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 もう十回ぐらいは書いていますが、普通の風邪に抗生物質(抗菌薬)は効きません。「いいや、私の風邪には抗生物質が効いた」という体験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、おそらくそれは、たまたま風邪が治るタイミングで抗生物質を使ったか、もしくは、風邪ではなく抗生物質が効く別の病気であったと思われます。

 4月から、3歳未満の乳幼児の風邪や下痢に抗生物質を使わずに適切な説明をすることで診療報酬が発生することになるそうです。

 私は小児を診る機会は少ないので今回の診療報酬の改定はあまり関係はないのですが、成人の患者さんに対して「風邪には抗生物質は効きません。副作用もあるし、耐性菌を増やしてしまう」とご説明することはよくあります。その説明でご納得される患者さんもいらっしゃれば、それでも抗生物質を処方して欲しいという患者さんもいらっしゃいます。

 風邪に抗生物質は効かないことがニュースで取り上げられ周知されることで、不必要な抗生物質の使用が少しは減るでしょう。小児科の先生方も、今回の診療報酬改定が報道されることで、風邪の診療がやりやすくなるのではないでしょうか。

 風邪に抗生物質を処方するのは日本ぐらいだと以前は思っていましたが、必ずしもそうではないようです。Choosing Wisely(賢明な選択)という、不要な医療を避けるための活動が主に米国であるのですが、その中に抗生物質の適正使用の情報があります。わざわざ適正使用を呼び掛けるということは、適正使用されていないという現実があるわけです。

 風邪については「風邪、インフルエンザ、その他のほとんどの呼吸器感染症はウイルスによって起こります。抗生物質はウイルスを殺しません」との記載があります。その他にも、副鼻腔炎や中耳炎などで抗生物質が必要な状況が書かれています。

 こういう情報提供はいいですね。日本にもあればいいのに。というかありました。「抗菌薬が必要なときと、必要ではないとき」(https://choosingwisely.jp/resources/koukinyaku/別ウインドウで開きます

 内容は海外のChoosing Wiselyを日本語訳です。治療費について言及されているところなんか米国らしいです。

 抗菌薬以外にも必要性に乏しい医療は行われています。前回言及したインフルエンザの「治癒証明書」なんてまさにそれです。過不足なく必要十分な医療のみが行われることが理想です。正しい情報が広まり、医療において「賢明な選択」がなされることで、副作用の害や無駄な医療費が減ることを願っています。

《酒井健司さんの連載が本になりました》

これまでの連載から80回分を収録「医心電信―よりよい医師患者関係のために」(医学と看護社、2138円)。https://goo.gl/WkBx2i別ウインドウで開きます

<アピタル:内科医・酒井健司の医心電信・その他>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/sakai/(アピタル・酒井健司)

アピタル・酒井健司

アピタル・酒井健司(さかい・けんじ) 内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。

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