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 「ビタミンCがレモン10個分」……。健康食品の紹介でよく見かけますよね。市民向けの講座などで講演すると、「これって本当にレモンから作っているの?」といった質問をうけることがたびたびあります。「トクホだけで健康になれるのか」「健康食品と薬を一緒にのんでいいのか」など、講演後に多い質問や疑問を紹介したいと思います。

◯×クイズ:「ビタミンCがレモン10個分」と表示された清涼飲料水を飲んでも、ビタミンCのとり過ぎにはならない?
(答えは、本文中にあります)

▼トクホ(特定保健用食品)・機能性表示食品だけで健康になれるわけではない

▼トクホの本当の役割は、食事のバランスの重要性を啓発し行動変容を促すこと

▼病院から薬を処方されている人は、安易な健康食品の利用は控えるべき

 前回、「トクホは本当に効くのか?」「ものすごく効果のある健康食品はあるのか?」など、健康食品にまつわる豆知識を紹介しました。

◎コラーゲンで肌がプルプルになる? 健康食品の豆知識[2018年11月1日]

https://www.asahi.com/articles/SDI201810293011.html

 今回も引き続き、読者の皆さんにも知ってもらいたい健康食品の豆知識について解説したいと思います。

トクホだけで健康になれるか?

 トクホや機能性表示食品は、その効き目(機能性)がランダム化比較試験で証明されています。ランダム化比較試験とは、「試験食品(トクホ等)を摂取する群」と「対照食品(プラセボ)を摂取する群」をランダムに振り分けて比較検討する方法で、もっとも信頼性が高い研究デザインです。

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 ですが、トクホの効果は「中性脂肪を少し下げる」「内臓脂肪を少し減らす」「血圧を少し下げる」など、効き目は限定的です。

 とは言うものの、信頼性の高い研究で効果が証明されているなら、「トクホだけを摂取していれば健康になれるのではないか?」という疑問が湧いてきます。

 残念ながら、その考え方はトクホや機能性表示食品の「本当の役割」を誤解しています。

 健康の維持・増進のために重要なのは、バランスのとれた食生活です。ただ、それが大事なのは知ってはいるけど気に留めていなかったり、ついつい不摂生な食生活を続けてしまったりして、生活習慣病の一歩手前までいってしまう人がいます。そんな人たちに、バランスのとれた食生活の重要性を啓発したり、食生活を見直すキッカケにしてもらったりすることが、トクホや機能性表示食品の本当の役割です。

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 そのため、トクホや機能性表示食品には、必ず「食生活は主食、主菜、副菜を基本に食事のバランスを。」と記載されています。

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 「脂肪の吸収を抑える」「体脂肪を減らす」などといった効き目の表示ばかりに目を奪われず、本当の役割について知ってもらえたらと思います。

「ビタミンCがレモン10個分」の意味するところ

 先日、市民を対象とした講座で「『ビタミンCがレモン10個分』と書かれている商品に入っているビタミンCはレモンから絞り出したものなのか、それとも人工的なものなのか?」「そもそも、レモン10個分とは、どれくらいのビタミンCに相当するのか?」という質問を受けました。

 そもそも、「レモンは酸っぱくてビタミンCがたくさん含まれているから基準に採用されている」という考え方は誤っています。レモンが酸っぱい原因はクエン酸です。ビタミンCは、ほとんど味はしません。

 ビタミンCがレモン10個分と書かれた商品のビタミンCについては、「清涼飲料水に添加されたビタミンCのほとんどは人工的に合成されたもの」というのが答えになります。

 そして、10個分とは、「清涼飲料水に添加されたビタミンC量をレモン果実の個数により表示する場合には、レモン果実1個当たり20mg換算を基準とする(※3)」とされています。

 では、「ビタミンCがレモン10個分」って、多いのでしょうか?

 厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、成人のビタミンCの推奨量は1日あたり100mgです。レモン10個分はビタミンC換算で200mgに相当し、推奨以上に摂取していることになります。

 ですから、「『ビタミンCレモン10個分』という表示の清涼飲料水を飲んでも、ビタミンCのとり過ぎにはならない?」というクイズの答えは、「×」になります。

クイズの答え:とり過ぎになる。レモン10個分のビタミンCは、厚生労働省が定める推奨量を超える

 なお、とり過ぎたビタミンCは、吸収されず便と一緒に排泄(はいせつ)されるか、吸収されても利用されずに尿から排出されてしまいます。

 さらに、読者の皆さんに気が付いてほしいことがあります。

 最近、レモン以外にも「しじみ2000個分のオルニチン」「レタス5個分の食物繊維」など、一般食品を比較対象にして特定の成分の含有量をアピールしている表示をよく目にします。

 みなさん、しじみ2000個、レタス5個も一気に食べることができますか?

 健康食品の場合、カプセルや錠剤になっているので気にしていないかもしれません。もしかすると過剰摂取している可能性はないか、注意を払ってもらえたらと思います。

健康食品と薬と一緒に飲んでも大丈夫?

 ほかに多い質問が「健康食品と薬を一緒にのんでも大丈夫?」です。

 複数の医薬品をのんでいると、組み合わせによっては、効果が強く出過ぎたり効果が弱まったりすることがあります。このような薬の飲み合わせによる不都合を「相互作用」といいます。

 この相互作用は、薬同士だけで起こるものではなく、食品と薬との間でも起こることがあります。厚生労働省が作成している生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」(※1)によると、代表的なものとして以下のような、飲み合わせによる相互作用が紹介されています。

・ビタミンB6:抗てんかん薬(フェニトイン)の効果減弱

・ビタミンC:女性ホルモン(エチニルセトラジオール)の効果増強

・オレンジジュース:β遮断薬(高血圧・狭心症に対する薬)の効果減弱

・クランベリージュース:ワルファリン(抗凝固薬)の効果増強

 トクホと薬でも同様のことが指摘されています(※2)。

 具体的には、糖尿病を薬で治療中の人が「血糖値が気になり始めた方へのトクホ」をとったり、高血圧症の人が「血圧が気になり始めた方へのトクホ」をとったりすると、低血糖や低血圧といった副作用を引き起こす可能性もあります。

 そもそも、健康食品を含め「食品」は病気の予防や治療を目的としていません。トクホや機能性表示食品も、健康な人や病気の一歩手前の「境界域」の人を対象にしています。ですので、病院から薬を処方されている人は、安易に健康食品を利用することは控えてもらいたいと思います。

【参考資料】

1)厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト:「食物と薬の相互作用」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food-summaries/e-06別ウインドウで開きます

2)大分大学医学部附属病院薬剤部:「Q&A 健康食品と医薬品相互作用」

http://www.med.oita-u.ac.jp/yakub/di/qa/kennkoushokuhinn.pdf別ウインドウで開きます

3)一般社団法人全国清涼飲料連合会:「レモン果実1個あたりのビタミンC量」の表示ガイドライン

http://j-sda.or.jp/manufacturing/regulations_and_guidelines04.php別ウインドウで開きます

<アピタル:これって効きますか?・健康食品、どう向き合う?>http://www.asahi.com/apital/healthguide/kiku(アピタル・大野智)

アピタル・大野智

アピタル・大野智(おおの・さとし) 島根大学・教授

島根大学医学部附属病院臨床研究センター・教授。1971年浜松市生まれ。98年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。同大学第二外科(消化器外科)入局。補完代替医療や健康食品に詳しく、厚生労働省「『統合医療』情報発信サイト」の作成に取り組むほか、内閣府消費者委員会専門委員(特定保健用食品の審査)も務める。