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 食品の機能性が表示できる保健機能食品には、「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」の3種類があります。トクホや機能性表示食品は、テレビCMや広告で、聞いたことがある人も多いかと思いますが、栄養機能食品がどんなものか、あまり知らない人が多いのではないでしょうか。今回、保健機能食品の中では少し日陰の存在になっている「栄養機能食品」について解説します。

 

◯×クイズ: 栄養機能食品は国の審査を経て、許可を受けている
(※答えは、本文中にあります)

▼栄養機能食品は不足しがちな栄養成分の補給・補完を目的とした食品

▼制度ができた背景に「高齢化」や「食生活の乱れ」といった栄養成分の摂取不足がある

▼機能に関する表示ができる栄養成分は、脂肪酸、ミネラル、ビタミンとなっている

 栄養機能食品と聞いて、どのようなものを思い浮かべましたか?

 「間食でビタミンや鉄分などの栄養素を補給できるとうたうクッキー」

 「ビタミンを配合した青汁」

 さまざまな製品が栄養機能食品として販売されています。最近では、グミや栄養成分を高めたカイワレ大根などもあります。

 まずは、機能性の表示ができるか・できないかで食品を分類した図を示します。

写真・図版

 

 食品のうち、機能性を表示できるものが保健機能食品です。

 2016年度に消費者庁が実施した調査(※1)では、「栄養機能食品」について知っていますかという質問に、「どのようなものか知っている」と回答した人の割合は13.9%でした。トクホの32.7%、機能性表示食品の14.5%に比べ、残念ながら一番数字が低い結果です。

 それぞれの制度は、トクホは1991年、栄養機能食品は2001年、機能性表示食品が2015年に始まりました。栄養機能食品は、歴史が一番浅い機能性表示食品より認知度が低い状況です。

「栄養機能食品」が誕生した背景

 国が示す栄養機能食品の説明は次の通りです。

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身体の健全な成長、発達、健康の維持に必要な栄養成分の補給・補完を目的とした食品であり、高齢化、食生活の乱れなどにより、通常の食生活を行うことが難しく、1日に必要な栄養成分を取れない場合に、その補給・補完のために利用する食品である。

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 「健康のためにはバランスのとれた食生活が重要」なことは、繰り返しこの連載で指摘しています。そして、バランスの取れた食生活とは、「必要十分な栄養成分の量を摂取できていること」を意味しています。

 食品には、さまざまな栄養成分が含まれています。それぞれについて「1日あたりこれくらい摂取しましょう」という推定平均必要量、推奨量、目安量等が定められています(※2)。

 ですが、高齢になって食事の量が減ったり、食生活の乱れで特定の栄養成分が不足したりすることがあります。その結果、不健康になったり、場合によっては病気になったりすることがあります。

 不足しがちな栄養成分を補給・補完することを目的につくられた食品が「栄養機能食品」です。「高齢化」や「食生活の乱れ」といった社会的背景から誕生した制度と言えます。

不足しがちな栄養成分は?

 では、「身体の健全な成長、発達、健康の維持に必要な栄養成分」はどのようなものがあるでしょうか。

 現在、栄養機能食品の栄養成分として取り上げられているものは以下の通りです。

 

・脂肪酸(1種類):n-3系脂肪酸

・ミネラル類(6 種類):亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム

・ビタミン類(13 種類):ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミン B1、ビタミン B2、ビタミン B6、ビタミン B12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸

(※「カリウム」については、錠剤、カプセル剤とうの形状のものは不可)

  

 参考までに、栄養成分と栄養機能表示の対応表を下記に示します。

写真・図版

 

 それぞれの栄養成分は決められた栄養機能表示しか許されておらず、他の表現に変えることはできません。

 また、注意喚起表示として「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。」の記載が義務付けられています。

 ほかにも、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)はとりすぎによる過剰症に気をつけなければいけませんし、カリウムは腎機能が低下している人は避ける必要があったり、マグネシウムは多量摂取で下痢をする可能性があったりしますので、それぞれに該当する注意喚起表示が義務付けられています。

栄養機能食品に義務付けられている表示

 国の制度として定められている栄養機能食品ですが、実は上の表に挙げた栄養成分が一定量含まれていれば、国への許可申請や届け出の必要がありません。

 ですから、「栄養機能食品は国の審査を経て許可を受けている?」というクイズの答えは「×」になります。

 

クイズの答え:栄養機能食品は国の審査や許可を受けていない

 メーカーの自己申告でできる表示で、チェックする仕組みはありません。つまり、性善説で成り立っている制度と言えます。

 栄養機能食品の製品には「本品は、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。」との表示が義務付けられています。

 また、保健機能食品全てに該当することですが、その製品だけで健康を維持・増進することができるわけではありません。

 健康のために重要なのは、バランスの取れた食生活です。保健機能食品は、その重要性を消費者に伝えるメッセンジャーとしての役割を担っています。ですから、栄養機能食品の製品にも「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」と必ずどこかに表示されています。

 個人的には、バランスの取れた食生活の普及啓発を図るのであれば、この表示は、もう少し目立つところに大きな文字で記載してみてはどうかと思うところもあります。

[参考資料]

※1:消費者庁「平成28年度食品表示に関する消費者意向調査報告書」(2017年2月)

※2:日本人の食事摂取基準(2015年版):http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html別ウインドウで開きます

[補足]

・食事摂取基準の指標としては、摂取不足の回避を目的とした「推定平均必要量・推奨量・目安量」のほか、過剰摂取による健康被害の回避を目的とした「耐用上限量」、生活習慣病の予防を目的とした「目標量」があります。栄養機能食品制度は主に摂取不足の回避を目的としています。

・栄養機能食品の栄養成分のうち、「n-3系脂肪酸」「カリウム」「ビタミンK」は2015年に食品表示法が施行されて、新たに追加された栄養成分です。また、同じく2015年には、これまで生鮮食品としては鶏卵しか認められていなかったものが、全ての生鮮食品が栄養機能食品の対象となりました。

<アピタル:これって効きますか?・健康食品、どう向き合う?>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/kiku(アピタル・大野智)

アピタル・大野智

アピタル・大野智(おおの・さとし) 大阪大学大学院准教授

大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座准教授。1971年浜松市生まれ。98年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。同大学第二外科(消化器外科)入局。現在は緩和ケアチームで癌患者の診療に従事。補完代替医療や健康食品に詳しく、厚生労働省「『統合医療』情報発信サイト」の作成に取り組むほか、内閣府消費者委員会専門委員(特定保健用食品の審査)も務める。