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 住み慣れた自宅で過ごしたいと望む人やその家族にとって、訪問看護や訪問介護は大きな助けになります。しかし、訪問サービスのスタッフの多くが、利用者やその家族から暴力や暴言、ハラスメントなどを受けたと感じているという調査結果が、最近相次いで公表されたと報じられました。

 訪問看護ステーション事業者の団体「全国訪問看護事業協会」が全国調査をした結果では、回答者の約半数が訪問先で心身の暴力やセクハラを受けた経験があると回答しました。その内容は「精神的な暴力」が約53%、「身体的な暴力」が約45%、「セクハラ」が約48%で、過去1年間ではいずれも3割前後が経験していました。精神的な暴力では「大声で怒鳴られた」「能力がないと言われ、傷ついた」「脅された」などがあがりました。

 また介護職員の労働組合「日本介護クラフトユニオン」からは、介護現場で働く人の7割が利用者やその家族からパワハラや暴力の被害を受けた経験があるという調査結果が公表されました。内容は「攻撃的に大声を出す」61%、「契約していないサービスの強要」34%、「身体的な暴力」22%、「バカなどの暴言」22%などです。

 こうした結果をみると危機感を持つかもしれませんが、何十人何百人という人をケアするなかで1回でもこうした経験があると答えた数字ですから、利用者の大半が危険なわけではなく、悪質なケースはほんの一部でしょう。家族にとって、訪問サービスのスタッフは在宅生活を支える専門職として頼りになる存在であることは変わりありません。それなのになぜ、スタッフに対して攻撃的になってしまうことがあるのでしょうか。

 在宅のサービスを受ける立場として、こうした事例の当事者とならないための心得を考えてみましょう。

 

 訪問サービスの舞台となる「自宅」は、利用者や家族にとっては慣れた場所でも、外から来た人にとってはわからないところもあります。もたつくスタッフに「手ぎわが悪い」と感じることもあるかもしれません。家のものに勝手に触れられたり、今までのやり方と違う方法を指示されたりすると受け入れがたいこともあります。あるいは、「これくらいは当然やってもらえるだろう」と思って頼んだことが契約内容を超えていたということもあるかもしれません。

 利用者や家族のほうは、こうしたときについ出てしまったスタッフに対する発言が、暴言と受け止められているという自覚は無いと考えられます。でも、意図的でなくても相手を傷つけてしまう場合があるということを意識しておく必要があります。

 ▼介護されている人をいつの間にか傷つけていませんか(https://www.asahi.com/articles/SDI201806100233.html

 

 また、訪問サービスを利用している人の多くは、サービスを受けることは生活を維持していくために不可欠で、多少の行き違いがあったとしても、がまんしてしまいがちです。スタッフから見れば当たり前の注意でも、利用者や家族にとっては初めてのことで実践しづらいこともあります。スタッフから厳しく言われたり、乱暴な対応されたりして、利用者や家族のほうが傷ついているという場合もあるでしょう。こうしたがまんが積もって、暴言として表に出てしまうという危険性もあります。

 

 こちらにとっては当然と思うことでも、相手にとってそうとは限りません。大切なのは「お互いに確認してみる」ことです。

 スタッフから、「これを動かしてもいいですか」「触れて欲しくない場所はありますか」などの確認があれば、スムーズかもしれませんが、それは利用者や家族から伝えることも大切です。ちょっとした声かけや相手への配慮で行き違いを減らせるかもしれません。また、伝えなければ相手に気づいてもらえないことも多いものです。不満に感じていることを率直に伝えてみることで、心の負担がかるくなるかもしれません。

 気持ち良く支援を受けられるためにひと工夫してみましょう。

 

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◆編集部から

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http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 精神看護専門看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。