[PR]

 「エネルギー及びたんぱく質摂取量は、男女とも60歳代で最も高い」。先日発表された2017年の国民健康・栄養調査結果の概要に目を通していて、この1文に意外な印象を受けました。

 高齢になると、食欲が低下したり、ものが食べにくくなったりして食事量が減り、必要なエネルギーやたんぱく質が不足する低栄養に陥りやすくなるとされています。「高齢者こそ肉や魚を食べて」といった呼びかけをよく聞くようになりました。

写真・図版

写真・図版

 今の60代は、高齢者というには若いとは思いますが、それにしても、体力がピークにある20代や30代に比べれば食事量も減って栄養素摂取量も少ないのではないかというイメージがあったのです。ちなみに野菜摂取量の項目を見ると、こちらも男女とも60代が最も多い。

 60代の旺盛な食べっぷりには何か理由があるのか、厚生労働省の担当課に尋ねてみました。担当者は「残念ながら、これとはっきり言えるものはありません」と答えつつ、面白いことを教えてくれました。「今の60代が40代だった20年前のデータでは、今の40代よりもたんぱく質の摂取量が多いのです。もともと摂取量が多く、加齢と共に減っているものの、今も比較的高い水準で推移しているのだと考えられます」

 そこで、2007年と1997年の国民健康・栄養調査の結果を今回と比べてみました。

写真・図版

写真・図版

 エネルギー、たんぱく質、どちらも男女各年代で20年前よりも減少しています。

 また野菜摂取量は2007年のデータしかありませんが、やはり女性の70代以上を除いて男女すべての年代で減少しています。

写真・図版

 一方、活動面では、1日に歩く歩数が20年前より少なくなっています。国民の健康増進のための目標を定めた「健康日本21(第二次)」によると、日常生活における歩数の目標値は20~64歳が男性9000歩、女性8500歩。65歳以上は男性7000歩、女性6000歩。目標から遠ざかっています。

写真・図版

 若い世代を中心に、日本人の各年代とも、あまり食べず、あまり動かなくなっている。省エネが進んでいるというか、不活発になっているというか。このトレンドが続くとしたら、今の20~40代が20年後に40~60代になると、さらにエネルギーやたんぱく質摂取量が少なくなってしまうかも。今の高齢者より将来の高齢者の方が厳しい状態になったりしない・・・?

 ちょうど、7月に発行された国立健康・栄養研究所の「健康・栄養ニュース」には、日本人のたんぱく質摂取量の現状を分析した研究結果が掲載されていました(※1)。

 食事摂取基準に基づくたんぱく質の推定平均必要量は、ほとんどの人がクリア。ですが、加齢や病気で筋肉量が減り、身体機能が衰えるサルコペニア予防で目標とする1日摂取量(日本サルコペニア・フレイル学会が推奨、体重1キロあたり1.0グラム以上)に満たない人は65歳以上で15%前後の一方、30~65歳では20%以上いました。サルコペニア予防の観点からすると若い方が、状況が悪いことになります。

 紹介してきたデータは平均値で、食生活は個人差が大きいですから、自分が十分に栄養素を採っているかどうかは、それぞれチェックした方がいいと思います。とはいえ、食事の質に注意を払うことは、高齢者も若い世代も大事だと感じさせられました。

 

※1日本人のたんぱく質の摂取量は足りているか(健康・栄養ニュース)

http://www.nibiohn.go.jp/eiken/info/pdf/newsletter60.pdf別ウインドウで開きます

 

<アピタル:食のおしゃべり・トピック>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/eat/

(大村美香)

大村美香

大村美香(おおむら・みか) 朝日新聞記者

1991年4月朝日新聞社に入り、盛岡、千葉総局を経て96年4月に東京本社学芸部(家庭面担当、現在の生活面にあたる)。組織変更で所属部の名称がその後何回か変わるが、主に食の分野を取材。10年4月から16年4月まで編集委員(食・農担当)。共著に「あした何を食べますか?」(03年・朝日新聞社刊)