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 このコラムでは、介護している人が心身の健康を保つために自分自身をケアするヒントとして、アンガーマネジメントをお伝えしています。

 老親を介護するなかで、頭では理解しているのにイライラを抑えられないということが、みなさんにもあるのではないでしょうか。古くなって擦り切れた洋服をいつまでも着ている、着替えを出しておいても洗濯していない服を着る、日用品がたくさんあるのにまた同じ物を買ってくる、古くなって腐りかけた食べ物がたまっている……。それがいちいち目について、イライラ、イライラ。

 ただでさえ世代間の考え方のズレや生活様式の違いにストレスがあるのに、そこに認知症の症状が加わるとさらに大変でしょう。

 財布を探していたかと思えば、いきなり犯人扱いされて、「盗んだだろう」と食ってかかられたりすることもあります。これは物盗られ妄想という被害妄想の一つで認知症の症状として高齢の女性に多く見られます。身近な人に疑いが向きやすく、長く一緒にいる家族が対象になったりします。介護しているのに、感謝されるどころか疑いをかけられるようなことがあると、動揺するし、怒りもわいてくるし、なにより疲弊してしまいます。

 

 認知症もその種類によって特徴的な症状が異なりますが、物忘れや認知の変動、感情の不安定さ、ひとり歩き、妄想など、介護者はその対応に苦労されていることと思います。

 基本的な症状や対応法は勉強すれば理解できますが、実際の場面では冷静に対応できることばかりではないでしょう。本人の言葉を否定しないようにと頭では理解していても、盗まれたと疑いをかけられれば、つい否定したくなることもあります。それがかえって本人を興奮させてしまい、さらに対応を難しくしてしまうこともあります。

 ここで否定してはいけないとわかっているのに「人を泥棒扱いしないでよ!」と言いたくなったり、冷静に対応できなかったことを責めてしまったりするかもしれません。

 

 以前のコラムで、カッとなった時にほんの数秒間意識をそらして冷静さを取り戻す方法を紹介しました。例えば、「頭の中で数を数えてみる」「手をグーパーしてみる」「何かをじっと観察する」「とりあえず手を洗う」など、怒りから一時的に意識をそらすというものです。

 ▽イライラからほんの数秒意識をそらそう(2017年10月31日)

 https://www.asahi.com/articles/SDI201710235921.html

 

 「わかっているのに、ついカッとなる」といったイライラについては、こうした方法のうち身体を動かすことで、自分の感情を受け流す方法を準備しておくのがおすすめです。

 介護の状況にもよりますが、相手と距離を置くことができない場合は、お茶と軽いお菓子で小腹を満たす、一緒に散歩に出て気分を変えてみる、などお互いに気持ちを鎮める方法を試してみるのも良いでしょう。

 その場を離れられる状況なら、買い物にでるなど歩いたり自転車に乗ったりと軽く身体を動かすことで気分転換してみるのも良いでしょう。家にいるなら、小さい範囲を決めて掃除をする、シンクを磨き上げるなど、黙々と単純作業で手を動かすような家事に集中するのも一つの手です。

 特別な方法ではなく、普段からやっていることや日常のなかで対処できることをストックしておきましょう。

 

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◆編集部から

<田辺有理子さんの本が出版されました>

 タイトルは「イライラと賢くつきあい活気ある職場をつくる 介護リーダーのためのアンガーマネジメント活用法」(第一法規、2160円)です。(詳しくはアマゾン:https://goo.gl/sxK6md別ウインドウで開きます

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 精神看護専門看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。