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 保育園の春の健康診断に行ってきました。暖かくなってきたので、真冬の頃よりも園児のみんなの肌はカサカサがだいぶ良いですね。一方、蒸し暑いのにパジャマが長袖長ズボンで、じっとり汗ばんでいるのに、かき痕のある子も何人かいました。

 子どもの肌は大人に比べて薄く、肌を守る皮脂の分泌も少ないのです。気温と湿度の低い5月の朝晩はまだ乾燥しかゆくなることもあるでしょうし、急に暑くなるとあせもができます。子どものあせもは、首の後ろ部分や額、鼻周囲といった大人とは少し違う部分にできやすく、赤くブツブツします。お風呂ではせっけんで汚れや汗を洗い、その後は保湿剤を塗りましょう。

 あせもが保湿剤で悪化することはありません。汗腺から汗が出にくくなり炎症を起こすことがあせもですが、保湿剤は汗が出ることを促します。ワセリンが基剤(効能のないベースとなるもの)の軟膏(なんこう)は保湿効果が高いものの、ベタつくことを嫌がる子がいますから、これからの季節は伸びの良いクリームやサラッとしたローションタイプの保湿剤を使うといいかもしれません。

ステロイドは副作用がある?

 あせもやそれ以外の湿疹で、入浴して汚れなどを落とし朝晩2回の保湿剤を使ってもかゆみがあるならば、ステロイドが効果的です。肌の炎症を抑え、かゆみや赤みを軽減させる薬です。外来で「ステロイド」と聞くと驚いてあまり使いたくないという保護者の方がいます。「なんだか怖い薬」というイメージがあるんですね。

 ステロイドの飲み薬は確かに、成長期の子どもにとって慎重にならなくてはいけません。でも、ステロイドは50年以上前からある薬で、安全な使い方や副反応の出る使い方はもうわかっているものです。

 小児科や皮膚科で、塗り薬を指示された通りに使うのを戸惑ってしまうこともあるかもしれません。通常、医師は月齢や年齢、部位によって適切な強さのステロイドを出しています。処方してもらったけれど心配だから使わないという人もいますが、わからないことや不安なことがあれば、処方した医師や薬をもらう際に薬剤師に質問してみましょう。

 ステロイドにはとてもデマが多く、「使っているとどんどん強い薬にしないと効かなくなる」とか、「体にたまってデトックスが必要になる」、「ステロイドは毒だ」というものまであります。こうした説を掲げ、「脱ステロイド」をめざす人たちもいます。

 ステロイドはどんどん強い薬にする必要はなく、むしろゆっくり塗る頻度を減らしていくことにより、肌の様子で塗ったり塗らなかったりするよりはトータルとして塗る量を減らすことができます。用法用量をよく聞いておきましょう。

 体に薬がたまってしまうということもありません。たまってとどまっていてくれるなら1度塗っただけでずっと効いていてくれるはずですが、残念ながら塗り薬は落ちてしまったり浸透する量が少なすぎたりして、塗り直さないといけません。

 私達の皮膚は下から皮下組織、真皮、表皮からできていますが、外側である表皮の厚さは0.2mm、その中でも一番表にある角質層は10−20μm(1μmは1ミリの1000分の1)です。化粧品などのCMで「肌にしみわたる」などと言いますが、その角質層にしみる程度でそれより深いところまでは入りません。

 また、薬にはもちろん、いい面と悪い面があります。人が生きていくのに必須な水や塩でさえ、とりすぎると死亡することがあります。ステロイドが毒だというのは言いすぎです。

「保湿力が育たない」?

 「脱保湿」がいいとする人もいます。「保湿剤を塗ると自分で保湿する力が育たなない」という説によるものですが、これも正しくありません。保湿剤を塗ると角質層の水分量は増えるものの、自分で保湿する機能を破壊するような機能は軟膏にもクリームにもローションにもありません。

 乾燥した皮膚のまま「保湿力が育つまで」と放置していると、角質層の中の水分はさらに逃げ出して乾燥が進み、バリアー機能は低下します。かゆみを感じる知覚神経が肌の表面近くまで伸びてきてかゆみをより感じやすくなり、肌に異物が接触することによりアトピー性皮膚炎を発症しやすくなります。(抱っこやスキンケア、変わる子育ての常識 https://www.asahi.com/articles/ASL3J5177L3JUBQU010.html

 つまり、子どもは清潔にしたあと保湿をし、ステロイドを適切に使うべきです。むやみにステロイドや保湿剤を避けるとかゆみがひどくなり長引くだけでなく、アレルギーの原因になることもあります。

 処方する医師や医師の指示通り塗布する保護者のことをステロイド・保湿剤推進派と呼ぶ人がいますが、それも正しくありません。推進派と反対派がいて拮抗(きっこう)しているわけではなく、がん治療やワクチンのように標準治療(科学的な根拠のある治療法)をする人と感覚的に避ける人がいるだけです。必要なときにステロイドや保湿剤を塗るのは、とても大切で、最善の治療方法です。

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/

(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。