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患者を生きる・車いすラグビー(記者の一言)

 頸髄は脳と体をつなぐ脊髄の中で、最も大切な神経です。ここが傷つくと体や手足がまひし、場合によっては人工呼吸器が必要になります。

 患者の多くは自らの状態にショックを受け、一度は「死にたい」と考える――。治療やリハビリに携わる医師や理学療法士、作業療法士から取材中、こう聞きました。車いすからの乗り移りや日常動作などのリハビリも根気強さが求められ、「モチベーションを維持するのが難しい」といいます。

 そんな時、支えとなるのが、同じ境遇の人たちの存在です。頸髄損傷の患者同士しかわからない悩みなどを互いに話すことで、リハビリや今後の生活に対して前向きになれるといいます。

 大学への復学に向けたリハビリ、車いすラグビーへの挑戦――。今回取材させていただいた倉橋香衣さん(27)は取材中も練習中も笑顔が絶えず、自身の困難を吹き飛ばし、目標に向かって進む力強さを感じました。

 そんな彼女の「支えになった」のは、やはり、入院中に出会った同い年のリハビリ仲間と、たわいない話をしたり、排尿や排便、入浴、着替えの動作について互いにアドバイスし合ったりしたことだったそうです。

 復学に向けた強い思いを象徴するこんなエピソードも聞きました。トランポリン大会の練習中にけがをしたわずか半年後にあった大学の学祭に倉橋さんは「参加したい」と思い、当時入院していた神戸市内の病院でスタッフに伝え、実際に埼玉県内の大学まで移動し、参加したそうです。

 当初は車いすに乗れる時間も短く、参加は難しいと考えられていました。しかし、担当の理学療法士や作業療法士とともにリハビリに励み、車いすに乗れる時間を少しずつ伸ばしたそうです。「やりたいことを明確に持ち、あきらめずにそれを達成するところがすごい」と担当の作業療法士だった安藤芽久美さん。倉橋さんは「目標の復学のために全部自分でできるようにしてくれ、やりたいことを応援してくれた」と、リハビリに携わった人たちへの感謝を口にしていました。

 車いすラグビー日本代表は、2016年のリオデジャネイロ・パラリンピックで銅メダルを獲得。20年の東京パラリンピックでは、金メダルを目指しています。倉橋さんの最高の笑顔が見られることを願っています。

<アピタル:患者を生きる・スポーツ>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/

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 患者を生きる「スポーツ・車いすラグビー」の全5回をまとめた【まとめて読む】を、明日掲載する予定です。こちらもご覧ください。

(土肥修一)