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 テレビや雑誌では、「あの食べ物がいい」「この食べ物がいい」という特集がよくありますよね。よくネタが続くなぁ、と思いませんか? そんな特集では食品の「機能性」がよくうたわれています。「機能性」と聞いて、薬の効果・効能のように病気の治療に「効く・効かない」を想像した人がいるかもしれません。しかし、薬と食品では違いがあります。今回は、食品の機能性について整理していきましょう。

 

◯×クイズ:「すべての食品には機能性がある?」
(※答えは、本文中にあります)

 

▼食と健康に関する経験則や言い伝えは東洋・西洋でもあり、近年「食品の機能性」に注目が集まっている

▼食品には<三つの機能(働き)>があることを、世界に先駆けて日本が提唱した

▼三つの機能は、①栄養面での働き、②嗜好(しこう)面での働き、③生体調節面での働きに分類される

 

 「医食同源」という言葉を聞いたことはありますか?

 辞書をひもとくと「病気の治療も普段の食事も、ともに人間の生命を養い健康を維持するためのもので、その源は同じであるとする考え方。(大辞林第三版)」と説明されています。

 中国では古くから「薬食同源」という言葉が使われていて、体に良い食材を日常に食べて健康を保てば、薬などを必要としないという考え方があります。東洋に限らず西洋においても、医学の祖であるヒポクラテスが「Let food be thy medicine and medicine be thy food.(汝<なんじ>の食事を薬とし、汝の薬は食事とせよ)」という言葉を残しています。

 つまり、食品は、健康維持の重要な役割を担っていて、さらに病気の予防や治療にもつながる可能性があることを意味しています。ただ、これらの考え方は、あくまで経験則に過ぎません。科学的に研究が行われるようになってきたのは近年になってからになります。

 

食品の働き 栄養→嗜好性→体調面で研究進む

 食品の機能性に関する研究のスタートは、栄養面におけるものでした。具体的には、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルといった、人が生きていく上で必要となるカロリー供給や栄養素に関するものです。日本の研究成果では、鈴木梅太郎博士が発見したオリザニン(ビタミンB1)が有名です。

 そして、1960年代の高度経済成長期に入り、人々の栄養状態が改善すると、次のステップとして、食を楽しむといった嗜好面の研究が始まりました。食品のおいしさのもととなる味や香りなどに関する研究です。これらの研究成果を応用・活用したインスタント食品が市場をにぎわすようになったのも、この頃からになります。

 さらに時代が進み1980年代に入ると、食の問題は、恵まれすぎた食生活によって引き起こされた飽食・偏食になってきました。そして、その結果生じる肥満やさまざまな病気との関連についても研究が進みました。皆さんがご存じのメタボリック症候群の概念が提唱され始めたのも、この頃になります(※1)。

 一方で、食を改善することで、このような病態や病気を未然に防ぐための研究も進められてきました。1984年、文部省(当時)の科学研究の重点領域と位置づけられた「食品機能の系統的解析と展開」の研究班が、先導的役割を担いました。この研究班は、世界に先駆けて「食品機能論」というコンセプトを提唱しました。

 

味覚や臓器、体調に働きかける「食品機能論」

 食品は必ず口から入ります。

 口の中では、食品の成分が味覚や嗅覚(きゅうかく)器官に対して何らかの働きかけをします。

 消化管から吸収されたあとは、身体のさまざまな臓器に対しても何らかの働きかけをします。

 先ほどの文部省研究班は、この「働き」を「機能」という言葉に置き換えて、次のように整理しました。

<食品機能論>

①一次機能:栄養面での働き

 生きていく上で必要な栄養素やカロリーを供給する機能

②二次機能:嗜好面での働き

 味・香りなどの感覚に関係し、食品をおいしいと感じさせる機能

③三次機能:生体調節面での働き

 身体の防御、病気の予防・回復、体調リズムの調整、老化制御などの機能

 

 このように食品には、三つの機能があるという考え方を<食品機能論>といいます。

 そして、病気の予防などの三つ目の機能をもつ食品は、「機能性食品(Functional foods)」と定義されました。この用語、実は日本が世界に向けて発信した日本発のものになります。

 さらに、この「機能性食品」の考え方に基づいて、1991年に特別用途食品(トクホ)、2001年に栄養機能食品、2015年に機能性表示食品の仕組みが、それぞれ制度化されました。現在、この3種類の食品は、まとめて「保健機能食品」とされています。

 前回、この保健機能食品は「機能性の表示ができる」と説明しましたが、その理由は、今回紹介した食品の機能性に関する歴史的背景があるからです。

 なお、ここで食品と医薬品との区別について注意点があります。

 薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)と呼ばれる法律第2条の定めで、「疾病の診断、治療または予防に使用されることが目的とされている物」は医薬品としての規制を受けることになります。

 食品として製造・販売されているものは、医薬品ではありません。法律に従い、「機能性」を表示する時には、病気の診断・治療・予防を目的とした表現はできないことになっています。

 

あらゆる食品には機能性がある?

 ここで改めて、食品の分類を図で示します。

 ここで冒頭のクイズについて考えてみます。

 機能性(有効性・効き目)が表示できる「保健機能食品」に、③の生体調節面での働き(機能性)があることは疑いの余地がありません。また、食品としてとらえれば、①の栄養面での働き、②の嗜好面での働きがあることも間違いありません。

 では、機能性が表示できない「一般食品」に機能性はないのでしょうか?

 前述の「食品機能論」における①栄養面での働きについては、あらゆる食品において少なからず付随していることになります。そして、②嗜好面での働きについても、人の好みはそれぞれあるものの、多くの食品について付随していると言えそうです。

 つまり、保健機能食品も一般食品も、①・②の点では機能性があることになります。

 ですから、クイズの答えは「◯」になります。

 

クイズの答え:すべての食品に機能性がある

 

 テレビの健康番組や雑誌の健康記事で、次々と取り上げられる食品の「アレがいい」「コレがいい」。よくネタが続きますよね。

 ここからは、個人的な推測も含みます。

 確かに、①栄養面・②嗜好面の視点から見れば間違ってはいません。仮にクレームが来たとしても、言い逃れができてしまいそうです。もしかしたら、食品機能論を逆手に取って、すべての食品には機能性があると強弁しているのかもしれません。

 しかし、情報を受け取る側は、健康の維持・増進を目的として、食品の三次機能(生体調節面)を期待していると思います。

 実は、文部省研究班が「食品機能論」を提唱した際、「①の一次機能(栄養面)・②の二次機能(嗜好面)」と「③の三次機能(生体調節面)」は切り離して議論されていました。ですが、その点をあえてあいまいにして、食品の機能性を強調しているようなケースが散見されている気がします。食品機能論が悪用されず、正確な理解が進むことを願ってやみません。

(※1) 生活習慣病の三大要素(高血圧・糖代謝異常・脂質代謝異常)がインスリン抵抗性を基礎に集積して心血管疾患を引き起こすという学説「Syndrome X」が報告されたのは1988年になります。

<アピタル:これって効きますか?・健康食品、どう向き合う?>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/kiku(アピタル・大野智)

アピタル・大野智

アピタル・大野智(おおの・さとし) 大阪大学大学院准教授

大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座准教授。1971年浜松市生まれ。98年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。同大学第二外科(消化器外科)入局。現在は緩和ケアチームで癌患者の診療に従事。補完代替医療や健康食品に詳しく、厚生労働省「『統合医療』情報発信サイト」の作成に取り組むほか、内閣府消費者委員会専門委員(特定保健用食品の審査)も務める。