[PR]

 インターネットで「栄養士はインフルエンザワクチンは打たない!」というブログを見つけてびっくりしました。私が勤務している病院では、医師も含めて職員のほとんどがインフルエンザワクチンを接種します。もちろん、栄養士さんもです。私は11月12日にインフルエンザワクチンを接種しました。

 ブログはある栄養士によって書かれているようですが、ちょっと主語が大きいようです。「私はインフルエンザワクチンは打たない!」または「栄養士の中にはインフルエンザワクチンを打たない人もいる!」と書くべきでした。ほとんどの栄養士は、インフルエンザワクチンの必要性を正しく理解していると、私は思います。

 医療従事者がインフルエンザワクチンを接種する理由は、患者さんが多くやってくる職場で働いているためインフルエンザに感染する機会が多く、また、高齢者や持病のある患者さんにインフルエンザをうつさないためです。弱っている人がインフルエンザにかかると、肺炎などを引き起こし死亡するリスクが高いのです。

 もちろん、ワクチンの効果は100%ではありません。インフルエンザワクチンの有効率はおおむね40~60%程度です。インフルエンザワクチンを接種していてもインフルエンザにかかることはあります。それでも、少しでもインフルエンザをうつす可能性を減らすために、私はワクチンを打っています。私がワクチンを打つのを面倒くさがったせいで患者さんがインフルエンザにかかったり、亡くなったりすることがあってはなりません。

 インフルエンザワクチンには副作用もあります。よくあるのは接種部位の腫れや痛みですが、これは数日で治ります。ごくまれに重篤な副作用が起きることもありますが、多くはあまりにもまれすぎてワクチンとの因果関係があるかどうかも不明確です(厳密には副作用ではなく有害事象と言います)。どうしても副作用を不安に感じる人はワクチンを打たなくてもかまいません。

 私は、重篤な副反応がワクチンによって起きる可能性があることを十分に承知の上で、インフルエンザワクチンを接種しています。もともと健康な人がインフルエンザにかかってもほとんどの場合はそのまま治ってしまうとは言え、まれながら肺炎や脳炎を起こします。インフルエンザを予防することで得られるワクチンの利益と、ワクチンがもたらす害を天秤(てんびん)にかけて、利益が害に勝ると考えます。

 ワクチン以外にも手洗いなどの感染予防を行うのは当然です。ただ、どれだけ予防してもかかるときにはかかってしまいます。幸いなことに私は成人してからインフルエンザにかかっていませんが、もしインフルエンザを疑う症状が出たら、無理せず家でゆっくり休んで患者さんにうつすことのないようにするつもりです。

《酒井健司さんの連載が本になりました》

これまでの連載から80回分を収録「医心電信―よりよい医師患者関係のために」(医学と看護社、2138円)。https://goo.gl/WkBx2i別ウインドウで開きます

<アピタル:内科医・酒井健司の医心電信・その他>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/sakai/(アピタル・酒井健司)

アピタル・酒井健司

アピタル・酒井健司(さかい・けんじ) 内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。

こんなニュースも