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 1991年からスタートした特定保健用食品(トクホ)制度。「血圧が高めの方に」と表示されたお茶のほか、最近では「食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする」と表示されたコーラやノンアルコールビールといった嗜好(しこう)品のトクホも販売されています。「健康にいいトクホでコーラ?」と違和感をおぼえた人もいるかもしれません。でも、深夜のラーメンにビール、ファストフードにコーラ……「分かっちゃいるけどやめられない」人のために、と考えると、違った側面が見えてきます。今回は、トクホの役割について改めて考えてみます。

 

◯×クイズ:トクホを利用してさえいれば、健康は維持できる?
(※答えは、本文中にあります)

▼コーラやノンアルコールビールなど嗜好品のトクホも

▼嗜好品のトクホは食生活改善の一歩を踏み出すきっかけになる可能性がある

▼トクホには、バランスの取れた食生活を普及啓発する目的がある

 2016年度に消費者庁が実施した調査(※1)で、「特定保健用食品(トクホ)は、健康の維持・増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、機能性の表示が許可されている」ことを知っていると回答した人は48.0%に上っています。トクホについて、あまり詳しく知らない人でも、下の図のマーク(※2)を見たことがある人は多いのではないでしょうか。

写真・図版

 現在、1千を超える製品がトクホの許可を受けています。

 最近ではコーラやノンアルコールビールなど嗜好品もトクホとして許可を受けています。この許可は、ランダム化比較試験にて有効性が証明されていることを意味します。

 ただ、前回の記事で解説した通り、その効き目は「臨床試験と同じ条件の対象者が、同じ条件でトクホを利用した時、同じ結果が得られる可能性がある」という前提です。

●「トクホって効くの?」その効果を理解するには

https://www.asahi.com/articles/SDI201805078064.html

 その点を踏まえても、コーラやノンアルコールビールなど嗜好性が高いものをトクホとして国が許可することに違和感をおぼえる人がいるかもしれません。

 しかし、トクホの位置付けを理解した上で、トクホ・コーラやトクホ・ノンアルコールビールの役割を考えると、実は理にかなった側面があることがみえてきます。

生活習慣病対策は、食生活の改善からというものの

 飽食の時代と言われて久しい現代では、ともすると食生活が乱れがちです。そして、内蔵肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさり、心臓病や脳卒中などの血管の病気を招くメタボリック症候群(メタボ)という言葉も皆さんご存じだと思います。

 また、動脈硬化が原因となって起こる心臓病と脳卒中は日本人の死因の約4分の1を占めています。

 メタボ対策として重要なのは、バランスのとれた食生活と、適度な運動や十分な休息です。

 メタボになる人は、食べ過ぎたり、不規則な食生活だったり、偏った食事をとっていたりと、いわゆる不健康な食生活の実態があります。健康のためにバランスのとれた食生活が重要なことは、頭では理解していると思います。ですが、なかなか人の行動を変えることは難しいのが現実です。

 これは、夜中のラーメンを止めることができない筆者自身も強く感じているところです。そして、ラーメンと一緒にビールを、ということも……。あるいは、ハンバーガーにコーラをセットで、という人もいるのではないでしょうか。

 このような不摂生な生活を改めることは一朝一夕にはいきません。「分かっちゃいるけどやめられない」という人間の性(さが)は切っても切り離せません。

嗜好品のトクホの有効活用

 嗜好品であるノンアルコールビールやコーラのトクホをうまく活用すると、生活習慣改善の取っ掛かりになる可能性があるのではないでしょうか。

 例えば、ハンバーガーとコーラのセットを普段よく食べている人に、ファストフードを禁止してバランスのとれた食生活を強制した場合、一時的に頑張れたとしても、途中で脱落してしまう可能性が高いでしょう。

 普段飲んでいるコーラをトクホ・コーラに切り替えることは、「したいことを我慢する」「新たな食習慣に取り組む」といったことよりもハードルが低いのではないかと思います。

 嗜好品を我慢するのは大変です。でも、嗜好品をトクホに切り替えることで、嗜好品を楽しみつつ、生活習慣改善の最初の一歩を踏み出すことができるかもしれません。

あまり知られていないトクホに義務付けられている表示

 ここで、トクホの役割について改めて考えてみます。

 トクホとして許可されるための要件(※3)には、「食生活の改善が図られ、健康の維持増進に寄与することが期待できるもの」という前提条件があります。

 「食生活の改善が図られ」という点に着目してください。トクホの役割の一つに、「バランスの取れた食生活に関する普及啓発」があります。そのためトクホの製品には「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」の表示が義務付けられています。

写真・図版

 このような表示は、あまり消費者には知られていないようです。消費者庁の調査(※1)でも、トクホにこの文言が表示されていることを知っていると回答した人は31.0%にとどまっています。

 トクホは、その製品だけで健康を維持・増進することを目的にしているのではなく、バランスの取れた食生活の重要性を消費者に伝えるメッセンジャーとしての役割を担っていることをぜひ知ってください。

 ですからクイズの答えは「×」になります。

クイズの答え:トクホだけで健康が維持できるわけではない

 最後に、トクホのCMですが、利用者が「これさえ飲めば、何を食べても大丈夫」と錯覚する可能性のあるものが見られます。トクホを製造販売する企業には、<バランスの取れた食生活の上で利用を勧めるCM>にしてもらえたらと願うばかりです。

[参考資料]

※1:消費者庁「平成28年度食品表示に関する消費者意向調査報告書」(平成29年2月)

※2:消費者庁「特定保健用食品のマークはこちら」

http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/foods_index_4_161013_0001.pdf別ウインドウで開きます

※3:消費者庁「特定保健用食品に関する質疑応答集について(平成30年1月12日付け消食表第625号)」

<アピタル:これって効きますか?・健康食品、どう向き合う?>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/kiku(アピタル・大野智)

アピタル・大野智

アピタル・大野智(おおの・さとし) 大阪大学大学院准教授

大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座准教授。1971年浜松市生まれ。98年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。同大学第二外科(消化器外科)入局。現在は緩和ケアチームで癌患者の診療に従事。補完代替医療や健康食品に詳しく、厚生労働省「『統合医療』情報発信サイト」の作成に取り組むほか、内閣府消費者委員会専門委員(特定保健用食品の審査)も務める。

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