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 2014年の噴火で死者・行方不明者計63人を出した御嶽山(3067メートル)の山頂への立ち入り規制が9月26日~10月8日、4年ぶりに一部緩和されました。緩和初日、山頂での慰霊登山を待ち望んだ遺族らと一緒に登り、取材しました。

 昨年8月、御嶽山の噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)へ変更され、噴石で損壊した御嶽神社頂上奥社などの施設の復旧が可能になりました。地元の長野県木曽町は、閉鎖中の黒沢口登山道で二ノ池上分岐から山頂までの600メートルを整備。安全対策が整ってきたことから規制を緩和しました。

 9月26日午前10時半、登山道分岐の立ち入り規制のロープが解かれました。遺族らを先頭に100人を超す報道陣が続きました。全員がヘルメットを着用。今回、木曽町から活火山の安全対策として「ヘルメット、マスク、ゴーグルの準備をお願いしています」との要請がありました。

 登山道は、3~4メートルおきに木材や石で段差が設けられ、濃霧の中でも方向がわかる白いペンキの矢印などで整備されていました。山頂に近づくと登山道脇には粘土のような火山灰が積もっており、噴火の痕跡が残っていました。

 山頂は、御嶽神社頂上奥社の境内です。最後の階段の手すりの一部が倒れ、石灯籠は傾いたままでした。山頂に着くと、噴石で頭部が欠損した石像のほか、本殿がなくなっており、噴火の生々しい爪痕を確認できました。遺族らは、噴火当時撮影された写真を手に故人が最後にいた場所の確認をしたり、献花をしたりして冥福を祈りました。

 山頂の気温は8度。時折、濃霧がかかり、吹きつける風も冷たく、3千㍍の標高を体感しました。

 階段の上り口近くには、真新しいコンクリート製の箱形シェルター3基(計約90人収容)が設置され、「ここは活火山なのだ」と改めて感じました。実際、木曽町は「頂上エリアでは滞留せず、滞在時間は短めに下山開始してほしい」と呼びかけています。

 今回、地元の木曽町は4年前の噴火災害で大勢の犠牲者を出した教訓から様々な安全対策を施しました。当時、山小屋や岩陰に避難できなかった登山者の中には、噴石に直撃されて亡くなったケースが目立ちました。このため、避難施設として、山頂直下に避難シェルターを設置したほか、山頂にある御嶽神社は祈禱(きとう)所の改築に際し、屋根を防弾チョッキに使うアラミド繊維で補強しました。山頂に近い二の池山荘や石室山荘も、屋根もアラミド繊維で補強しました。

 噴火災害時、登山者の中には、危険な状況にいることがわからない人たちもいました。このため、山頂付近には屋外スピーカーを設置し、噴火が起きた際は、緊急事態の発生を告げます。また山頂への登山道では、携帯電話が通じるようにして、登山者たちに緊急速報メールを送ることも出来ます。

 山頂への規制緩和初日の9月26日、私たち報道陣も会社との連絡などで携帯電話を使いましたが、山頂周辺の二ノ池などと違ってクリアな通話ができました。

 山頂規制緩和について、御嶽山火山防災協議会で専門家が見解・コメントを寄せました。名古屋大学大学院環境学研究科の山岡耕春教授は「活火山であるので、絶対に安全にはなりえないことを前提として、ハードおよびソフトの両面において噴火前よりは着実な安全対策が施されたと認める。また、現時点では、噴火が差し迫っている兆候は見られらない」。東濃地震科学研究所の木股文昭・副主席主任研究員は「剣ケ峰頂上への登山道の再開には、木曽谷の人々の努力と『犠牲を二度とださず、御嶽山と共に生きる』という願いが込められている」と力説しています。

 御嶽山は、中高年登山者を中心に人気を集める「日本百名山」の一つです。今季、山頂へは13日間だけの規制緩和でしたが、山頂の登山道が再開された後、百名山踏破が目的と思われる登山者らでにぎわいました。今年8月、4年ぶりに営業を再開した山頂近くの山小屋「二の池ヒュッテ」(旧二の池新館、岐阜県下呂市)は、山頂登山の解禁後、平日も連日、登山客の予約が入り続けました。新オーナーの高岡ゆりさん(46)は「営業最終日の10月7日は、満員となりました」と声を弾ませていました。

 来季の規制緩和はまだ未定ですが、7月の夏山開きまでには時期や範囲などの結論が出される見込みです。御嶽山登山を予定している登山者は来季の再開に備えて、御嶽山が活火山であることに留意し、ヘルメットなどの装備を買いそろえたり、火山情報を収集したりして、万全の準備を進めてください。

 また、御嶽山を含む百名山の約半数は、火山噴火予知連絡会が選んだ「火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある」という山です。火山情報は把握したか、現地にシェルターはあるのか、安全な登山には、万全の備えで臨んでください。

<アピタル:近藤幸夫の山へ行こう・健康と安全>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/climb/(近藤幸夫)

近藤幸夫

近藤幸夫(こんどう・ゆきお) 朝日新聞山岳専門記者

1959年。岐阜市生まれ。信州大学農学部卒。86年、朝日新聞入社。初任地の富山支局で、北アルプスを中心に山岳取材をスタート。88年から運動部(現スポーツ部)に配属され、南極や北極、ヒマラヤで海外取材を多数経験。2012年から日本登山医学会の認定山岳医講習会の講師を務める。現松本支局長兼山岳専門記者。

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