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 内科病棟で働く看護師のヨウコさんとメグミさんがアンガーマネジメントを学んでいます。

 前回は、同じ場面に対して怒る人もいれば怒らない人もいる、という話をしました。患者さんと話し込んでなかなかナースステーションに戻ってこない後輩をみて、「他のスタッフに迷惑がかかる」と怒るヨウコさんに対して、「がんばっている後輩を見守りたい」と穏やかな様子のメグミさん。それぞれに、大切にしたいことが異なっていました。

 さて今回は、再びヨウコさんが怒っていますが、メグミさんも怒っています。同じ場面に対して同じように怒っているように見えても、その背後にある感情は少し異なるようです。

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ヨウコさん: この会議30分で終わる予定だったよね。忙しい中、スタッフを全員集めているのだから、時間通りに進行してほしい。

メグミさん: 本当よね。会議が長引くとイライラしてしまう。

ヨウコさん: みんなそう思っているわよ。そもそも師長の話が長すぎるのよね。このあと仕事が残っているし、疲れているのだから勘弁してほしい。

メグミさん: 師長の話が長いのはいつもの事という気もするけど、子どものことが気になってしまって。

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 病院では、患者さんへの直接的なケアのほかに、打ち合わせや会議などの業務もあります。病棟でのカンファレンスや定例の会議などにイライラすることも多いのではないでしょうか。

 怒るか怒らないかは、その人の価値観によって決まります。今回の場面には、どのような価値観がはたらいているのかを考えてみましょう。

 「〇〇すべき」と表現してみると自分が何を期待しているのか、その価値観がわかりやすくなります。

例えば、

 「会議は予定通りに終了するべき」

 「管理者はタイムマネジメントすべき」

 「報告事項は、簡潔にまとめるべき」

あるいは、

 「会議では、ダラダラと話すべきではない」

などです。

 会議の予定終了時刻を過ぎても終わらないと、このような価値観が刺激されるのかもしれません。

 

 今回はさらに、この怒りを掘り下げていきます。

 ヨウコさんは、単に師長の話が長いというだけでなく、仕事を残していることが気になり、身体的な疲れもあって怒りが増していたようです。

 また、メグミさんがイライラした背景には「子どものことが気になる」という感情がありました。イライラの背景に「帰る時間が遅くなる」「夕食の支度が間に合わない」という焦り、子どもへの心配、見通しが立たない不安などがありました。これは、会議が長引いたことや師長の話が長いこととは少し意味合いが違います。

 怒りは二次感情といわれ、一次感情となる別の感情が隠れていることがあります。メグミさんの場合は、「焦り」「心配」「不安」などです。怒っていると目の前の出来事や相手の問題のように考えがちですが、一次感情に気づくことができれば、怒りの引き金が自分の要因であることがわかるでしょう。

 要因が自分にあるならば、対策を考えることもできます。ヨウコさんは、「疲れ」に気づけば「急がない書類整理は明日に回して、家でゆっくりお風呂に入ろう」と、会議のあとのプランを変える方法もあります。メグミさんも「お惣菜を買って帰ろう」などと切り替えられると少し気持ちも楽になるでしょう。

 

 日常の業務の中で出会う「怒り」の背後にも、別の感情が見え隠れすることがあります。

 「書類が出しっぱなし」と怒る裏では、置き忘れて探しているのではないかと心配しているのかもしれません。

 ナースコールを何度も押して文句ばかり言っている患者さんは、実は寂しかったり、不安だったりして、看護師にそばにいてほしいのかもしれません。

 

 自分が怒ったとき、あるいは誰かの怒りに触れたとき、その怒りの背後に潜む別の感情に気づくと、怒りへの対応のヒントが見つかることもあります。

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 ささいなことが目に付いて、すぐにカッとなって同僚や上司や患者さんたちについ口を出してしまうヨウコさん。これに対して、ついつい相手に合わせてしまい、自分の気持ちを表に出せないメグミさん。2人が、怒りの感情とうまく付き合っていくためのヒントを、一緒に考えていきましょう。 (ヨウコさんとメグミさんは架空の人物です)

 

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◆編集部から

田辺有理子さんの本が出版されました

 タイトルは「イライラと賢くつきあい活気ある職場をつくる 介護リーダーのためのアンガーマネジメント活用法」(第一法規、2160円)です。(詳しくはアマゾン:https://goo.gl/sxK6md別ウインドウで開きます

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。