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 2015年から機能性表示食品制度がスタートし、トクホ(特定保健用食品)や栄養機能食品に加え、健康食品の機能性(効き目)の表示の仕組みが整備されました。しかし、制度を生かすためには、目指すべき方向と守るべきルールをしっかりと理解しておく必要があります。今回は、健康食品を利用する消費者や製造販売する企業に求められていることを整理してみます。

▼保健機能食品(トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品)を含む食品は病気の治療を目的としていない

▼食品の機能性表示制度では、消費者は自ら情報を収集し自主的・合理的な選択をすること(インフォームド・チョイス)が求められている

▼健康食品の企業は、さまざまな法律や制度を熟知しておくことが求められる

 健康の維持・増進を目的とした機能性を表示できる食品は、トクホ・栄養機能食品・機能性表示食品の三つ(保健機能食品)だけです。

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 ですが、世の中に流通している商品は、保健機能食品ではない〝いわゆる健康食品〟がいまだに大多数を占めています。例えば、Amazonで「健康食品」をキーワードに検索すると1万件以上の製品がヒットします。

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 一方、「特定保健用食品」では118製品、「機能性表示食品」は618製品でした(検索日:2018年10月10日、カテゴリー:食品・飲料・お酒)。

 ほとんどの消費者は、健康食品を保健機能食品と勘違いしているのではないでしょうか。そんな現状も踏まえ、健康食品に関するトラブルがあとを絶たない実態を前回のコラムでとりあげました。

◎広告や契約、健康被害…あとを絶たない健康食品トラブル[2018.10.4]

https://www.asahi.com/articles/SDI201809281233.html

健康食品に関するトラブルは以下の三つに大きく分けられます。

▼健康食品による健康被害(副作用)

▼契約のトラブル

▼メディア報道や広告記事の行き過ぎた表現

 では、私たちは健康食品のトラブルに巻き込まれないために何を知って対策すればいいのでしょうか。さらに、健康食品を扱う企業が守るべきルールを解説しましょう。

消費者が知っておくべき〝健康食品〟の基本的なこと

 「健康食品は食品だから安全」と思う人もいるかもしれませんが、食品であることは安全であることを意味しているわけではありません。

 一般的な食べ物でもアレルギーやとりすぎの問題があります。「100%安全な食品は存在しない」というぐらいの捉え方が、健康食品との適切な向き合い方につながると思います。

 特にカプセルや錠剤の形状をしている場合、大量摂取につながりかねず、健康被害(副作用)のリスクが高まる恐れもあります。

 また、健康食品に医薬品のような効果を期待している人がいるかもしれません。しかし、そもそもの前提として、「健康食品は病気の治療を目的にしていない」ことを覚えておいてください。

 人を対象とした臨床試験で有効性が証明されているトクホや機能性表示食品でさえ、あくまで健康の維持・増進が目的です。保健機能食品にあてはまらない「いわゆる健康食品」は、「効くのか効かないのか分からない」と捉えるのが正確な理解です。

 2015年に施行された機能性表示食品制度には、自分で情報を集めて、健康食品を選ぶようにする考え方が取り入れられています。

 企業がしっかり情報を公開し、消費者がそれを集めて、自主的・合理的な選択が出来るようにする「インフォームド・チョイス」です。

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 つまり、制度では、消費者自らが積極的に情報を収集し、それをもとに「この商品を利用するかしないかの判断をする」ことが求められているわけです。

 これは、責任を消費者に押し付ける自己責任論ではありません。インフォームド・チョイスの背景には、消費者自らが食品に関する知識を習得し、健康への意識を高め、日々の生活習慣を見直し、健康の維持・増進を図ることが期待されています。

 このコラムで何度も繰り返していますが、健康の維持増進に重要なのは、バランスのとれた食事、適度な運動、十分な休息です。保健機能食品は、その重要性を消費者に伝えるため、製品に「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」と記載することが義務付けられています。保健機能食品は、日々の生活の不摂生を「なかったこと」にしてくれる魔法の杖ではないのです。

企業が知っておくべき"健康食品"の基本的なこと

 健康食品で効き目を表示するためには、必ず裏付けとなる根拠が必要です。トクホと機能性表示食品では、原則として、対照群を作って調べるため信頼性が高い「ランダム化比較試験」によって有効性が立証されていなければなりません。

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 健康食品企業の中には、利用者の声(経験談)や細胞・動物の実験のみで有効性をうたっているケースが散見されますが、そのような情報は効き目を表示するための根拠として認められていません。

 そもそも「ランダム化比較試験」がどのようなものか分からない…という企業は、健康食品を扱う資格がないぐらいの認識を持ってもらいたいと個人的には考えます。

 これは、商品を宣伝する広告会社、書籍を扱う出版社でも同様です。

 また、健康食品の効き目などをテーマとした番組や記事を扱うマスメディアも、報道の自由・表現の自由があるとは言え、不正確な情報の発信は許されません。

 消費者庁は、法律違反となった事例や問題となる広告例なども挙げて、健康食品に関する基本的なルールに関する資料を作成し公表しています。

◎健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について

[消費者庁:平成28年6月30日]

http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_9.pdf別ウインドウで開きます

 法律として整備されていることですから「知らなかった」で済む話ではありません。

 また、保健機能食品ではない「効き目をイメージさせるようなあいまいな表現で販売されている健康食品」への行政の取り締まりは、今後、厳しくなることはあっても緩くなることはまずありえないと思います。

 健康食品は、人の健康、場合によっては命にも関わることです。その自覚を持って企業活動に取り組んでもらえたらと思います。

まずは企業が襟を正して

 健康食品をめぐっては、トクホや機能性表示食品では臨床試験の結果とは異なる表示をしていた事例(※1)や、根拠なく効き目をアピールしている「いわゆる健康食品」の事例があとを絶ちません。

 まずは企業が襟を正す必要があり、筆者も「だまされる消費者が悪い」「消費者の自己責任」と言いたいわけではありません。

 ですが、食品の機能性表示制度は、インフォームド・チョイスの考え方で設計されています。「効くと思っていたのにだまされた!」とがっかりすることがないように、健康食品は医薬品とは違うことを頭に置いて、私たち自身も健康食品の情報を収集できるツールや科学的に情報を判断できるワザを知っておきましょう。

【参考資料】

1)葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品の販売事業者16社に対する景品表示法に基づく措置命令について(平成29年11月7日)

http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_171107_0001.pdf別ウインドウで開きます

<アピタル:これって効きますか?・健康食品、どう向き合う?>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/kiku(アピタル・大野智)

アピタル・大野智

アピタル・大野智(おおの・さとし) 島根大学・教授

島根大学医学部附属病院臨床研究センター・教授。1971年浜松市生まれ。98年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。同大学第二外科(消化器外科)入局。補完代替医療や健康食品に詳しく、厚生労働省「『統合医療』情報発信サイト」の作成に取り組むほか、内閣府消費者委員会専門委員(特定保健用食品の審査)も務める。