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 みなさん、健康食品には、効果を期待して利用しますよね。効果が立証されたものとして特定保健用食品(トクホ)などの保健機能食品があることを紹介してきました。ですが、たくさん摂取すれば、より多くの効果が得られると誤解している人はいないでしょうか? 今回は、健康食品の過剰な摂取リスクについて考えてみたいと思います。

◯×クイズ:ビタミンEのサプリメントを大量摂取すると死亡リスクが増える可能性がある
(答えは、本文中にあります)

▼保健機能食品(トクホ等)には、1日当たりの摂取量や摂取の方法が表示されている

▼効果(機能性)は、表示されている量を摂取することで得られることが期待される

▼過剰な摂取が健康に害を及ぼす場合もある

 健康食品に効果があることを立証するためには、臨床試験で証明する必要があります。特に重要なのが「ランダム化比較試験」です。対象者をランダムに二つのグループに分けて、一方には評価しようとしている治療、もう片方には異なる治療を行い、一定期間後に効果を比較検討する臨床試験の方法です。

 トクホや機能性表示食品の場合は、販売を計画している製品を摂取する「介入群」、効き目を表示したい成分が含まれていない「プラセボ食品(機能を発揮する成分は含まれていないが見た目や味は同じ食品)」を摂取する「対照群」に分けます。

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 では、ランダム化比較試験で効果が証明されたトクホを、1日の摂取目安量の2倍摂取すれば効果も2倍になるのでしょうか? 臨床試験の結果の意味と、過剰摂取のリスクについて考えてみたいと思います。

ランダム化比較試験の結果が意味すること

 ランダム化比較試験によって効果が立証された場合の結果の解釈には注意が必要です。

 トクホや機能性表示食品の効果を検証したランダム化比較試験の結果を、グラフにしてみたものがこちらです(特定の製品のデータではなく、筆者が作成したものです)。

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 このグラフの結果を、医療情報を理解するときに使われる「PICO(ピコ)」を用いて整理してみます。PICOとは「P(Participants:誰に)」「I(Intervention:何をすると)」「C(Comparison:何と比較して)」「O(Outcome:どうなるか)」のことです。

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 ぜひ覚えておいてほしいのは、ランダム化比較試験の結果は、「同じ条件の対象者が、同じ条件で試験食品を利用した時、同じ結果が得られる可能性がある」ことを意味します。

 示された効果を得ることを期待するには、臨床試験と同じように毎日決められた量を決められた期間摂取する必要があります。大量に摂取すれば効果が大きくなる、または一回摂取すれば効果が得られる、という効果が証明されたわけではありません。

過剰摂取のリスクについて考える

 過剰摂取のリスクについて、医薬品の効果と副作用の関係を例に挙げて考えてみたいと思います。

 薬の量と作用の関係を調べてみると、薬の量を「0(ゼロ)」から徐々に増やしていっても作用は現れず、ある量から効果が用量に比例して現れ、そして再び徐々に効果が頭打ちになってきます。グラフにすると緩やかなS字カーブを描く形になります。

 忘れてはいけないのは、薬の量を増やしていくと必ず副作用も現れてくることです。こちらも同様に緩やかなS字カーブを描きます。

 薬を安全かつ効果的に使うためには、効果が十分に発揮され、副作用は最小限に抑えられている状態の投与量を、臨床試験の結果を踏まえて決めていきます。これが薬の治療域となります。

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 つまり、「薬の量を増やし続けても、効果はどこかで頭打ちになる」「薬の量が増えれば副作用が現れるリスクが高くなる」のです。

 そして、これは、健康食品やサプリメントでも同様です。例えば、抗酸化作用で有名なビタミンEについて、サプリメントとして大量(推奨摂取量の20~30倍)に摂取する臨床試験を実施した結果、予想に反して死亡リスクが増えることも報告されています(※1)。

 ですから、クイズの答えは「◯」になります。

クイズの答え:ビタミンEのサプリメントを大量摂取すると死亡リスクが増える可能性がある

目を引くキャッチコピーには注意が必要

 「レモン50個分のビタミンC」「しじみ300個分のオルニチン」「ワイン10杯分のレスベラトール」「トマト20個分のリコピン」。

 こんなキャッチコピーをみたことはないでしょうか。

 体に良いとされる食品でも、大量に食べれば、お腹が痛くなったり下痢をしたりすることがあることは、皆さんも想像がつくかと思います。体にとって必要な水でさえ、一気に大量に飲めば水中毒という死に至りうる状態になります。

 健康食品の場合、原材料となった食品は普段食べているものでも、ある成分だけを濃縮したり抽出したりして製品化されています。そして、「たった一粒で、βカロチンがニンジン3本分!」と宣伝されている製品がカプセルや錠剤であった場合、一度に大量に摂取することができてしまいますので、ニンジンに換算すると数十本分相当を摂取できてしまいます。

 そこで、考えていただきたいのですが、普段、ニンジン30本を一度に食べることはあるでしょうか? 恐らくないと思います。もし、無理に食べたとしたら、腹痛や下痢に襲われたりして体調を崩してしまうでしょう。

 ですから、原材料となっている食品が馴染みのあるものでも、それから作られた健康食品は全く別の食品であるぐらいの感覚が必要になってくると個人的には考えます。

 健康食品の「食品」という単語には、「食べるもの=そんなに危険なものではない」といった安心感があるかもしれません。また、病気で治療中の患者さんの中には、「医薬品=化学物質で副作用のある危険なもの、健康食品=食品は天然・自然のものだから副作用がなく、どれだけ摂取しても大丈夫」といった誤解を抱いていることもあります。

 ですが、食品が天然・自然のものだからといって、それは安全であることを意味しているわけではありません。

 健康食品に効果があるとするならば、摂取量を間違えれば副作用もあるということを意味していると肝に銘じてもらえたらと思います。

【参考資料】

1)厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』

「統合医療」情報発信サイト:「ビタミンE」

http://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/18.html別ウインドウで開きます(アピタル・大野智)

アピタル・大野智

アピタル・大野智(おおの・さとし) 島根大学・教授

島根大学医学部附属病院臨床研究センター・教授。1971年浜松市生まれ。98年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。同大学第二外科(消化器外科)入局。補完代替医療や健康食品に詳しく、厚生労働省「『統合医療』情報発信サイト」の作成に取り組むほか、内閣府消費者委員会専門委員(特定保健用食品の審査)も務める。