シリーズ:トピック
スマートミール認証始まる 健康な外食・中食の条件とは
毎日、外食や弁当を買って食べているという人も多い現代。栄養バランスのとれた食事を、禁煙など健康的な環境で食べられるよう、条件の整った店を認証する「スマートミール制度」がスタートしました。
8月23日に第1回の審査結果が発表され、認証を得たのは、68件、約16800店。外食、中食、給食(学校や企業などの食堂)の3部門があり、個人経営の店から大手チェーン、学食、社員食堂と幅広く、全国で約1万6千店を展開するファミリーマートが中食部門で認証を得たので、店舗数が多くなっています。
制度の正式名称は、「健康な食事・食環境」認証制度。日本栄養改善学会、日本高血圧学会など10学協会でつくるコンソーシアムが審査・認証を行います。
スマートミールと名付けられた健康な食事の基本は、「主食+主菜+副菜」か「主食+副食(主菜、副菜)」であること。ご飯、麺類、パンといった主食抜きでは成り立ちません。
基準は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2015」などを基本に組み立てられており、「ちゃんと」と「しっかり」の二つがあります。「ちゃんと」は、一般女性や中高年男性で生活習慣病予防に取り組みたい人向け。「しっかり」は一般男性や身体活動量の多い女性で生活習慣病予防に取り組みたい人向けです。
基準に合った食事を提供するほかに、店内が禁煙であること、管理栄養士・栄養士がスマートミール作成・確認に関わっていること、情報をわかりやすく示していること、説明できる人がいること、などが、クリアしなければならない必須項目とされています。
またオプション項目として、「週3回以上、精製度の低い穀物を含む主食を提供」「野菜70グラム以上のメニューを提供」「卓上に調味料を置いていない」など18の条件があり、5項目以上満たすと二つ星、10項目以上満たすと三つ星が得られます(オプションなしで必須項目をクリアした店は一つ星)。
定食チェーン「大戸屋」は、外食部門で二つ星を獲得しました。対象となったのは「四元豚とたっぷり野菜の蒸し鍋定食」(税込み890円)。豚肉と野菜を土鍋に入れて昆布だしで蒸し、めんつゆにつけて食べます。ご飯は大麦、黒米などが入った五穀ご飯。ご飯が普通盛りだと528キロカロリー、食塩相当量2.7グラムで「ちゃんと」基準、大盛りだと695キロカロリー、食塩相当量2.9グラムで「しっかり」基準を満たします。白菜、カボチャ、レンコン、水菜など多種類入っており、野菜量は約300グラムとたっぷり。担当者は「野菜の味をしっかり味わっていただけるよう、少量の昆布だしで蒸しており、削りたての本枯節を添えて、うまみと香りで、物足りなさを感じない工夫をしている」と言います。
スマートミールのために特別に開発したわけではなく、既存のメニューで、「企業として栄養バランスのとれた食事を提供していることを、より分かりやすくお客様に伝えるために、認証に応募した」とのこと。店の献立表には、他のメニューにも、エネルギー量や食塩相当量、使用食材を食品群別に色分けしたグラフが添えられてあるのが目を引きました。
また持ち帰り弁当も展開しており、中食部門では「鶏むね肉と野菜の香辛だれ弁当」(税込み790円、712キロカロリー、食塩相当量3.3グラム)が、「しっかり」基準で認証を得ました。
このほか大手チェーンでは、モスバーガーが首都圏の14店舗限定で提供する「バランスセット」(税込み980円、527キロカロリー、食塩相当量2.7グラム)で二つ星。モスバーガー、こだわり野菜のサラダL(和風ドレッシング・減塩タイプ)、アイスウーロン茶、白玉あずき(玄米フレーク入り)の4品を組み合わせています。
ファミリーマートは「炙り焼 鮭幕の内弁当」(税込み850円、672キロカロリー、食塩相当量2.6グラム)で三つ星の認証を得ました。予約制で、3日前までの注文が必要です。
給食部門の認証は34件と、3部門中最多でした。キユーピー、アサヒグループホールティングス、日本生命保険相互会社東京本部など、企業の社員食堂が目立ちます。健康経営の視点から、社員の食生活改善に取り組もうとする企業の応募が多かったようです。マスコミでは、長崎放送が一つ星を獲得していました。この認証制度、応募や審査は無料だし、朝日新聞社でも取り組まないかなあ……。
日本栄養改善学会理事長の武見ゆかり・女子栄養大教授は「大手の企業と併せ、個人でがんばっている店が認証をとっていることもありがたい」と話します。管理栄養士・栄養士が携わることが必須項目となっているため、応募しようとした店を、地元自治体の専門職がサポートした事例もあったそうです。認証を広げていくための今後の課題の一つとして、こうした専門家による個別店へのサポート態勢の整備を挙げていました。
食事はある程度幅があり、毎日3食、いつも栄養が整った食事をしなくてはダメという性質のものではないと思いますが、こうした形で、健康的な食事のパターンを体験できる機会が増えることは意味のあることだと感じます。
サイトには、認証事業者の一覧が掲載されています(※1)。認証を得た店に行くと、どれが対象のメニュー・商品かは分かるようになっているとのこと。スマートミールの認証マークも近々発表される予定です。ロゴやマークを見つけたら、健康な食事がどんなものか、味わってみてください。
<関連リンク>
※1 スマートミール「健康な食事・食環境」認証制度のサイト
http://smartmeal.jp/index.html
<アピタル:食のおしゃべり・トピック>
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- 大村美香(おおむら・みか)朝日新聞記者
- 1991年4月朝日新聞社に入り、盛岡、千葉総局を経て96年4月に東京本社学芸部(家庭面担当、現在の生活面にあたる)。組織変更で所属部の名称がその後何回か変わるが、主に食の分野を取材。10年4月から16年4月まで編集委員(食・農担当)。共著に「あした何を食べますか?」(03年・朝日新聞社刊)