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 事業者の責任で、科学的根拠に基づいた食品の効き目を表示できる――。2015年にスタートした機能性表示食品制度ですが、「経済成長ありきで消費者が守られないのでは」という懸念の声もありました。3年が経ち、届け出製品も1300を超えています。機能性表示食品制度についていま一度、整理してみましょう。

◯×クイズ:機能性表示食品には生鮮食品も含まれる
(※答えは、本文中にあります)

▼機能性表示食品制度では、臨床試験を実施しなくても食品の機能性表示が可能となった

▼過去の論文などの報告をとりまとめて再評価する「研究レビュー」が科学的根拠として新たに位置付けられた

▼その結果、中小企業でも食品の機能性表示のチャンスが広がった

 食品の機能性(効き目)が表示できるのは、2015年より前は「特定保健用食品(トクホ)」と「栄養機能食品」のみでした。

 トクホでは、表示の許可を得るために、最も信頼性の高い研究「ランダム化比較試験(RCT)」で有効性が立証されなければなりません。しかし、この試験には多額の費用がかかります。例えば、血圧やコレステロールの試験には数千万円が必要とされています。その結果、トクホを申請できる企業は大企業ばかりで、中小企業には手の届かないような制度になっているとの指摘もありました。

 栄養機能食品では、定められた量のビタミン、ミネラルなどの栄養成分が含まれてさえいれば効き目の表示はできますが、その表示はそれぞれの栄養成分に応じたものしか認められておらず、さまざまな制約があります。

 そのため、内閣府の規制改革会議では、新たに「機能性表示を可能とする仕組みの整備」が議題に上がるようになってきました。

機能性表示食品制度による科学的根拠の位置付け

 そして、さまざまな議論を経ながら、2015年から保健機能食品に「機能性表示食品」が新たに登場しました。

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 機能性表示食品制度では、トクホとは異なり新たな仕組みや考え方が取り入れられています。

 ひとつ目は、表示をするための手続きの簡便化です。トクホでは消費者庁が事前に審査し許可されてから製造・販売が可能となっていました。しかし、機能性表示食品では消費者庁に資料を届け出さえすれば製造・販売が可能になりました。

 ふたつ目は、表示をするための科学的根拠の位置づけの考え方です。トクホでは原則として最終製品を用いたRCTにて有効性を立証しなければなりません。ですが、機能性表示食品制度では、まず食品を「サプリメント」「加工食品」「生鮮食品」の三つのカテゴリーに分類したうえで、機能性を表示するための科学的根拠として、以下の条件を定めています。

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トクホとの大きな違いは…

 機能性表示食品制度では、新たに、過去の論文などの報告を網羅的に検索して再評価する「研究レビュー」という方法も、科学的根拠として認められた点に注目してください。

 もちろん、トクホと同じように最終製品を使ったRCTを行ってもかまいません。

 ただ、「研究レビュー」を科学的根拠とする場合は、新しくRCTを行う必要がありません。

 最終製品や含まれている成分に関係する、これまでに行われたRCTの論文を使って機能性を検討してもいいのです。このRCTは自社で実施したものではなくても可能です。

 海外で行われた論文を引用しているケースもあります。ただ、その場合は、日本人との比較について研究レビューで考察する必要はあります。

 また、加工食品・生鮮食品の場合は、コホート研究のレビューのみでも可能となります。

 生鮮食品の機能性表示食品と聞いて驚いた人もいるかも知れません。この原稿を執筆している2018年5月29日現在、生鮮食品に分類される機能性表示食品は15製品あります。みかん、りんご、もやし、米のほか、めずらしいところではカンパチも届け出されています。

 「機能性表示食品には生鮮食品も含まれる」というクイズの答えは「◯」になります。

クイズの答え:生鮮食品でも届け出が受理されている

 そして、研究レビューの結果を、所定の様式に従って記載し消費者庁に届け出をして受理されれば、めでたく機能性表示食品として販売することができるわけです。

 ここで、機能性表示食品とトクホの違いを整理してみます。

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 機能性表示食品では国の審査や許可は不要です。そのかわり、責任の所在は、各事業者にあることになります。

 機能性表示食品制度で新たに取り入れられた研究レビューでは、事業者自らが臨床試験を実施する必要はありませんから、費用の面では大変メリットのある仕組みです。つまり、中小企業にもチャンスが開かれたわけです。

 しかし、その一方で、機能性表示食品制度は、経済成長ありきで消費者保護を無視した規制緩和政策ではないかと懸念する声もあがりました。

 次回は、この制度の成り立ちをふまえ、規制緩和政策なのかについて考えてみましょう。

<アピタル:これって効きますか?・健康食品、どう向き合う?>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/kiku(アピタル・大野智)

アピタル・大野智

アピタル・大野智(おおの・さとし) 島根大学・教授

島根大学医学部附属病院臨床研究センター・教授。1971年浜松市生まれ。98年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。同大学第二外科(消化器外科)入局。補完代替医療や健康食品に詳しく、厚生労働省「『統合医療』情報発信サイト」の作成に取り組むほか、内閣府消費者委員会専門委員(特定保健用食品の審査)も務める。