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 このコラムでアンガーマネジメントを学んでいた、ヨウコさんを覚えていますか?

 ヨウコさんは、内科病棟で働くベテラン看護師です。病棟ではリーダーの役割を担い、後輩を育成し、仕事は忙しいのですが看護師として働くことに充実感を持って働いています。

 しかし、ヨウコさんは最近少し疲れているようです。それが仕事にも影響して、ささいなことにイライラしがちです。どうやら原因は家族のことにあるようです。(ヨウコさんは架空の人物です)

 ヨウコさんについては、こちらをご覧ください。

 ▽家族にイライラして語気が強くなってしまうのはなぜ

 https://www.asahi.com/articles/SDI201803165067.html

 

 ヨウコさんの家から1時間ほどのところに高齢の両親が住んでいます。数カ月前にお父さんが倒れて入院しました。そしてこのたび自宅への退院が決まりました。しかし、お父さんは入院前のように動くことができず、ひとりで身の回りのことができそうにありません。

 高齢の母に父の介護を任せるのは、負担が大きい。とはいえ、自分には仕事があるし、両親の世話をするのにも限界がある。

 ヨウコさんは、悩んでいました。仕事の合間に介護認定の手続きをしたり、退院に向けて自宅の受け入れ準備を整えたり、ヨウコさんもお母さんもわからないことばかり。それなのに、何でもヨウコさんに聞いてくるお母さんに、つい「そんなこと私にも分からないわよ!」と、喧嘩(けんか)になってしまうこともありました。

 

 疲労が溜まっていたり悩みがあったりするとイライラしやすくなります。またイライラしていると物事がうまくいかずストレスが増えます。

 怒りは誰もがもっている感情ですから、怒ること自体は否定しません。とはいえ、怒ることか怒らなくてもよいことかを適切に判断する必要があります。怒るほどでもないような些細なことに怒ってもエネルギーを無駄に消費するだけですし、怒っても何も解決しないことに対して怒っても徒労に終わるだけです。

 

 ヨウコさんは、突然父親の介護という問題に直面し、不安や慣れない対応に疲労が溜まり、イライラしやすくなっています。しかし、それで母親と喧嘩しても、事態は好転しません。不要な怒りに振り回されないために「怒っても変わらない現実は受け入れる」という選択肢があることを念頭に置いておきましょう。怒ったところで状況が変わらないのならば、腹をくくって目の前の課題に取り組んでいくほかにないのです。

 ▽老いた親の言動にカッときたときの気分転換のコツ

 https://www.asahi.com/articles/SDI201804287807.html

 ▽イライラを断捨離する基準を持とう

 https://www.asahi.com/articles/SDI201712118883.html

 

 介護する人の心身の健康を保つためには、人に頼ることも大切です。両親からみれば娘のヨウコさんが医療の知識や介助のスキルをもつ看護師であることは、頼りになります。しかし、看護師のなかには介護や福祉などの地域の社会資源に関わりの深い看護師もいればそうでない看護師もいます。また、家族の背景や住んでいる地域によっても状況が異なります。

 皆さんの住んでいる地域には、こうした介護サービスの利用に関することやその他地域における社会資源の利用などについて相談できる場所があります。おおよそ人口2~3万人、中学校区に1カ所程度のエリアごとに地域包括支援センターが設置されています。

 地域包括支援センターは、ケアマネジャーや医療機関の主治医など、介護に関わる人たちの連携を支援したり、包括的・継続的なケアマネジメントが提供されるように支援を行ったりするほか、介護などのケアが必要になる前から、介護予防の相談を受け付けたりする中核的な機関です。介護が必要になったり、介護をしていて困ったりした時に、相談にのってくれる場所でもあります。

 

 介護に行き詰まってからでは、冷静な判断ができなくなり、相談を受けるということすら思いつかない場合もあります。できることなら早い段階で、皆さんのお住まいの地域の地域包括支援センターや相談機関とのつながりを作っておくことも大切です。直接的な相談がなくても、どこに相談できる機関があるのかを知っておくだけでも、いざというときの備えになるのではないでしょうか。

 

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◆編集部から

<田辺有理子さんの本が出版されました>

 タイトルは「イライラと賢くつきあい活気ある職場をつくる 介護リーダーのためのアンガーマネジメント活用法」(第一法規、2160円)です。(詳しくはアマゾン:https://goo.gl/sxK6md別ウインドウで開きます

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。