[PR]

◇生きるのがつらい女性のADHD

 ADHDが疑われる「生きるのがつらい女性」、リョウさん(30代前半、独身一人暮らし)のシリーズを続けていきます。このシリーズでは、大人の女性のADHDについて、その特徴や日々の困りごとに対する対処法をご紹介しています。(リョウさんは架空の人物です)

 今回はお仕事の場面に介入します。

 リョウさんは、出勤や職場から取引先に向かうときなど、決められた時間までに到着できず、遅刻してしまうことがよくあります。約束の時間を勘違いしていたり、忘れてしまっていたりするだけでなく、直前までバタバタと他の仕事に追われるなどして、慌てて職場を飛び出して、駅に向かいながら電車の乗り換えを調べると、予想以上に時間がかかることがわかって、大遅刻ということもありました。

 リョウさんは、こうしてバタバタと出かけるので、家や職場に忘れ物をしてしまうことがしょっちゅうありました。取引先からは、度重なる遅刻やすっぽかし、忘れ物などを理由に「担当を変えてくれ」といわれたこともあります。

 今回はこうした問題について取り組んでいきます。

 

 以前に、仕事でのつまずきを減らすポイントとして、【計画立て】についてご紹介したことを覚えていらっしゃいますか?

 仕事などの計画を立てるときは、「できるだけ細かいステップに分解して、最初の一歩のハードルを下げる」「所要時間を把握して、時間を見積もる」ことがポイントでした。

  ▼気が乗らない仕事にやる気をだす方法

  https://www.asahi.com/articles/SDI201710115160.html

  ▼仕事を途中で投げ出さないために

  https://www.asahi.com/articles/SDI201710266146.html

 

 今回も、出かける直前のバタバタを、【計画立て】の手法を使って改善していきます。

 まずはリョウさんが、職場から取引先に向かう場面をみていきます。

 

ステップ1: ゴールを具体的にイメージする

 この場面でいう「ゴール」は、「取引先に決められた時間に到着すること」ですね。

 その時、自分がどのような状態にあることが望ましいのかを、もう少し詳しくみていきます。ゴールのイメージには、十分すぎるほど想像力を働かせることが必要です。持ち物やその時間に至るまでの道筋がはっきりします。

 

【ゴール】13時までに取引先に到着している。

・持参する物がそろっている。

  →持ち物は、資料、名刺、前回取引先から頼まれていた別の資料。

・昼食を、事前に済ませておく。

  →取引先近くのレストランの割引券をもってるんだった。忘れず持って行こう。

・化粧直しも、済ませておく。

  →あ、そのためには化粧ポーチも持参した方がいいか。

・次回のアポをとるために自分の社内の来月分のスケジュールを確認してある。

  →あ、そのためには早めに上司に来月の予定について確認をとっておかねば。

  →あ、そういえば、上司はこの水曜日から週末まで出張でいないんだった。その前に確認するとなると、火曜日か。あの会議の後に相談しよう。

 

 いかがでしたか? 詳細に想像していくと、カウントし損なっていた持ち物や準備するべきことが見えてきましたね。

 このように頭の中だけで考えるのが苦手な人には、簡単なイラストを描いて想像するのもおすすめです。

 

写真・図版

 描いてみるとまた気づきます。

 この日に着ていく服とか、もし雨が降ったときの準備物とか。

 さて、やるべきことが見えてきましたね。そこで次のステップです。

 

ステップ2: ゴールまでにやるべき課題をリストアップする

 前のステップでやるべきことは書き出せているので、それをもっと細かいto-doリストに落とし込んでいきます。

 このとき大事なのは、「隠れたステップ」を見逃さないことです。たとえば、

□ 昼食を、事前に済ませておく

 これについては、もっと分解してリストアップする必要がありそうですね。

 

□ ランチに行きたいお店がその日に定休日でないかネットで調べる。

□ ランチに1時間みておいて、路線検索で取引先の最寄り駅までの経路を調べ、会社を出発する時間を確認する。

□ 会社を出る時間をスケジュール帳に書き込む。

 このように、漏らさないようになるべく細かいステップで書き出します。

 

ステップ3: それぞれの課題にかかる所要時間を見積もる

 to-doリストができたら、文末に( )付きでおよその所要時間を書き入れます。

□ ランチに行きたいお店がその日定休日でないかどうかネットで調べる。(3分)

□ ランチに1時間みておいて、路線検索で取引先の最寄り駅までの経路を調べ、会社を出発する時間を確認する。(1分)

□ 会社を出る時間をスケジュール帳に書き込む。(1分)

 どれもぱっとできる難易度の低い課題なので、書き出すまでもなかったかもしれませんが、この手順は、複雑で長期間にわたるプロジェクトなどのときに威力を発揮します。

 

ステップ4: それぞれの課題を「いつ」実行するか決める

 ステップ3で書き出した項目を、何月何日の何時にするかを決めて、スケジュール帳に書き入れます。ステップ1で書き出した項目をすべてスケジュール帳に入れてみると、時間の経過の中で、何をどの順番にするとよいかがよくみえてきますね。

 

写真・図版

 これらの課題を実行することを忘れてしまいそうな場合には、

  ・今すぐやってしまう

  ・アラームを設定する

 のいずれかで対処します。

 これで、バタバタと大慌てで出かけることがなくなりそうです。

 次回は、もう少し複雑なお仕事の場面での計画立てについてご紹介します。

 

<アピタル:上手に悩むとラクになる・生きるのがつらい女性のADHD>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/nayamu/(アピタル・中島美鈴)

アピタル・中島美鈴

アピタル・中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。