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 ベテラン看護師のヨウコさんは、最近、突然父親の介護という問題に直面し、不安や慣れない対応に追われて疲れています。(ヨウコさんは架空の人物です)

 「父の介護を高齢の母に頼るのは申し訳ないし、自分の親なのだから自分が頑張らなければ」と思う一方で、いまの仕事にやりがいがあり「職場の期待に応えたい」という思いや、「職場に迷惑をかけしまうのではないか」という思いが巡っていました。

 しかし親の介護は、時間を待ってはくれません。ヨウコさんは、いずれは介護のために退職しなくてはならないのだろうかと考え始めていました。

 総務省の2017年の就業構造基本調査では、家族の介護や看護のために仕事を辞める「介護離職」が年間9万9100人に上ると報告されました。政府も「介護離職ゼロ」の方針を掲げて施設整備などが進められていますが、前回2012年調査の10万1100人からほとんど減っておらず深刻な状況が続いています。

 ▼介護離職、年9万9千人 働きながら介護は300万人(https://www.asahi.com/articles/ASL7F7TKYL7FUBQU01G.html

 

 とはいえ、「介護離職」という言葉を聞いたことがあっても、ある日突然現実として突きつけられると、その選択を受け入れるのは容易ではありません。

 前回のコラムでは、お父さんの退院準備や不安の強いお母さんとのやりとりにイライラしてしまうヨウコさんの事例を通して、怒っても変わらない現実は受け入れる、腹をくくって目の前の課題に取り組んでいくという話をしました。

 

 今回は、困難に直面した状況を乗り越えるポイントをもうひとつお伝えします。どのような選択をするにしても、最後は自分で決めるということです。私たちは、自分の行動を全て自分で選択しています。感情や思考も同じで、ほかの誰かに操られるのではなく、自分で主体的に選択しているのです。

 「こうするほかに方法がなかった」「ケアマネジャーに言われて仕方なく」など、何かを選択する際に、自分は納得していなかったという思いのまま進んでいくと、後々のサービスに不満が出やすくなりますし、周囲に怒りが向いてしまうかもしれません。しかし、最終的には自分の言動には自分で責任を負わなくてはなりません。そのためには、自分でよく調べて、考えて相談して、ひとつひとつ納得して決めていくことが大切です。

 

 自分で選択するためには、情報を得て相談できる場を知っておくことが有効です。

 その一つとして、前回は地域包括支援センターを紹介しました。介護サービスの利用に関する相談や地域における社会資源の利用などについて相談できます。

 会社などに勤めながら介護をしている人は、約300万人にのぼります。このうち3割近くの人は、週6日以上とほぼ毎日、介護をしているのだそうです。離職を決める前に職場や相談機関に相談し、個々の状況に応じて方法を探ることで、仕事と介護を両立できるかもしれません。

 介護保険によるサービス利用のほかに、仕事との両立を支援する制度として、育児・介護休業法で定められている制度や、会社独自で支援制度を設けている場合もありますから人事労務担当者に確認してみると何かヒントが得られるかもしれません。

 あるいは職場の理解を得られず介護に関する配慮が認められないときは、各都道府県労働局には介護離職せずに仕事と介護を両立するための相談窓口がありますから利用してみると良いでしょう。仕事と介護の両立については、厚生労働省の「仕事と介護の両立支援」などのWebサイトからも情報を得ることができます。

 介護にかかる経済的な負担を軽くする制度についても、知っておくことが必要です。例えば介護保険制度では、要介護度に応じて給付を受けることができます。介護休業制度の要件を満たせば、休業中に給付を受けとることもできます。インターネットなどで調べればさまざまな情報が手に入りますし、相談窓口で尋ねてみてもよいでしょう。

 

 気持ちに余裕がないときは、「こうする以外に方法がない」と思いがちです。でも、だいたいの場合、選択肢はひとつではありません。自分で選ぶことができますし、周りにはあなたを助けてくれる人がいます。

 

▽参考資料

厚生労働省:仕事と介護の両立支援

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html別ウインドウで開きます

厚生労働省:平成29年度仕事と介護の両立支援事業(2018年3月)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/29_gaiyoban_all.pdf別ウインドウで開きます

 

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◆編集部から

<田辺有理子さんの新しい本が出版されました>

 タイトルは『ナースのためのアンガーマネジメント 怒りに支配されない自分をつくる7つの視点』(メヂカルフレンド社)です。(詳しくは https://www.medical-friend.co.jp/biblioDetail.php?b_id=1100別ウインドウで開きます

 

<過去の著作もご参照ください>

『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規)(https://www.chuohoki.jp/ebooks/commodity_param/ctc/+/shc/0/cmc/5397/別ウインドウで開きます

『イライラと賢くつきあい活気ある職場をつくる 介護リーダーのためのアンガーマネジメント活用法』(第一法規)(http://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/103014.html別ウインドウで開きます

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 精神看護専門看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。