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 このコラムでは、介護している人が心身の健康を保つために自分自身をケアするヒントとして、アンガーマネジメントをお伝えしています。

 前回は、財布を探していたかと思ったら「盗んだだろう」と疑われ、老いた親の言動にカッときたときに、お互いの気持ちを鎮める方法を考えました。

 お茶と軽いお菓子で小腹を満たす、一緒に散歩に出て気分を変えてみる、その場を離れられるなら、買い物にでるなど歩いたり自転車に乗ったりと軽く身体を動かす。家にいるなら、小さい範囲を決めて掃除をする、シンクを磨き上げるなどです。

 ▽老いた親の言動にカッときたときの気分転換のコツ(2018.5.1)

 https://www.asahi.com/articles/SDI201804287807.html

 

 今回は、慢性的にいつもイライラしてしまう場合の対処法を考えます。

 

 家族を介護する大変さのひとつは、替わりがきかないことでしょう。仕事なら毎日の勤務が終われば離れられます。しかし、家族の介護に終業時刻はありません。家事もあるし、人によっては外の仕事もあれば、子どもの世話などもあるかもしれません。常にマルチタスクで生活が進んでいくうえに、介護の負担が上乗せされるわけです。

 何かの出来事にカッとなるというような場面がなくても、いつも余裕がなくイライラしがちという人は、家事でこころを落ち着けてみてはいかがでしょうか。毎日の家事がイライラの原因と言われそうですが、実はイライラの解消に効く要素が多く含まれています。ちょっとした考え方の転換で、毎日の家事がこころを穏やかにする手段になれば良いと思いませんか。

 私はたまに洗濯機が回る様子をしばらくのぞいていることがあります。単調なようで複雑な水の流れや衣類の動きに、目が離せなくなるのです。先日読んだ本に、これはイライラを消す方法だと書いてあり、合点がいきました。じっと見ていると落ち着くのです。

 ほかにも物を整理して気持ちも整理し、床や家具を磨くことで心の曇りを消すのです。料理もまぜたり、こねたり、切ったりと作業に集中することや、煮たり焼いたりするときの香りを味わえることなど、楽しめる要素が多いようです。

 

 このように、「今、ここ」に意識をおくことを、マインドフルネスと呼びます。マインドフルネスは、アンガーマネジメントの観点からも効果的だと考えられています。

 気持ちに余裕がないと、料理をしながら「あれもこれも終わっていない」「明日の準備もしなくちゃ」「買い物を忘れちゃった」など、あれこれ考え、並行してこなしているつもりなのに、どれも中途半端だった、というような状況に陥ってしまうものです。それは意識があちこち飛んでいて、「今、ここ」に集中できない状態です。

 五感を働かせて、「今、ここ」に集中することでイライラをリセットしましょう。

 

 小さな子どもは目にとまったものをそのまま言葉に出します。「あ、ワンワン」「バスが来た」「冷たい」というふうに言葉にしながら、まさに意識が目の前に集中している状態です。

 昨日買ったのを忘れて今日も同じ物を買ってきたり、財布をどこかに置き忘れたりする親にイライラしたら、目の前に集中してみましょう。「冷蔵庫に卵が3パックある」「冷蔵庫に財布が入っている」……。

 あれこれ考えて評価したりせずに、目の前の状況をありのままに受け止めてみるだけです。

 

参考文献: 安藤俊介監修:TJMOOK イライラを消す家仕事,宝島社,2018.

 

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◆編集部から

<田辺有理子さんの本が出版されました>

 タイトルは「イライラと賢くつきあい活気ある職場をつくる 介護リーダーのためのアンガーマネジメント活用法」(第一法規、2160円)です。(詳しくはアマゾン:https://goo.gl/sxK6md別ウインドウで開きます

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 精神看護専門看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。