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 2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まってから、テレビやCMをはじめ障害者をメディアで目にする機会が増えてきました。しかしながら、障害者を題材にした作品となると、お涙頂戴(ちょうだい)ものが多い印象を受けてしまうのは私だけでしょうか? ところが最近、それとは少し違う映画に出会ったので、ご紹介します。

 「再会した初恋の人は、車いすに乗っていた――。」「もう恋をあきらめていた。君にまた出会うまでは――。」これは、映画「パーフェクト・ワールド〜君といる奇跡〜」を象徴する言葉です。車いすに乗る青年と彼に想(おも)いをよせる女性が主人公の映画が公開されたのは10月初旬のことでした。岩田剛典さん演じる車いすに乗る青年・樹(いつき)と杉咲花さん演じる・つぐみは高校の先輩後輩の間柄でしたが、仕事の一席で再会したことをきっかけに二人の恋は動き始めます。

「イケメン!」とはしゃいでいたけれど・・・

 物語の本筋とは違う視点で見てみると、作中には世間一般と障害者との距離感をよく現しているなあと思うシーンがありました。

 一つ目は、女子の発する何げない一言です。あるプロジェクトで協働する設計会社(樹の職場)とデザイン会社(つぐみの職場)の酒宴を前に、つぐみの同僚たちが建築家プロフィルにある樹の写真を見て「イケメン!」とはしゃいでいました。

 しかし、樹が車いすユーザーだと知った翌日の会話では、「車いすの人とは恋愛できないよね〜」と一蹴していたのです。私は、こう思うのが一概に悪いことだとは思えません。普段の生活で車いすの人と関わることがなければ、なんとなくのイメージでそう思ってしまうのも、現状では仕方のないことでしょう。

 二つ目は、樹と元カノの関係です。双方、大学生の健常者同士で交際をしていた最中に交通事故で車いすとなった樹は、相手に負担をかけまいと別れを切り出しました。ほどなくして、元カノは健常者と結婚することになります。

 このとき、言われるままに別れた元カノに対して、健常者の樹は好きでも、障害者の樹は好きになれないのかという問いかけは、ふさわしくありません。愛があれば乗り越えられるなんて、きれいごとだけでは済まないのが、現実です。障害を理由に別れることになったとしても、どちらも責められることではありません。

 三つ目は、娘を想う父親の葛藤です。娘の交際相手が車いすユーザーだと知った父親は、「娘と別れてほしい――。」と頭を下げて懇願しました。人がいつどうなるか分からないことは理解していても、あえて苦労する道を娘には歩ませたくないと思う親心は、モラルとの間で逡巡(しゅんじゅん)した末に意を決した発言だったと推察します。

「少女マンガ」の世界が放つ魅力

 私も樹と同じ車いすユーザーとしては直視したくない出来事だけれど、これらが紛れもない現実であることは間違いありません。けれども、そこに悪意はなく、知らないから受け入れられていない場合も多いのかもしれないと想像します。本作は、マンガが映画化されたものですが、少女マンガを読んだことがない私も、主人公が車いすだからという理由で本を手にとったのが最初の出会いでした。

 「パーフェクト・ワールド」の良いところは、障害者を扱っていながらも、ちゃんと少女マンガに徹していることだと思います。車いすや障害などの負のイメージを差し置いて、純粋にキュンキュンできる作品はなかなかありません。

 「可哀想を根底にした感動」では、結局のところ「同情の対象」から抜け出せないのです。映画館は、「岩ちゃん、かっこいい」、「花ちゃん、かわいい」の声にあふれていました。若い人に人気の俳優が起用されていることも後押しし、普通の恋愛映画と認知されていることがうかがえます。映画やドラマの世界も少しずつ変わってきていて、ごく自然な形で障害のある登場人物が出てくるケースも出てきました。社会にはさまざまな人が共存していることを考えると、登場人物が健常者だけで構成されている方が不自然なのかもしれません。

 障害者のことを理解しようという堅苦しい感じではなく、娯楽性の高い映画という形で知ってもらう方が、ずっと自然で本質的な理解へつながるのではないでしょうか。障害者に限らず、映画やマンガ、アニメなどにも、いろいろなキャラクターが今よりももっと、当たり前に登場してくれるといいなと思います。

<アピタル:彩夏の〝みんなに笑顔を〟>

http://www.asahi.com/apital/column/ayaka/(アピタル・樋口彩夏)

アピタル・樋口彩夏

アピタル・樋口彩夏(ひぐち・あやか)

1989年、東京生まれ。中学2年の時、骨盤にユーイング肉腫(小児がん)を発症。抗がん剤、重粒子線などの治療を経て、車いすでの生活に。「いつ、誰が、どんな病気や障害をもっても、笑顔で暮らせる日本にしたい!」を目標に日々、奮闘中。当事者の視点から建設的に伝えることをモットーに執筆・講演も行っている。