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 皆さんは「診療報酬」という言葉を聞いたことはありますか?

 診療報酬は、診察や検査などの「医療行為」に対する「利用金額(費用)」のことを言い、医師や看護師などによる医療行為の合計と、使われた医薬品代を合わせた合計額になります。患者は、このうちの1~3割を病院の窓口で支払い、残りは保険者(患者さんが加入している国民健康保険・全国健康保険協会・健康保険組合など)から支払われています。

・両立支援に診療報酬がついた?

・医療機関からの配慮事項の提供がポイント

・大企業にはメリットあり

 

1.診療報酬って?

 これらの費用は、物価や今度の人口動態などを考慮しながら数年に一度改定され、診療報酬は2年に1度、介護報酬は3年に1度の改訂となります。

 平成30年度は、団塊の世代の人すべてが75歳以上の後期高齢者になる2025年問題を前に、医療での利用金額である「診療報酬」と、介護保険制度の介護サービスに支払われる「介護報酬」が同時改定される大切な年でした。

 

2.両立支援に診療報酬が?

 平成30年度改訂の大きな争点は、急性期病院の病棟看護師の配置基準でした。また、医療は在宅へと移っていますから、かかりつけ医の設置や在宅医療に対しても、どのような評価がされていくのかが注目されました。

 この中で新しい項目として加わったのが「Ⅱ-1-1 緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価」にある「がん患者の治療と仕事の両立に向けた支援の充実」です。

 では、なぜこのようなどのような仕組みが診療報酬で評価されることになったのでしょうか?

 

 企業が患者である従業員から聞きたいのは「配慮してほしいこと、その長さ、そして働くことへの思い」です。ところが、患者は治療のことでいっぱいの状態、患者力の低下も重なって双方の間にギャップが存在していることはお伝えしました(2016年8月19日のコラム:https://www.asahi.com/articles/SDI201608094208.html)。

 それならば、「企業が、直接病院へ電話をして従業員の治療計画を確認すればよいのではないか」と思われるかもしれませんが、これは、本人の同意がないままに行われた場合は個人情報保護法に触れる可能性があります。また、対応した医療者の人件費などは、全額、病院の持ち出しになってしまうことも課題でした。

 

 そこで、今回の診療報酬改定では、働いているがん患者さんの同意を前提として、こうした情報のやりとりに必要な書類をなるべく統一して効率化をしつつ、そのやり取りに対して生じた手間を診療報酬で評価していこうというものです。

 医師と職場などの産業医との間で勤務情報や治療計画などの情報共有をしたり、働き方に応じて治療計画を工夫していくことで「離職を防ごう」というのがこの診療報酬の目標です。

 

 全体の流れは図1に示します。患者さんの「働き続けたい」という気持ちをスタートに、まず、①患者が事業者へ申し出て自分の業務内容などを記載した「勤務情報提供書」を作成、主治医に提出します。②これを参考に、主治医は、症状や治療計画、就業の可否、就業上の配慮事項などを記載した「主治医の意見書」を作成、患者の同意を得た上で企業へ提出します。意見書の作成には、医師又は医師の指示を受けた看護師、社会福祉士が、病状や治療による状態変化などに応じた就労上の留意点について指導や治療計画の工夫を行うことも条件です。③これを受け取った事業者は両立支援プランを作成、患者さんが働き続けることを支援する、という流れです。この一連の流れに対して、相談窓口が常設されていることや、産業医が関与するなど、幾つかの条件があります。

 

▽参考ページ:厚生労働省 治療と職業生活の両立について

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000115267.html別ウインドウで開きます

 

3.大企業にはメリットあり

 診療報酬がついたことで、次のようなメリットが期待されます。

・医師や看護師、ソーシャルワーカーが両立支援に取り組む時間が診療報酬で確保できる

・患者は、自分の社会背景(勤務状況)に応じた治療計画、説明がもらえる。

・両立支援プランがあることで、企業、患者の双方が、復職までのイメージがし易くなる。また、職場からの支援も得やすくなる。

 

 一方の課題としては、

・産業医がいない中小企業への支援策を考える必要があること

・企業側の書類作成に要する作業に対しては助成金がないこと

・書き方研修が行われないと、支援の質に大きな差が生じる可能性があり、患者にとって不利益につながる可能性があること

が挙げられます。

 

 新しい動きですから、4月1日以降、現場では混乱も見られるでしょう。また、落胆するようなケースもでてくることでしょう。患者さんの「働きたい」という気持ちと、企業の「働いてほしい」という気持ちの、双方の合意も必要ですから、タイミングや「働く」意思決定支援も大切になります。

 

 色々な課題はあるかもしれませんが、大企業が変われば、中小企業も必ず変わってくるはずです。この仕組みが適切に運用され、支援を必要とする患者が必要な支援を得られることを期待しています。そして、がんでの取り組みをモデルに、様々な疾病を有した就労者へ広がっていくことを期待しています。

 

▽ガイドラインホームページ:http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000113625_1.pdf別ウインドウで開きます

 

<アピタル:がん、そして働く>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/cancer/(アピタル・桜井なおみ)

アピタル・桜井なおみ

アピタル・桜井なおみ(さくらい・なおみ) 一般社団法人CSRプロジェクト代表理事

東京生まれ。大学で都市計画を学んだ後、卒業後はコンサルティング会社にて、まちづくりや環境学習などに従事。2004年、30代で乳がん罹患後は、働き盛りで罹患した自らのがん経験や社会経験を活かし、小児がん経験者を含めた患者・家族の支援活動を開始、現在に至る。社会福祉士、技術士(建設部門)、産業カウンセラー。

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