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 乳幼児健診をしていると、お母さんたちの「子どもが離乳食(ご飯)を食べてくれないんです」という悩みは多いです。

 厚生労働省の「平成27年度乳幼児栄養調査結果の概要」http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000134208.html別ウインドウで開きます でも、「離乳食についた困ったこと」というアンケートで、「食べる量が少ない」21.8%、「食べものの種類が偏っている」21.2%、「食べるのを嫌がる」15.9%、「母乳や人工乳をよく飲み、離乳食がなかなか進まない」12.6%となっています。

 

「ご飯しか食べないなら細かくしたおかずをご飯に混ぜてみては?」

「お腹が空いたらいつか食べるのでは?」

「手に食べ物を持たせて遊んでいる隙に口にスプーンで入れたら?」

「年齢の近い子が食べているのを見たら釣られて食べるかも」

 といったことを提案すると、それで食べるようになる子もいますが、これらを一通りすべて試してもなお、食べないことがあるのです。

 実際の外来でも、私が言うようなことは、みんなお母さんたちは工夫をしてもやはりダメだったから相談しているのです。周囲もまた、若いお母さんに対して、ああしてみたら、こうしてみたら、と「アドバイス」をします。中には良かれと思ってでしょうけれど、傷つくようなことを言われることさえあります。

写真・図版

 

 「食べない」あるいは「偏った食事しか摂らない」ことは、なにが問題でしょうか?それぞれの栄養素が極端に減ったり欠乏したりした場合、以下のような問題が起こる危険性があります。

 葉酸(貧血)、ナイアシンとリボフラビンとビタミンA(皮膚の異常)、チアミン(かっけ、かっけ心)、ビタミンB6(けいれん)、・ビタミンC(骨の異常)、ビタミンD(くる病やけいれん)、ビタミンE(神経症状)、ビタミンK(出血性疾患)、クロム(体重減少)、鉄(鉄欠乏性貧血)、亜鉛(成長障害、味覚障害、性腺成長障害、脱毛など)。

 また、子どもは大人と違って成長途中であるということが重要な点です。だから、ある程度バランス良く食べることは必要なんです。

 ただ、大事なことは食材の多様さではなく、バランスのとれた栄養素です。たまに相談されるのですが、「パンはぜんぜん食べません、うどんや白いご飯は食べるんですが」というような場合、パンを食べられるように努力する必要はありません。「ご飯も麺類もパンも食べません。ジャガイモやカボチャは食べます」というのも同様で、炭水化物を米から摂らなくてはいけないという理由はありません。

 WHO(世界保健機関)が出版しているガイド書「補完食(Complementary Feeding )」

http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/66389/2/WHO_NHD_00.1_jpn.pdf別ウインドウで開きます

をみると、世界各国で多彩な食品が主食になっていることが分かります。コメ、トウモロコシ、コムギ、タロイモ、サツマイモ、ジャガイモ、料理用バナナなどがあり、そうした主食をペースト状にしてあげるようすすめています。

 野菜も同じ栄養素を含むものが入っているなら別の野菜を無理して食べさせなくてもいいし、タンパク質はできれば植物性と動物性のものを食べてほしいですが、どちらかだけでも食べないよりはずっといいです。肉は形状がどうでも構いません。お子さんが、たとえ同じメニューしか食べなかったとしても、主食、野菜、タンパク質が含まれていればよしとしましょう。食事の時間が、食べさせようとする親と、抵抗する子どもの戦いの時間になっては、お互い不幸ですね。

 また、毎食どころか毎日バランス良く食べるというのができないときもあります。1歳半から2歳くらいまで、同じものしか食べないということはよくあります。1週間を通して主食、野菜、タンパク質が食べられていれば、それもまたよしとしましょう。

 「補完食」の37ページには、楽しく食べさせるコツ(例えば、「スプーンを鳥に見立てて、ヒナに食べさせるように飛んでくるふりをする」など)も載っていますから、ぜひ読んでみてください。

 

 「子どもが食べない」という悩みの中に、めずらしいことですが、乳幼児の摂食障害というものがあります。母乳や哺乳瓶からのミルクすら飲みたがらない場合もあるし、そういったものは飲むけれど、離乳食や食事を食べないという子もいます。嚥下(えんげ)、つまり飲み込みがしにくい体の疾患があったり、触覚や嗅覚の過敏性があったり、あるいはそういったものがないのに食べる意欲がなく、無理に食べさせると強硬に拒否するということもあります。医療者も乳幼児にそういった摂食障害があることを知らない人が多いのが現状です。

 摂食・嚥下に問題のある乳児や子どもの親の会である「つばめの会」http://tsubamenokai.org/別ウインドウで開きます というホームページがとても詳しいので、関心のある方はぜひ訪れてみてください。

 (アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。