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 4月1日に三省堂池袋本店で産婦人科医の宋美玄先生と私でトークショーをして来ました。ご足労いただいた皆さま、ありがとうございました。お子さん連れの方もたくさんいたし、私の両親と長女がのぞきにきたり、最後は宋先生の娘さん乱入事件があったりしてにぎやかでした。

 ネット上の育児情報との付き合い方は、以前にもこの連載で書きましたが(「その健康情報は正しい?」https://digital.asahi.com/articles/SDI201610261011.html 「ネットの育児情報、どう見分ける?」 https://digital.asahi.com/articles/SDI201709022800.html)、おかしな情報に接するのはなにもネットだけではありません。トークショーでは、よくあるニセ医学やトンデモ育児の実例をあげて話しました。

 質問コーナーでは、身近な人がニセ医学を信じ込んでしまったり、勧めてきたりする場合どうしたらいいか聞かれました。今まで普通に接して来た人にどう接するのがいいかと戸惑うし、お子さんがどうなってしまうのか心配ですね。私が答えたのは、「身近な人が迷っているようなら冷静に客観的データをもとにニセ医学は正しくない、標準的な医学・育児が正しいことを説明する」「すでに妄信しているようなら、そっとしておく」ということでした。

 はなから聞く耳を持たない人にいくら説明をしても、相手をかたくなにするばかりです。反感を持たれることもあるし、私のようにクリニックで仕事をしている医者のところには来院してくれなくなり、接点が絶たれます。

 とはいえそっとしておくと言っても、実の母・父や義理の母・父だと困ることがありますね。長い付き合いにならざるを得ない人とは、正面から意見を戦わせるよりは受け流すのがいいかもしれません。ケース・バイ・ケースですが。

医学的な根拠、聞いてみる

 乳児健診や病気で行った医療機関で怪しい助言を受けた際には、それが医学的に根拠のあることなのか、個人的な意見なのか問いただすのがいいと思います。「赤ちゃんの衣類は大人のものとは別にして、固形せっけんで手洗いしましょう」と言われたことのあるお母さんがいましたが、保健師の個人的な意見だと思ってください。

 白衣を着ていたり、管理栄養士・看護師・保健師・助産師などといった国家資格を持っていたりする人だと、医学的に正しいのではと感じるものですが、意外に自分がそうしていたとか、単に信じているだけということがあります。

「◯歳で◯◯が決まる!」に要注意

 また、アマゾンで本を探す人は多いと思いますが、「歳 決まる」で検索してみてください。「◯歳で◯◯が決まる!」というように、知能や運動能力、その他あらゆるものが特定の年齢で決定するという本が、たくさん出てきます。

 医師、心理学者が書いているものが多いようですが、これも個人的な意見でしょう。危機感をあおって何かを売ろうとか、自分の考えを聞いてもらおうという人は多いのです。トークショーでも宋先生と話しましたが、怪しい育児サイトは物販広告がついているものが多いですね。

 人は意外に柔軟性のあるもので、何歳をすぎたら遅いと言うよりは巻き返しができると思いたいし、人生で失敗したかなと思っても、「こうやって乗り切れるよ」と勇気づける本の方が好ましいと思います。

 ○○をしないと大変なことになってしまうという言い方は、育児情報の中ではよくあって、「2歳まで母乳をあげないと知能が…」とか「ミネラルが不足しないようにしないと発達障害に…」などということについても質問がありました。最近は「がんの治療は意外なものがいい訳ではないし、有名人だとかお金持ちだから特別な治療があるということもない。やはり標準治療がベストな治療だ」という認識が広まって来たように思います。

珍しい育児方法がいい、わけではなく

 育児についても、画期的な新しい方法や、知る人ぞ知る珍しい育児方法がいいわけではないのです。母乳はどう努力しても十分に出ない人はいます。2歳まであげないと知能が悪くなってしまうなら、粉ミルクの消費量が一番多かった昭和40-50年代に生まれた人はみんなバカですか?ミネラルで発達障害の予防や治療ができるなら、サプリメントを自分で買って飲ませるのではなく医療保険で処方されるでしょう。

 妊娠・出産・子育て情報の選び方はとても難しいものです。ネットで困ったら内閣府のこちらのページから見るとか(「結婚・妊娠・出産の切れ目ない支援」 http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/kiremenai/link_list/index.html別ウインドウで開きます)、私がまとめたこちら(デマで溢れるインターネットにも、子育てに役立つサイトはあります http://wezz-y.com/archives/52753別ウインドウで開きます )で調べることをお勧めします。

 書籍の『専門家ママ・パパの本』シリーズ(http://www.naigai-shop.com/SHOP/1049458/1091583/list.html別ウインドウで開きます )で知識をつける、かかりつけの小児科医に相談するというのももちろん大事です。育児は忙しいし大変ですが、少しでも苦労が減りますように!

トークショーで撮影した動画はこちら

https://youtu.be/0op_c8iy14Q別ウインドウで開きます

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。