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 成人男性が8g未満、女性が7g未満とされている食塩の1日の目標摂取量。これは「日本人の食事摂取基準」の項目の1つとして、5年に一度検討され、厚生労働省から発表されているものです。この基準は成人だけではなく、年齢ごとに細かく設定されているのをご存じでしょうか。

 

写真・図版

 表の中で注目してほしいのが11歳以下の欄です。子どもの食塩摂取量は年齢等に応じて目標値が設定されていますが、大人に比べるとずいぶんと少ないことが分かると思います。これは、子どもはからだが小さく必要とされる塩分が少ないためです。また、乳児はからだの機能が未発達であることから、塩分の過剰摂取に注意が必要です。しかし、それ以外にも減塩で薄い味付けが必要な理由があるのです。

 その1つが子どもは味覚形成の最中であるためです。

 塩分以外にも「甘過ぎる」など濃い味付け全般に注意が必要です。

 人は物を食べると、舌にある味蕾(みらい)で甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の五味を感じ取ります。食は、もともと生命活動に直結するものなので、活動や生命維持に使われるエネルギーとなる糖などに含まれる「甘味」や、からだの機能の維持に必須である「ミネラル(ナトリウムやカリウムなど)」に含まれる「塩味」を、人は本能として美味しく感じます。一方で、食べ物の腐敗を想起する「酸味」や毒につながる「苦味」は食経験を積む中で徐々に美味しいと感じられるようになります。

 味に敏感な子どもの頃に濃い味に慣れてしまうと、薄味のものを受け入れることが難しくなってしまいます。子どもは塩分を取り過ぎたからといって、すぐに高血圧や動脈硬化になることはありません。しかし、濃い味の料理はごはんが進みますし、濃い味に慣れてしまうと塩分や糖分のとり過ぎにつながるため、将来、生活習慣病になるリスクが高まることが懸念されます。また、脂質が多い食事も生活習慣病のリスクを高めます。脂質は食事にコクを出すので、うまく使えば減塩につながります。しかし、 脂質は味をまろやかにまとめ、 塩分や糖分を多く含んでいても濃いとは感じさせにくくする作用もあります。

 将来、生活習慣病になるのを予防するために、子どもの頃から薄味で、脂質は適量を使った味付けに慣れておきたいものです。

 

 家庭で薄味の調理をするには、まずはしっかりとだしをとって、うま味のある食材を使うことがおすすめです。汁物や煮物の場合は、天然のだしで家族全員分を煮て、子どもの成長段階に応じて味付け前に取り分けたり、大人分はさらに調味料を加えて煮たりします。

 タニタ食堂では、だしを使うほかに、しそやねぎ、しょうが、にんにくなどの香味野菜を使って、味にアクセントを加えるなどの工夫をしています。子どもと同じ薄めの味付けにして、大人の分は後からこういったものを添えると、塩分控えめでもおいしく食べることが可能です(詳細は本コラムの「今日から始める『おいしく減塩』」http://www.asahi.com/articles/SDI201709022801.html 参照)。

 子どもの食を通じて、家族全体の減塩や薄味が実現できるといいですね。まずは、家庭で大人が塩分をとり過ぎてないかに注意するとよいでしょう。食品中の塩分濃度がはかれる塩分計を使って一度チェックしてみると参考になるでしょう。

 

 私は自治体やPTAなどからのご依頼で、子どもを持つ親御さんを対象に食育や親の食事と子どもの食事の違いなどをテーマに講演をさせていただいています。その際に、だしをとるとよいことはわかっていても面倒という声が寄せられます。忙しいときなどは市販の顆粒(かりゅう)のだしの素やだしパックを適宜活用するのもよい方法です。これらには塩分が添加されているものも多く見られますので、塩分等の表示を確認して、加える調味料を加減する事をおすすめします。

 また、好き嫌いについての質問もよくいただきます。ピーマンなどは苦味が原因で好まない子どもも多く、どのように食べさせるかに多くの親御さんは頭を悩ませているようです。その際には濃い味付けにして無理に食べさせるよりも、子どもが比較的好むアスパラガスなどを使って、他の食材から同じ栄養を補うことが可能とお話しています。子どもの食の好みは成長とともに変わっていきますから、無理に、というよりは折を見て気軽に、食べさせてみてはいかがでしょうか。

 

 子どものことを考えて熱心になる方がいますが、あまり気負い過ぎず、親御さんが楽しく食べさせられて、子どもも楽しく食べられる食事にすることが大切です。減塩、薄味もできるところから取り組んではみてはいかがでしょうか。

 

<アピタル:タニタとつくる健康生活・コラム>

http://www.asahi.com/apital/column/tanita/(アピタル・龍口知子)

アピタル・龍口知子

アピタル・龍口知子(たつのくち・ともこ) 株式会社タニタヘルスリンク・ヒューマンサービス企画部 管理栄養士 健康運動指導士

食品会社や病院、介護関連企業での勤務を経て、タニタヘルスリンクに入社。同社のヒューマンサービス事業立ち上げ当時から健康支援プログラムやサービスの開発に携わり、現在はダイエットサポートや特定保健指導などでの企画や指導を幅広く担当する。健康セミナーでの講師も担当している。