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 健康食品やサプリメントの機能性(効き目)を表示する制度が整備されてきましたが、いまだに広告に関する法律違反、購入でのトラブル、健康被害などがあとを絶ちません。健康食品の機能性表示制度が健全に運用されていくためには、どのような課題や問題があるのか考えてみたいと思います。

◯×クイズ: 健康食品では、健康被害よりも契約トラブルなど経済被害の報告が多い
(※答えは、本文中にあります)

▼食品の機能性を表示できるのは保健機能食品(トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品)のみ

▼製品パッケージへの表示や宣伝広告の表現に関する法律違反があとを絶たない

▼健康食品については、健康被害のほかに購入時の契約トラブルにも注意が必要

 まず、食品の機能性を表示できるのはどの食品だったか覚えていますか?

 そもそも機能性は、次の三つに分かれます(※1)。

栄養機能:食品の持つ栄養面での働き

感覚機能:嗜好(しこう)、感覚面での働き

生体調節機能:生体調節による健康の維持・増進面での働き

 機能性表示制度で表示できるのは、三つ目の健康の維持・増進面での働きです。

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 この図で整理した通り、日本の法律上では、食品のうち機能性を表示できるのは、特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品の保健機能食品だけです。制度としては、それぞれ1991年、2001年、2015年に始まりました。

宣伝・広告の法律違反 行き過ぎた表現も

 「健康食品でがんが治る!」「SNSで話題のバストアップサプリ!」「運動・食事制限不要!これ一粒で究極のダイエット」……など、健康食品の宣伝・広告においても法律違反があとを絶ちません。

 最近では、「肥満効果」を目的に、「女性らしい美ボディーに! 健康的にふっくらしたい」などとウェブサイトに掲載していたとして景品表示法違反で措置命令が出された変わった事例もありました(※2)。さらには、機能性表示食品として届け出をしていた食品でも、宣伝広告の表現に行き過ぎがあり、景品表示法に基づく措置命令が出された事例もありました(※3)。

 製品パッケージへの表示や宣伝・広告の表現は、さまざまな法律で規制されていることを、健康食品を製造販売する企業はいま一度肝に銘じてほしいと切に願います。

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購入トラブル、健康被害も

 そのほか、健康食品を購入したり使ったりするときに、契約トラブルや健康被害があることも忘れてはなりません。

 国民生活センターが運営している「消費生活相談データベース(PIO-NET)」(http://datafile.kokusen.go.jp/別ウインドウで開きます)や消費者庁と国民生活センターが連携して作成している「事故情報データバンクシステム」(http://www.jikojoho.go.jp/ai_national/別ウインドウで開きます)をご存じでしょうか。

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 この「PIO-NET」と「事故情報データバンクシステム」で「健康食品」の事故情報を調べてみると、この原稿を執筆している時点(2018.9.27)で、それぞれ15万7932件(2013-2014年;63283件、2015-2018年;94649件)、8623件の情報がヒットします。

 実は、健康食品による事故情報は、健康被害といった直接的な被害よりも、購入時の契約トラブルなど経済的な被害が多くなっています。「PIO-NET」のデータでは約8割が経済的被害でした。

 ですので、「健康食品では、健康被害よりも契約トラブルなど経済被害の報告が多い」というクイズの答えは「◯」になります。

クイズの答え:健康食品では、健康被害よりも契約トラブルなど経済被害の報告が多い

健康食品を取り巻く課題や社会背景

 では、消費者が健康の維持・増進のために、正確な情報のもと、自らの意思で購入するかどうかを判断するインフォームド・チョイスを進めていくためには、どのような課題や問題点があるのでしょうか。また、その裏にある社会背景についても考えてみます。

(1)行政、一元的な取りまとめが困難

 健康食品を含め食品を管轄する行政機関は、農林水産省、厚生労働省、消費者庁をはじめ、都道府県や市町村の担当部局など多くの組織に分散してしまっています。そのため、健康食品の機能性表示を一元的に取りまとめるのが困難な現状があります。

 ですが、先ほど紹介したデータベース「事故情報データバンクシステム」のように、消費者庁と国民生活センターの連携など、とりまとめの動きは徐々に始まっています。

(2)学術界のセクション化

 健康や病気といった「ヒト」を対象とした研究・教育は医学部。食品や調理といった「モノ」を対象とした研究・教育は農学部や栄養学部……。という具合に、学術界がセクション化しています。

 また、健康食品を含めて食品の機能性を評価するためには、栄養の体への影響を疫学の手法で研究する「栄養疫学」の知識が不可欠です。それにもかかわらず、栄養疫学を専門としている研究者の数は諸外国に比べて少ない現状があります。

(3)産業界、問題意識に温度差

 健康食品の製造・販売に関わる企業は数多く存在しますが、企業によって「機能性表示」に対するビジョンや問題意識に温度差があります。業界全体でのコンセンサスを得るのが難しいのです。また、一部とはいえ、いわゆる悪徳業者が存在する事実も無視できません。

(4)メディア・広告、誤解を招く表現

 健康は万人に関心があるため、テレビといったマスメディアでは健康・医療番組が目白押しです。かつて、放送内容に虚偽・捏造(ねつぞう)があり番組が打ち切りになった事例もありました。最近でも、誤解を招くような表現や行き過ぎた表現などによって、番組内で訂正や謝罪を余儀なくされたこともありました。

 また、新聞や雑誌などの広告欄をみてみると、「◯◯で病気が治った!」などといった誇大な表現が散見されます。表現の自由があるとはいえ、一定の規制を設ける必要があるかもしれません。

(5)消費者の情報リテラシー不十分

 「健康食品の機能性が臨床試験で証明された」といっても、100%効果があるわけではありません。また、健康食品の必要性は、個人個人の通常の食事や健康状態などによって異なってきます。ですから、「効く」という情報も、消費者は無批判に受け取るのではなく、批判的に吟味する取捨選択(情報リテラシー)が求められますが、その教育は十分に行われているとは言えません。

 いろいろと問題点ばかりを指摘してきましたが、解決策はないのでしょうか?

 次回は、健康食品の問題点を解決するための取り組みを紹介したいと思います。

[参考資料・補足]

1)1980年代に文部省(当時)がおこなった研究「食品機能の系統的解析と展開(文部省特定研究:1984-1986年)」「食品の生体調節機能の解析(文部省重点領域研究:1988-1990年)」で、食品の機能が三つに整理されました

2)消費者庁:株式会社Life Leafに対する景品表示法に基づく措置命令について(平成30年7月25日)

http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180725_0001.pdf別ウインドウで開きます

3)葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品の販売事業者16社に対する景品表示法に基づく措置命令について(平成29年11月7日)

http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0001.pdf別ウインドウで開きます

<アピタル:これって効きますか?・健康食品、どう向き合う?>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/kiku(アピタル・大野智)

アピタル・大野智

アピタル・大野智(おおの・さとし) 島根大学・教授

島根大学医学部附属病院臨床研究センター・教授。1971年浜松市生まれ。98年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。同大学第二外科(消化器外科)入局。補完代替医療や健康食品に詳しく、厚生労働省「『統合医療』情報発信サイト」の作成に取り組むほか、内閣府消費者委員会専門委員(特定保健用食品の審査)も務める。