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 沖縄を中心にはしか(麻疹)がまだ新たな感染者を増やしています。ワクチン接種をどうしようかと考えている方も多いのではないでしょうか。

子どもの場合は定期接種

 はしかの予防接種は、年代によって制度が変わってきた経緯があります。現在、子どもはMR(麻疹・風疹)ワクチンの定期接種を受けることになっています。お子さんの母子手帳が手元にある方は確かめてみましょう。

 MRワクチンは、1歳の誕生日から2歳になる直前までに1回目、小学校入学前の1年間に2回目を受けます。ただ、2回接種になったのは2006年度で、それ以前の人たちは1回しか受けていない可能性があります。自費になりますが2回受けましょう。(2008~12年度に中学1年生と高校3年生を対象にした追加接種が行われましたが、受け忘れた人もいるかもしれません)

 一般的に、1回目・2回目とも住民票のある市区町村から予診票が送られてきますが、なくしてしまった場合や送られたかどうか不明な場合は保健所に問い合わせてみましょう。1回目を受け忘れて2歳になってしまったときや、2回目を受け忘れて小学校に上がってしまってから打ちたい場合は、自治体によって対応が違うようです。機会を逃した後も無料で受けられる地域もありますので、最寄りの保健所に問い合わせてみましょう。

 

 1歳未満の子に受けさせたい場合は、どうでしょう。生後6カ月を過ぎていれば自費でMRワクチンあるいははしか単独のワクチンを受けることができます(生後6カ月未満のお子さんは、体内でもらった母親の抗体が残っている場合があり、ワクチンの効果が少ないことがあります)。1歳を過ぎていないと任意接種になるので、料金は医療機関によって違います。

 任意接種の場合、現在、はしか単独のワクチンは不足しているので、風疹も同時に予防できるMRワクチンを受けることをお勧めします。三日ばしかと呼ばれる風疹も先進国の多くではほとんど見なくなった感染症ですが、ワクチン接種率が大人では低いので海外から持ち込まれると患者さんが出ます。実際、2012―13年に流行して多くの先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれ、話題になりました。

 1回目を受けた後、2回目の予診票が送られてくる前のお子さんは、2回目を早めに受けるべきなのかと迷う方が多いですね。MRワクチンを1回受けていれば95%の人が免疫を持ちます。2回受けると99%になりますから、海外や現在流行している地域に行くので心配だという方は受けさせてもいいと思います。

 ただし、MRワクチンは受けてすぐに効果が出るわけではありません。初めての場合、抗体が上昇してくるのに2週間かかります。2回目の場合はもう少し早くに抗体が上がるものの、それでも1週間かかります。あまり直前では効果は変わらないことがあります。

大人はどうする?

 大人の場合はどうでしょう。昔のことで、ワクチンを受けたのか、はしかにかかったことがあるのか、わからない方もいるのではないでしょうか。

 不明な場合は、抗体価を調べずにワクチンを受けて構いません。抗体が既にある人にワクチンを打っても困ったことは起こりません。むしろ、抗体があるはずだと思っていてなかった場合の方が悲劇です。

 国立感染症研究所の調査(5月9日時点)によると、今年はしかにかかった人の年齢別の内訳は20代が24%、30代が32%、40代が15%でした。ワクチンが1回だった世代で多く発症しています。

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 一度、はしかにかかったことがあるという方も、免疫の持続期間は自然感染で40~50年、ワクチン1回接種で約10年といわれていて、実際私は風疹に2度かかった大人を診察したことがあります。はしかも同様だと思いますので、10歳未満でかかったことのあるという方も、40歳前後になったらワクチンを受けることをお勧めします。

 また、地域によっては、妊娠を希望するカップルあるいは女性にMRワクチンの補助金が出ます。市区町村のホームページなどで調べてみましょう。

 注意してほしいのが、MRワクチンは生ワクチンなので、女性が妊娠している場合には接種は受けられないことです。また、生ワクチンを受けて2カ月間は避妊が必要です(男性は避妊の必要はありません)。また、ステロイド薬や免疫抑制薬を内服している場合、量によっては生ワクチンを打つことができません。主治医に聞いてみてください。

 こうした妊娠を希望する人向けの補助制度では、風疹の検査をして抗体が低い場合のみ、補助金が出るということがあります。抗体価検査のために受診し、また別の日に結果を聞き低かったらワクチンを打つという、最低2回医療機関に行かなくてはいけません。利用者にとても不便を強いていると思います。

 2回目の接種が不明だった場合は、抗体があるかどうかの検査をすることなく、MRワクチンを受ける方が合理的です。自治体側にはぜひ改善をお願いしたいです。

 MRワクチンは、2回受けていても抗体が上がらない場合があります。抗体の上昇がなくても、3回以上受ける必要はありません。抗体が関与せず、細胞が直接作用する「細胞性免疫」はあると考えられるからです。

 HI法(抗体検査のひとつ)の麻疹抗体価8倍の検査結果をツイッターにあげて「抗体があった」と言っていた人がいました。HI法は一般的に使われていますが感度があまり良くなく誤差があるので、32倍以上あったほうが安心です。ワクチンを打ったのが1回だけだったら、やはり2回目を受けましょう。

 現在、子どもはMRワクチン2回目の接種率がかなり向上して、流行予防の目安の95%以上までもう少しです。一方、大人の抗体保有率やMRワクチン接種率の統計はなく、正確なところはわかりません。実際に感染した人の内訳は、過半数が成人であることから免疫のある人は少ないと考えられます。接種歴や罹患歴が不明な人はぜひMRワクチンを受けましょう。

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。