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 一時期に比べると少し落ち着いた印象がありますが、週末などには今もたくさんのマラソンイベントが開催されており、マラソンブームはまだ続いているようです。

 読者の中にも、市民マラソン大会などに参加されている方がいるかもしれません。

 ベストなコンディションでレースに臨むためには、その前にとる食事の内容が重要です。今回は競技パフォーマンスを上げる食事のポイントについて紹介します。

 まず押さえておきたいのは、運動をするためには、エネルギー源となる炭水化物が必要だということ。私たちのからだは活動をするとき、血液中のブドウ糖や、肝臓や筋肉に貯蔵している炭水化物(グリコーゲン)、脂肪をエネルギー源として利用します。体内のどのエネルギー源が多く使われるかは、運動の種類や強度、時間などによって異なります。ウォーキングなど強度が低い有酸素運動では脂肪が多く使われますが、強度が高い運動をする場合に炭水化物が足りないと、エネルギー切れになって、思うような結果が残せないということになりやすいので気をつけたいですね。

 では、走っている途中でエネルギー切れにならないようにするには、レース前にどのような食事をとるとよいのでしょうか?

 まず、おすすめはごはん食です。他の主食に比べ、ごはんはたくさんの炭水化物を含んでいるからです。

 

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 さらに、

●油の多いものなど胃に負担のかかる献立

●食べ慣れないものや生もの

●お腹の張りにつながる食物繊維の多いもの

は避けた方がよいでしょう。

 食事をとるタイミングは、私がサポートしている大学や実業団の陸上選手の場合、消化時間など、個々の選手の体質などを考慮した上でスタート時間から逆算して決めます。

 一般の方もアスリートと同様に、本番前に普段より長めの距離を走るトレーニングを行うことがあると思います。その際にレース当日を想定した食事のメニューと食べる時間を併せて試しておくとよいかもしれませんね。個人差もありますが、実業団に所属する選手などはレースの4時間前には食事を終えています。緊張している場合や、消化吸収に時間がかかると感じる方は、もう少し早めがよいでしょう。

 

 また、レース中のエネルギー補給も大切です。マラソン大会の給水所には、多くの場合、エネルギーを補うバナナやパンなどの補給食が用意されています。市民ランナーの方で、完走までに長時間を要する場合は、こまめにエネルギーを補給することをおすすめします。

 

 次にレース後の食事についても触れておきましょう。

 からだに疲労を残さないようにするためには、運動後の栄養補給も大切です。

 疲労回復の効果を考えるなら、レース後にも炭水化物(糖質)を摂取することがおすすめです。運動をして、筋肉の中にある筋グリコーゲンが減少すると、疲労感の原因になります。筋グリコーゲンとは筋肉に蓄えられる炭水化物の一種で、運動の際に、主なエネルギー源として使われます。運動後に炭水化物をしっかりと補給することで、筋グリコーゲンが回復されやすいと言う研究があります。消費したエネルギーを補給する目的はもちろんのこと、疲労回復の点でも運動後の炭水化物の摂取は大切です。

 さらに、運動をして負荷がかかった筋肉は傷ついています。その回復には、たんぱく質が必要です。

 筋肉は、運動によって傷がつき、しっかりとした栄養補給と休養がとれてこそ増加していきます。傷ついた筋肉を修復するためにも、運動後なるべく早くに栄養補給をする事がおすすめです。よくジムなどでトレーニング後にプロティンを飲む光景を目にしますが、これはそのような効果を期待して行っていることなのです。

 

 以上のような理由から、レース後の食事に最適なのが、やはりごはんです。ごはんは炭水化物を多く含むとともに、たんぱく質も含んでいます。おにぎりであれば、携帯もしやすく、レース後すぐに栄養補給ができると思います。鮭などのたんぱく質を含む具のものを選ぶとさらによいですね。パンの場合は総菜パンやサンドイッチなど、たんぱく質を一緒にとれるものを選ぶことがおすすめです。

 ただし、走った直後に固形物は食べられないという人は、無理せずゼリー飲料などで栄養補給してもOKです。

 

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 ここまで、マラソン大会を例にレース前後の食事について説明してきましたが、基本的なことは他のスポーツやトレーニングを行う際も同様です。

 例えば、日々のトレーニングで、いつも途中からばててしまう、またはトレーニング後の疲れがなかなか取れないというのなら、日常の食事で運動に必要な栄養が足りていないのかも知れません。 そのような場合は、一度食生活全体を見直してみてはいかがでしょうか?

 最後に一つ、やせることよりも筋肉をつけることが目的の場合、空腹状態でトレーニングに臨むのは逆効果ということをお伝えします。私たちのからだは活動をするときに、まず血液中のブドウ糖を利用し、その次に肝臓や筋肉に貯蔵しているグリコーゲンを利用します。それでも不足すると、筋肉を分解してグルコースを生み出し、エネルギー源とします。また、糖質制限などを行って炭水化物の摂取が不足し、からだにグリコーゲンがあまり蓄えられていない状態で運動をすると、十分に蓄えられている時と比べて、からだのたんぱく質の分解が多いことが分かっています。つまり、炭水化物が不足すると、かえって筋肉が落ちてしまうので、筋肉をつけることと逆になるのです。

 

 こういったことから、朝食前(空腹時)の運動はあまりおすすめできません。朝食前にランニングやウォーキングを行う人は少なくないと思いますが、安全のためにも、効果を最大化するためにも、栄養を補給してからスタートするようにしましょう。

 私の経験上、成績を残せる選手は、どんな時でもごはんをしっかり食べられるイメージがあります。きちんと食事をすることが、強いからだをつくるのは、一般の方であろうと、アスリートであろうと同じなのです。

  

<アピタル:タニタとつくる健康生活・コラム>

http://www.asahi.com/apital/column/tanita/(アピタル・堀越理恵子)

アピタル・堀越理恵子

アピタル・堀越理恵子(ほりこし・りえこ) 株式会社タニタヘルスリンク・ヒューマンサービス企画部 公認スポーツ栄養士

学校給食や特定保健指導事業者での勤務を経て、タニタヘルスリンク入社。現在は健康づくりに取り組む人へのカウンセリング業務や健康セミナーの講師として、健康支援サービスの企画や運営などを担当。公認スポーツ栄養士の資格を生かし、大学の駅伝部や実業団のスポーツ選手の栄養マネジメントも担当している。