はエコーウイルスやコクサッキーウイルスによるものが多く、無菌性髄膜炎とも呼ばれます。手足口病の原因になるエンテロウイルス、おたふく風邪を起こすムンプスウイルスも有名です。細菌性髄膜炎は、以前は化膿性髄膜炎とも呼ばれた重い病気で、年齢によって原因になる細菌が違います。新生児から生後3ヶ月まではB群レンサ球菌(GBS)、大腸菌など。生後3ヶ月から幼児はインフルエンザ菌(ほとんどがHib)や肺炎球菌、年長児以降はHibと肺炎球菌に加えて髄膜炎菌です。

 脳炎・脳症や細菌性髄膜炎はとても重く命に関わったり、後遺症を残したりする病気です。厚生労働省の研究班のデータでは、Hibワクチンの公費助成や定期接種が始まった2011年以降、Hibによって髄膜炎になる子どもの割合を調べた10道府県では、その割合は大きく減り、14年以降はほとんど報告もないくらいです。

 

写真・図版

 手洗いやうがいはもちろんですが、ワクチンで防げるものもあるので、受けられる予防接種はすべて受けましょう。

 (アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。