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 ゴールデンウィーク最終日の5月6日(日)、東京・代々木公園で開催されている「東京レインボープライド」へ参加をしてきました。私が初めてこのイベントへ参加したのは4年前のこと。尊敬しているHIV/エイズ患者支援活動をされている方がブースを出展するということでしたので、その応援もかねて会場へ足を運びました。そして3年前からは、アライ(allyとは、英語で「同盟、支援」を意味します)の一人としてパレードにも参加するようになりました。

 今回から2回にわたって、がん患者とLGBTについて考えてみたいと思います。

・「男女」という区別に生きづらさを感じるとき

・LGBTの就職活動のしづらさ

・偏見を解消するためには、まずは「知ること」が大切

LGBTの意味

 LGBTという言葉の意味をみなさんはご存じでしょうか?

 「LGBTとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)の頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の総称のひとつです。」(東京レインボープライド・ホームページから引用)

https://tokyorainbowpride.com/lgbt別ウインドウで開きます

 T:トランスジェンダーは、性同一性障害者のことだと思われている方もいらっしゃるでしょうが、性同一性障害とは医療的なケアが必要とされる場合の診断名ですから、トランスジェンダーの中には、自分の性別に違和感を持ってはいても特に医療的な治療までは必要としない人もいます。また、性的指向や性自認がはっきりしていない場合や、定まっていない、どちらかに決めたくないと感じるなど、特定の状況にあてはまらないなど、LGBTの分類に収まらない類型もあり、性のあり方は多様なのです。

 社会の偏見、誤解から生じる生きづらさというのは、決して「がん」に限ったことではありません。では、LGBTには、働くという視点からはどのような問題があるのでしょうか?

LGBTと就労

 がんの患者さんの就職活動に関して一番多い相談が「病気を言った方がいいのか?」、「既往歴や健康状態は履歴書にどう書いたらいいのか?」という「病気をオープンにするかどうか?」、つまり、カミングアウトに関する質問です。

 こうした質問には、①まずはきちんと志望動機を説明する、②あなたができること、会社に貢献できることを伝える、その上で、③配慮してほしい必要があれば配慮して欲しい内容や期間を具体的に伝えること、と助言しています。「病名ではなく、配慮して欲しいことを言ってください」と伝えると、大部分の患者は安堵します。

 この他にも、健康診断は受けなければならないの?ウィッグでの写真撮影、面接は良いの?傷口にベルトが当たるのでカチッとしたリクルートスーツが着られない場合、どんな洋服があるか?足の裏の水疱が痛くて革靴が履けないけどスニーカーでも大丈夫?など、細かい相談ごともたくさん耳にします。

 LGBTの人が就職活動をするときにも判断に迷う様々な難しさがあります。例えば、トランスジェンダーの男性(戸籍上の性は女性)の場合、履歴書の性別はどう記載するの? 「いわゆる」リクルートスーツは、戸籍上の性が女性ならスカートをはかなくてはならないの? 靴やかばんは男性用、女性用? しゃべり方は「男っぽく」それとも「女っぽく」? 制服があるときは、どちらの洋服を着たらよいの? 

 また、入社した後には、着替えのロッカーは男女のどちらを使うの? トイレは? 同性パートナーは家族として認めてもらえるの? など、判断に迷うことがたくさん出てきます。

 就職する際に、こうした疑問を企業へ問い合わせることは、そう簡単なことではありません。がんも、LGBTも、難病も、自分が身に着けてきた職業能力とは全く関係がないことで、自分の志(こころざし)を押し曲げて働いている方がたくさんいるのです。

 電通ダイバーシティ・ラボが行った全国の20~59歳を対象にした調査結果(2015年4月)では、LGBTに該当する人は7.6%でした。約13人に1人がLGBTと推測されていますから、LGBTはとても身近なテーマの一つなのです。

 電通ダイバーシティ・ラボの「LGBT調査2015」http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2015041-0423%2B.pdf別ウインドウで開きます

 私も洋服や小物はメンズのデザインや仕立ての方が好きですし、家庭科よりは図工、人形遊びよりはプラモデル作りの方が好きでしたから、トランスジェンダーに近い性認識を持っているのではないかと思っています。皆さんはどうでしょうか?

 社会人として働く際は、その人が持つ能力が最大限に発揮できる環境や機会を企業が提供をし、相手にあわせて調整していくことが大切です。人事のマネジメント能力が発揮されるのは、まさにこの部分でしょう。企業の中に、多様性や悩みを打ち明けられる風土があるかどうかは、人事、企業の調整能力の象徴でもあるのです。

 LGBTの就労を応援する企業は、以前は外資系企業が中心でしたが、近年は内資系企業も増えてきています。当事者、関係者がこの問題について声をあげてきたこと、そして、働く一人ひとりが社会人としての責任を果たし、前例となってきたことが、職場での理解を広げ、社会を少しずつ動かしてきたのだと思います。

性の多様性を知る

 LGBTは、学校内でのいじめも問題になっています。皆さん、もしくは、皆さんの周りにも、「おかま」とか「しぐさが女っぽい」とか、そんな言葉で揶揄(やゆ)される友達がいませんでしたか?

 宝塚大学看護学部の日高庸晴教授が2016年に行ったLGBT当事者の意識調査「REACH Online 2016 for Sexual Minorities」があります。この調査結果から、学校生活(小・中・高校)で「いじめ」を経験した人の割合が約6割にも及んでいることがわかりました。http://www.health-issue.jp/reach_online2016_report.pdf別ウインドウで開きます

 私の友人は、今、レズビアンのお母さんたちと子どもたちの暮らしを描いた「In Our Mothers’ House(著者:Patricia Polacco、Philomel Books、出版:2009年)」という絵本の翻訳を行うクラウドファンディングを展開しています。

 性の多様性を子どもや教育現場に伝え、親として受け止めていくことを考えるきっかけを作ることは意外に難しいものです。このような絵本を通じて、性の多様性への知識を取り込んでいくことも、偏見をなくしていく一つの手段だと思っています。

https://greenfunding.jp/thousandsofbooks/projects/2179別ウインドウで開きます

 生き方の多様性や対応は、共通の教育機会がある義務教育を通じて身につけるべき「生きる力」の一つだと思います。また、思春期は、自分の性や性的指向にも気づく大切な時期ですから、冷静な情報提供も必要です。テレビや新聞などでは、東京レインボープライドの報道がたくさん流れました。その背景にある様々な生きづらさについても、社会が「まず知ること」が大切だと思っています。

 次回は、LGBTとがん医療について考えてみます。

<アピタル:がん、そして働く>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/cancer/

(アピタル・桜井なおみ)

アピタル・桜井なおみ

アピタル・桜井なおみ(さくらい・なおみ) 一般社団法人CSRプロジェクト代表理事

東京生まれ。大学で都市計画を学んだ後、卒業後はコンサルティング会社にて、まちづくりや環境学習などに従事。2004年、30代で乳がん罹患後は、働き盛りで罹患した自らのがん経験や社会経験を活かし、小児がん経験者を含めた患者・家族の支援活動を開始、現在に至る。社会福祉士、技術士(建設部門)、産業カウンセラー。

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